六月の湿潤
まだ静かな教室。
ペラと小さな音が出て本がめくられる。
この本は面白い。しかし、何かが足りない気がする。こんな事をしている場合ではないかもしれない。
不意に足音が響いた。教室に誰かが来ている。 ゆっくりと振り向く。意味は無いだろう。空いた扉には「彼」が立っていた。
目をそらさないと。誰かと楽しそうに話している所を見て真面な精神を保てるわけがない。でも、そう気が付いた時には遅かった。
一番扉に近い席の人と喋り始めた。しかも、たいそう仲が良さそうに。
息が止まる。そして、次の瞬間には呼吸が乱れる。
焦るな。
泣くな。
そう言い聞かせても、自分を止める事はできない。目の淵がじんわりと熱くなる。本に視線を頑張って落とす。内容は一切入ってこない。文字は読めるのに、意味が理解できない。
なんでだろう。ただ、友達と話したり遊んでいたりする所を目撃して、泣きたくなるのは。嫉妬なのかな。
今はただ周りから知られたくない。その一心で本を読み続ける。
こんなタイミングでなぜか皆登校して来る。うざい。
やっぱり辛い。せめて、あの頃みたいな関係に戻りたい。そう思えば、またしんどくなる。何でこんな目に遭っているのか自分でも理解できない。
考えれば考える程、また泣きたい。夜なら幾らでも泣いて良いのは救いだ。
こんな私を誰か気付いて欲しいと願う。
ただただ、今は、いや、ずっと。
泣く事しか出来ない。
外は鬱陶しい程、晴れていた。