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プランB 02

マークの説得を諦めたヒロとジュンは、切り札を切る事にした。

エースの投入である。

その為には端末の封印を解かねばならない、真なる力の解放だ。


但し、ここはガニメデステーションなのでセキュリティーの解除はするが、ファンタジーではないので封印は特に関係なかったりする。


ヒロの気分の問題だ。



「 指紋認証か 」


「 それだけじゃ無いんだけどね 」


答えたのはジュン、ヒロは端末を握りしめて認証作業中だ。

全ての指の指紋認証が終わると、網膜のスキャンが始まった。

その次はパスワードの入力、最後にジュンがパスワードを入力して作業は終わった。


「 随分と厳重だな 」


「 ユアアイズオンリーだから当然だろう? 」


端末をマークに手渡しながらヒロが答える。


マークは気が付かなかったが、認証作業は他にも実施されている。

親指からは少量の血が採取されて、血中飽和酸素量を計測していた。

他にも、網膜スキャン時に意図的に複数回の瞬きをしている。

瞬きの回数は日によって変化するが、その回数の演算方法が記録されているのはヒロとジュンの頭の中だけだ。


測定された数値は、同じく測定された体温と合わせて認証者が生きて(・・・)いる事の確認に用いられる。

血中のストレス物質の値は、脅迫の有無を判断している。

低重力のステーション内に、大昔の様なゴツイ端末を持ち運んでいるのはシッカリとした理由があるのだ。


「 ユアアイズオンリーだと? 」


「 ・・・・・・ 」


受け取った端末に視線を向けるマーク、画面にはマークが見慣れた鳥が大きく表示されていた。


「 ちょっと来い 」


端末をヒロに押し付け、ヒロを引っ張って食堂を出て行くマーク。

人口重力の空間では、筋肉の強さも質量の大きさもモノを言う。


同じ体積なら脂肪より筋肉の方が重いのだが、元々筋肉も脂肪も少ないやせ型のヒロがマークに叶うはずも無い。

そのままマークに首根っこを掴まれて、食堂から連れ出されて行くヒロ。


「 ジュン、お替わりを頼む! 多分、コントロールルームだ! 」

「 判ったわ! 」


ヒロが手にしている端末からは、うっすら白い煙が出ている。

非正規の手順で強制終了した端末は、ROMもRAMも溶解されて使い物にならない。

かなり高価な端末なのだが、ヒロもマークも気にしている様子は無い。

特にマークは。


ステーション内をヒロを引っ張って器用に漂っていくマーク、行き先は彼の持ち場であるステーションの管制室だ。

宇宙での経験が少ないヒロは、こりゃ移動が楽チンだなとか思っていたりする。


--------------------


管制室の扉を電子的にロックするマーク、もちろんジュンがお替わりの端末を持って管制室に入ってからだ。


「 ヒロ、手伝え 」


入口の左の壁に向かっていくマーク、となるとヒロは右側の担当になる。

マークは壁にある腰の高さに付いたハッチを開けて、やや大きめなレバーに手を掛ける。


「 タイミングを合わせろよ。 3,2,『 マーク! 急ぎすぎだ! 』」


マークと異なり、ヒロとジュンは宇宙の滞在時間が短い。

ステーション内の移動には慣れたとは言え、マークと同じ速度で移動できるはずが無い。

マークに遅れる事数秒で、やっとハッチにたどり着いたヒロ。


「 タイミングはこちらでとるよ。 3,2,1,マーク(・・・)


ヒロとマークが同時にレバーを下げると、ガコンと言う音と共に若干の浮遊感が3人を襲う。

管制室がステーションから物理的に切り離された証拠だ。

もちろん、ワイヤーでステーションには繋がっているので完全に切り離されたのではない、何時でもステーションには戻れる。


「 これで盗聴は物理的に無理だろう 」


マークは浮かない顔をしている。

3,2,1,マーク(・・・)は、ステーションでは定番のやり取りだ、もちろんマークへ対しての信頼を込めたジョークだ。

ステーションから電気的にも物理的にも切り離された管制室は、ステーションと等速でガニメデを周回している。


「 ・・・ 」


ヒロに向かって無言で手を出すマーク、ニコニコしながら端末を渡すヒロ。


「 ・・・ 」


相変わらず黙って端末を受け取り、黙ってモニタを見るマーク。

そこに何が表示されているかヒロとジュンは知っているし、誰のサインが入っているのかも知っている。



最高機密 = トップシークレットは、国によって幾つかの段階に分かれている。 しかし、機密度が高くなるほど、閲覧できる人数が減っていくのは何処の国も同じだ。

会議を行う時は、機密の閲覧を許可された者だけが集まって実施されるのも同じだ。


トップシークレットを扱う会議では、ほとんどの場合で資料はその場で配布されてその場で回収される。

自宅や職場に持ち帰れるの者は極々少数だ。

だが、トップシークレットでもコピーは可能だ、会議で使用するためだったら。

それに、閲覧申請を出して許可さえ得れば、自分の機密保持ランクに応じた機密を閲覧できる。


ユアアイズオンリーは、トップシークレットより遥かに機密度が高い。

コピーはもちろん出来無いしメモも取れない、文字通りの 『 ユアアイズオンリー 』 、見るだけになる。

トップシークレットとの1番の違いは、存在そのものを知る人間が極端に少ないと言うこと。

当然、存在を知らないのだから閲覧申請など出しようがないし、許可も下りない。

その代わり、申請者の抹殺許可は下りる可能性は在るので、申請時には注意が必要だ。



「 ・・・これだけか? 」


「 そうだね 」


マークが見ているモニタ-には、『 ヒロとジュンに、一定期間ステーションの全権限を与える。

マークは2人の目的遂行のため2人の指揮下に入る 』 とだけ表示されている。

問題なのはその下にあるサインだ、自国の大統領だけでなくその他の多くの国のトップのサインが入っている。

さらには、枢機卿のサインも入っている。


主要な先進国のトップはほとんどサインしている、もちろん偽造の可能性も在る。

マークは端末とコンソールを繋いで認証プログラムを走らせる、結果は本物と判断された。

少なくとも、大統領のサインだけは確実に本物だ。

極秘で渡されたプログラムでは、他の国のサインも本物だと表示されている。


「 それで、俺は何をしたら良いんだ? 」


「 いきなり本題だね。 納得はしてくれたみたいで、助かるよ 」


ヒロはマークから端末を受け取り、正規の手段でシャットダウンする。

これでまた普通の端末として使用できる、重くてかさばるのが問題だが。

無重力でも質量が無くなったわけでは無い、動かそうとすれば重い物は重い。


「 前からお願いしていた通りだね。 2日後の6月3日からしばらくの間、ステーションのセンサーの使用権が欲しい 」


「 それだけか? 」


「 そう、それだけ。 長くても7日、上手くいけば5日で終わる予定だね 」


もっとも、ステーションの安全を脅かすセンサーを独占する気はヒロとジュンにはない。

宇宙塵等の接近を感知する近接センサーの使用を制限する予定はない、必要なのは超長距離センサーだ。


「 何を観るんだ? 」


「 それは内緒だね。 でも、実験が上手くいけば少しなら 『 ヒロ! 』 」


ジュンに頭を叩かれるヒロ、もちろんジュンは軽く叩いている。

無重力空間で手を思い切り振り回したら姿勢が崩れる、叩く方も叩かれる方も姿勢を乱しすにとになるから、ツッコミにも十分な注意が必要だ。


「 やっぱり駄目だ、今は話せない 」


ヒロは決して、ジュンの怖い目に負けた訳ではない。

実験の重要性を思い出しただけだ、多分。


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