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プランB 28

誤字の指摘を頂きました、ありがとうございます。

無関心が一番辛いですから。


「 誰かさんそっくりだな 」


「 そうね 」


ジュンとヒロの二人は、いきなり夢の国を飛び出していった(しかも夜にだ)ローズをホテルのロビーで見送っている。

ヒロが言う「誰かさん」とは他ならぬジュンの事であり、本人もそれを理解している。


ジュンは昔、ムーンベースからシャトルに乗ってヒロの家に遊びに来ていたのに、直ぐに帰っていった実績がある。

それがシールド装置の基礎理論につながったのだから、科学的には無駄ではない。

しかし、遊びに来たのに何も言わずに帰っていったのだから、人としてどうなのかと言う面がある。

ジュンは途中で気が付いて真っ青になり、ヒロに何度も誤ったのは今では良い思い出になっている。


「 科学者ってのは、全員ああなのか? 」


「 どうかしら? 人によると思うわよ 」


ヒロは嫌味を言っているのではなく確認しているだけだ。

科学者だからそうなのか、それとも類が友を呼んだのか判断できなかったのだ。


「 夢中になれるのは良い事だけどな、いつか致命的な失敗しそうで心配だよ 」


「 致命的? 」


ローズをあきれ顔で見送っていたジュンがヒロに向き直る。


「 夢中になれるモノが無くなった時にさ、周りに誰も居なくなってる可能性 」


「 ・・・ 」


「 もしくは他人の命を顧みなくなる可能性 」


「 ローズに限って、それは絶対大丈夫よ 」


「 世の中に絶対は無いよ 」


ヒロはジュンに言う。

反論ではなく訴えるのでもなく、淡々と事実を告げるように。

この世に絶対は無い、少なくとも彼はそう考えて設計している。

技術者はそうあるべきだと考えている。



例えば棒でも板でもいいのだが、 『 同じ長さの物を用意する 』 だけで大変なのだ。

そんな図面を作成したら、何時まで経ってもモノは作れない。

何故なら分子単位で同じ長さは在りえないからだ、原子単位にしたら別の物質になって意味は無いので除外だ。


そこで 『 公差 』 が存在する、同じではないがこの範囲に入っていれば使えますよ~、ってなる。

設計上で許容される誤差、あるいは過去の設計に基づいた統計的に問題の無い数値が公差になる。

公差を厳しくすれば製品としての品質は上がるが、値段も上がる。

技術者は費用とも戦うのだ、上司や客先とだけ戦ってるんじゃない。

その辺の塩梅はマニュアルには出来ないから、エンジニアは経験が必要になるのだ。


以前、彼が設計に参加したシステムで事故が起こって被害者が出た事が在る、正確には彼ら設計陣の責任ではないが。

安全性や機能性を後回しにして、 『 カッコよさ 』 を求めたデザイナーの無能が原因であり、デザイナーの意見を採用した、会社上層部の無知が原因である。


『 私はいいモノが作りたくてエンジニアになったんです 』 と言った社長が居る。

大勢の人の前で堂々と恥ずかしげもなく言い放ったが、彼は経営者はエンジニアじゃ無いのを学ばなかったらしい。


エンジニアは資格制度じゃないから、取得したら終わりじゃない。

エンジニアであり続けるためには、最新の情報を手に入れて自身をアップデートし続ける必要がある。

素材・センサー・加工方法など、時に思いがけないブレークスルーがある。

常にアンテナを張り巡らせて、最新の情報を集めるのはそれだけで大変だ。

エンジニアであり続けるには生涯学習を続ける事になる、経営者の片手間に出来るような仕事ではない。

ものスゲー天才ならそうでもないんだろうが。


でだ、彼は下積みと言うか経験値を集めてる段階で、そのまま年をとって、そのまま経営権を持ってしまった。

彼が技術に関して無知に近い素人なのに、決定権を持ってしまった。

ヒロが巻き込まれた事故の真の理由は、総合電機メーカー上層部の無知が主原因の悲劇だった。


それでもヒロ達設計陣には後悔しかなかったし、責任を負わされるのも設計陣である。

会社組織から、エンジニアはそういう扱いを受ける。

出来なかったお前が悪い、説得出来なかったお前が悪いと言われる。

それはおかしいと言うとじゃあ辞めろとなる、お前の替りはいくらでもいるのだからと。


ヒロは転生したら文系に行って、公務員になりたいと思っている。

もしくは、大企業の親族に生まれたいと思っている。

有力な貴族で、金持ちで、魔法の才能が有って、剣が上手くて、身長が高くて、イケメンだったら尚良いと思っている。

無謀な願いであるのは承知している、だから口には出さない。


転生だけで在りえない可能性なんだし、その上更にってのは望み過ぎなのも分かってる。

でもだ、思ってるだけなら問題無いし、人前で言わないんだし、何よりタダだし。

それに、そんな事を考えてるんだよ~って、周りに言いふらして回らない程度の羞恥心や知識はヒロにはあるから、変人扱いされることは無い。


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ローズが居なくなった後も、ジュンとヒロは夢の国に滞在した。

ヒロは早期離脱を望んだが、その野望は実行されることは無かった。

早期離脱を目論んだヒロに接触した人物が居たからだ。

ガニメデステーションからムーンベースまで、ジュンとヒロを護衛してくれた小隊の隊長さんだ。


夢の国は二十日間の予定で貸し切りになっていた、ジュンとヒロのスポンサーはそれが出来る。

貸切ったのはローズとジュンの希望を安全に叶える、と言うのが組織内の予算獲得の表向きの理由だ。

しかし、関係者の福利厚生も同時にやってしまえと言うネライもあった。

スポンサーは決して無駄なお金は使わない。


もっとも、表向きにはアトラクションの大改装を兼ねた休園の為となっており、実際一部のアトラクションはメンテナンスと改装のため閉鎖されている。

ローズが飛び出していき、その上ヒロとジュンに三日で帰られたら大損害になる。

費用は支払い済みなのだ。


それに三人が休暇を取りやめると言う事は、三人の護衛担当は家族を置いて任務に戻ることを意味する。

何とかならないかと頼まれたジュンとヒロは、残りの日数を予定通り夢の国で過ごすことにした。

ローズを働かせて、自分達だけ休むことにほんの少しだけ罪悪感を感じてはいたが。



誤字脱字の報告、読後の感想などお待ちしています。

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