終章:次の行き先は
翌日
「エリシア君、カルル君、おはよう・・・」
「おはようございます、おじいさん」
「おはよ、おじいさん。今朝はどうしたの?」
伝聞局に出かける朝、いつものようにおじいさんに声をかける
その表情はとんでもないものをみたかのように驚いたまま
「あれは一体・・・井戸と、畑・・・」
「一ヶ月のお礼です。格安で泊めて頂いた事、それだけではなく従業員として働かせて頂いたこと・・・色々とお世話になりましたから」
「俺たちに出来ることはこれぐらいだけど、少しでもおじいさんの為になってくれたらいいなって思うんだ」
「いや、むしろここまでしてもらうほど私は・・・宿だってオンボロだし、二人には安いお金しか渡せなかっただろう?あんな立派なものを・・・」
安いお金か・・・全然安くないよ。相場より上のお金を支払ってくれていた
そこまで働いていない僕らへ、一日の宿代より高いお金を賃金として払っていてくれたじゃないか
それに、安くて美味しくて量が多いお店に話をしてくれて料金を融通してもらえるように頼んだり、日雇い仕事の斡旋だっておじいさんが手を回してくれていた
・・・何から何まで彼にお世話になったのだ
むしろ全自動水汲み装置の作成や、魔法式だけじゃ足りないと二人揃って思うぐらいに
「おじいさんが色々と気を利かせて頂いたおかげで、この一ヶ月、準備に専念できました」
「ちゃんとしたお礼はまた明日。チェックアウトの時に。今夜は俺たちが御飯作るから、楽しみにしていて!」
「そうかいそうかい・・・いやぁ、嬉しいねぇ」
「しかしおじいさん。なぜ僕らにここまで・・・」
「そうだね。詳しい話は帰ってからしよう。夕飯の時にね。ほら、今日は伝聞局に行くんだろう?急いだほうがいい」
「そうですね。では、いってきます!」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
おじいさんの見送りを受けつつ、僕らは伝聞局へ向かっていく
明日の準備は、今日のこれで一通り終えられる
・・
伝聞局に到着した僕らは、それぞれ別室に案内されて制服の調整に入る
紺色を貴重とした伝聞師の制服
きっちりとした印象を抱くそれは、なぜか短パンだった
「なんでだろう・・・」
「それは僕が進言したんだ!」
「ユーリ様?」
「さん、でいいよ。今はもう依頼人ではないんだから。久しぶりだね。元気そうで何よりだよ、エリシア」
僕の依頼人であったユーリさんは嬉しそうに僕へ抱きついてくる
その首には、夕日色と空色のネックレスが二つ
ティルマさんの分も、自分で着用しているらしい
遺品として持ち帰ってきたそれは、きちんと贈られるべき相手の元でキラキラと輝いていた
「あ。別に子供だから短パンにしたわけじゃないよ。あの時の健脚を見たらむしろ制限がつく長ズボンは悪手かなって思ったんだ。足、とっても自由にしているよ」
「な、なるほど・・・」
僕としては長ズボンが良かったんだけど・・・ユーリさんが色々と考えてくれた結果だ
少し気恥ずかしいが・・・これはこれでいいかもしれない。動きやすさはいい方だと思う
でも、そうだな
寒い土地に行くときは長ズボン支給してもらえるかな・・・
「その代わり、ブーツに力を入れています!」
「どのような感じにでしょう・・・」
「長時間歩いていても疲れにくい。それに通気性もバッチリで熱い土地でもムレはない!羊族の獣と同じ足を再現しているんだ。頑丈な爪も装備しているから攻撃力もバッチリ。道中には変な輩もいるからね。しっかりその足で自衛してね!」
「は、はい!」
とても、便利なブーツを貰ったらしい
・・・しかし、ここまで特注品みたいな扱いとは。やはり伝聞師って人数が少ないから、新しく入るたびに本人たちに合わせた特注品を作ってくれるのかな
「んー・・・エリシアが喜んでくれてよかったよ。技術班にエリシアの特徴を伝えて作ってもらった甲斐がある」
「・・・」
いや、この待遇は僕だけみたいだ
偉い人に気に入られてしまったらしい。それが何らかの影響を生まなければいいんだけど・・・大丈夫だよね?
「それから、制服の方だけど・・・サイズは問題ないかな?」
「はい。ぴったりです。ベレー帽も問題なく。けれど、ズボンのサイズが少し大きいかな、と」
「わかった。じゃあベルトとサスペンダーを支給しよう」
「ベルトはわかるのですが、なぜサスペンダーまで・・・」
「ティルマの趣味だ」
「は、はあ・・・」
彼は近くにあった箱の中からベルトとサスペンダーを取り出し、僕に手渡してくれる
・・・準備してあったのか
サイズがピッタリと言っても「これがあればもっと似合いそうだね!」とかいいつつ二つとも出してきそう・・・
どうあがいても、ベルトとサスペンダーからは逃げられない・・・そんな気がした
「しかし、ユーリさんはサスペンダーが趣味なのに、なぜ身につけていないのですか?」
「愚問だね、エリシア」
「・・・?」
「サスペンダーをつけたら僕は飛べなくなるだろう?公務の時は絶対にティルマから着用を義務付けられていたんだ・・・」
「公務から逃げていたんですか・・・?」
「た、たまにね!それがバレたのもあるし、他のこともバレて・・・最終的にしびれを切らしたティルマから絶対につけろって言われるようになってさ」
それから彼は少しだけ昔の話をしてくれた
彼女が生きていた、昔の話を
・・
「ユーリ!また公務をサボりましたね!?」
「貴族院の定例夜会って、名目的な会議を少しして、それ以降はただの懇親会。おじさんたちとお酒飲むだけとか退屈じゃないか。せめて女の子が・・・」
「は?」
「いえ、なんでもないです・・・」
ある日の話
夜会を抜け出して、自宅に帰宅した僕はその話を聞きつけて飛んできたティルマに正座状態でお説教を受けていた
「本当にユーリは浮気症ですねえ・・・私というものがありながら、綺麗な女の子とお