プランB 20
停滞した人類、これらを総合して判断し、一部の科学者は人類の種としての限界が来たと唱える者も現れた。
一部の科学者は、近い将来には人類に代わって地球を支配する種族が現れると唱えた。
宗教屋がそれらを利用したのもまた必然だった。
『 ・人類は地球を離れなければならない。 そろそろ実家から離れて一人暮らしを始めるべきだ、そう思わないかい? 』
スポンサーの問いかけに、頭を空っぽにして話を流していたヒロは即答できなかった。
ジュンはスポンサーの言った ”一部を除いて予定通り” で、別の事を考えていて即答できなかった。
しっかり聞いていたとしても二人は全く興味が無い話題だったから、結果は同じだろう。
人類がどうとかは重要な話なのだろうが、二人にとっては大きすぎる話題なのだ。
『 ・人類には未来と希望が必要だ、私達はそう考えている 』
その為のアピールだったのだと、スポンサーは語った。
事実、宣伝の効果は抜群だった、スポンサーの目論見は成功したと。
人々は熱狂し、その目は再び宇宙へと向けられた。
人によって求めるモノは異なったが、人々はそこにある何かを求め始めたらしい。
宇宙は真空で何もないのに。
それでもとにかく人類は活気を取り戻した、スポンサーはそう語った。
ジュンもヒロも日々の生活で閉塞感は在った、それが具体的に何なのかと問われても答えられないが。
毎日の生活で何となく息苦しいというか狭苦しいというか、とにかく生き難さを感じていた。
だから、スポンサーの言葉を部分的には理解は出来たが、それが人類の種としての限界とまでは考えていない。
「 それでは、計画の一部は遅れているのですね? 」
ジュンがモニターに映ったスポンサーに訊ねる。
彼女とヒロの試験は成功している、だから遅れているのはローズの研究ではないかと心配したのだ。
ジュンがローズのいるムーンベースを離れてから、9カ月以上が経過している。
その間にローズが何かやらかした可能性がある。
『 ・その通りだ。 ジャンプには成功しだが、少々ジャンプの距離が足りないと考えている。 もう少し、出来れば数10光年ほどジャンプしたいと考えている 』
「 数10光年ですか・・・ 」
モニターから目を落とし、やや俯きつつ何かを考え始めるジュン。
現状でも理論上では10数光年のジャンプは可能だ、そしてそれは燃料の関係で片道になる。
スポンサーが望むのは数10光年の往復できる航続距離だ。
『 ・片道では意味が無いんだよ。 ローズ博士にジャンプ機関の小型化と効率化をお願いしているんだが・・・これがなかなかね 』
スポンサーの口調は困っているような、苦笑いしているような感じを受ける。
ジュンから見たローズは素直な良い子なのだが、天才ゆえの頑固な所や融通が利かない所もある。
決して悪い子ではないのだが、スポンサーも苦労しているんだろうなとジュンは思った。
『 ・まぁ、それはそれとしてだ。 二人にお願いしたい事があるんだよ 』
「 ・・・何でしょうかね? 」
それまで黙っていたヒロが、警戒しつつ口を出す。
ヒロは自分の知らない事には口も手も出さない、サラリーマン時代の経験から導き出した保身術だ。
以前の会社で仕事の問題が発生した際に、ヒロに責任を取らせようとする上司がいたのだ。
他の部下に仕事を依頼している時に、ヒロが後ろを歩いていたと言うだけでだ。
上司が言うには、”直ぐ後ろで聴いてたよね?” ”聞いていたんだから、同僚がミスした時にはフォローしなければダメ でしょ” と、それが上司の言い分だった。
自分の指示ミスに起因するトラブルの責任を、誰でもよいから他人に押し付けたい。
ヒロはそんな上司の被害に何度もあっていた。
ヒロは酷い時には、自分が入社する前の図面のミスの責任をとって始末書を出した事もあった。
入社する前の図面で発注し、入社する前に製造し、入社する前に販売され問題が起きた製品の責任をヒロに押し付けたのだ。
始末書を出したから当然給料やボーナスは減額だ、ヒロが何を主張しても聴き入れられなかった。
それで当時の上司はヒロより上に居るのだ、上層部のお気に入りだったり社長の子供だったりいろいろだが、つまりはそういう事だ。
それ以来ヒロは社内で自分の身を守る術を体得していった、その他大勢のサラリーマンと同じ様に。
サラリーマンにとって会社の利益を守る事は大前提だ、だからと言って自分が不利益を被るつもりはヒロには無い。
サービス残業も、仕事を家に持ち帰って片づけるつもりも今はもう無い。
出る杭が打たれるのは大昔のこと、今では目立たない杭は利用されて捨てられる。
没個性で目立たない奴は真っ先に利用されて捨てられるから、そこそこ目立たないといけない。
少なくとも利用価値があるな、程度の認識は持ってもらわないと知らない内に切り捨てられる。
サラリーマンはこのさじ加減が難しい。
隠れてコソコソしているだけでは、一人前のサラリーマンにはなれないのだ。
知らない内に子会社ごと切り捨てられるのだから、防ぎようもない。
創業者の身内とか、大株主の息子とか、俺tueeeだったら好きに出来るだろうが現実は現実だ。
学生時代の卒業と同時に、目立たないだけのモブであることも卒業しないとサラリーマンはやっていけない。
『 ・フィールド発生装置の効果を上げて欲しいんだ。 効率も強度も上げて欲しいね 』
「 効率については理解できますが、フィールドの強度を上げるんですか? 」
『 ・その通りだ。 出力と効率、両方とも改善して欲しい 』
効率を上げると省エネになる、それはヒロにも十分理解できる。
省エネは何時の時代でも、設計の重要なファクターとして見なされる。
特に日本人は省エネを重要視する傾向が強いらしい、得意分野といっても良い。
現行品でも理論上は小惑星と衝突しても(衛星じゃなく小惑星だ)無傷でいられるのに、それ以上のフィールド強度が必要だとスポンサーは言う。
一体何と戦うつもりなのか、ヒロは疑問をもった。
だがそれ以上に気なるのは。
「 フィールド発生装置の消費エネルギーは、ジャンプ機関の消費エネルギーの1%程度です。 これ以上省エネにしても、システム全体としての効果は薄いと考えますが? 」
『 ・そうそう! そうなるだろうね! 』
スポンサーの声はウキウキと楽しそうだ、何が楽しいのかヒロには分からない。
省エネを目指すことに異論はない、無駄に消費されるエネルギーはもったいないとも思う。
ヒロは日本人だから。
ヒロは頭の中でザッと確認した。
ジャンプ機関と関連装置の諸々を搭載した宇宙船全体で計算すると、空間安定化装置の消費エネルギーは全体の1%以下だ。
それを1/10に出来たとして0.1%、システム全体で0.9%の省エネだ。
0.9%なんてシステム全体から見れば、省エネ効果は誤差範囲でしかない。
そして、消費エネルギーを1/10にすることは不可能だろう。
「 でしたら、別の角度から省エネを検討されたらどうでしょう。 空間安定化装置だけだと、最高に上手くいっても誤差範囲の省エネにしかならないと思うのですが 」
『 ・我々は検討する意義は十分にあると考えているよ。 いや、むしろジャンプ機関の効率化より重要だと考えている 』
二人のスポンサーはヒロを見つめている、映像の顔の部分に認識阻害効果が付いているため目線はハッキリしない。
それでも二人がヒロを見つめているのは、ヒロの隣のジュンでも分かるほどだった。
ホール通信には感情や気迫などを通信できる機能は無い、ローズが勝手に追加した可能性は残っている。
なぜそこまでスポンサーがこだわるのか、ヒロには判断できなかった。
「 ・・・分かりました。 そこまで仰るのでしたら省エネの検討を始めます。 最高に上手くいったとしても、システム全体の0.3%の省エネしかお約束出来ませんが 」
『 ・それで十分だ、よろしく頼むよ 』
その後、必要なものは無いか、足りないものは無いか、なんなら欲しいものは無いかスポンサーはジュンとヒロに確認した。
ジュンとヒロは、不足は感じていなかったので十分だと回答した。
『 ・ではこれで失礼するよ。 吉報を待っている。 必要な物が出来たらすぐに連絡して欲しい、何時でも何処へでも届けよう 』
静かに頭を下げるジュンとヒロ。
通信が終わりモニターがブラックアウトしたのを、床が少し暗くなった事で確認してから頭を上げる二人。
「 欲しいものが在ったら何でも届けてくれるってさ。 コーヒーの新豆でも頼んでみるかな 」
「 ・・・ 」
ジュンは何かを考えている。
二人は通信室を出てリビングに戻る、その間もジュンは何かを考え続けていた。
ヒロは二人分のコーヒーを用意してリビングのソファへ座る。
「 ヒロ。 スポンサーは欲しい物が在ったら、本当にどんな物でも届けてくれるのかしら? 」
コーヒーを受け取りながら、ジュンはヒロへ質問する。
「 多分そうじゃないかな、多分だけど 」
人類が保有しているジャンプ機関搭載船はまだ数えるほどしかない、その内の1隻を使用してジュンとヒロの望むモノを運ぶとスポンサーは言っていた。
通信を終えた後もジュンの顔色が優れない。
「 ・・・ 」
ヒロはコーヒーを飲みながらゲームを起動する、待ちに待ったアップデートが来ているはずなのだ。
ヒロがやっているゲームは、多少のタイムラグが在っても楽しめるゲームだ。
フルダイブゲームではないし、人によってはチャットが一番楽しいと言われるような種類のゲームだ。
そしてヒロはエンジョイ勢だ、ガチではない。
大昔はナンチャラRPGと言われるモノが氾濫した時代があった、とにかくMやRが沢山付いている方が高級とされた。
11LLLDDDKKKKBBBでも間違ってはいない、スゲーでっかい家って言った方が簡単でもだ。
それらのゲームはレベル差が在っても、プレイヤーの操作次第でレベル差をひっくり返して勝利できるのが特徴だ。
何のためのレベルだとか言ってはいけない、そういう設定なのだ。
レベル差をひっくり返すPSが、カッコイイとされた時代なのだ。
PS = プレイヤーの操作テクニックで勝てるゲームは、今では全てアクションゲームに分類されているが、当時はRPGに分類されていた。
今ではPSが必要な段階でアクションゲームになる。
だがレベル差に関係なく、PSで勝利が確定するようなゲームは今では廃れている。
キャラやアバターを育ててもPSが低いと負けてしまうなら、育成の時間や課金は無駄だし面白くないと考えるプレイヤーが多いからだ。
苦労して集めた経験値や装備に意味が無いゲームは誰もやらないし、課金もしない。
PSに依存する事で、積み重ねたロールプレイの成果を否定しているゲームだとそうなる。
って言うか、俺tueeeの主人公が沢山いるゲームでは、のんびりロールを楽しめない。
楽しめない者が多数を占めるゲームは収益が悪くなって廃れる、当たり前のことだ。
なぜ流行ると判断したのか疑問だ。
RPGの基本は役になりきって遊ぶこと、強くても弱くてもロールを楽しむのだ。
戦って勝つだけがゲームではない、バトルジャンキーは誉め言葉ではない。
人と殴り合うのが、切りあうのが楽しいって言うやつは、精神病で間違いない。
ただし、パズルや謎解きの要素はPSに含まないものとする。
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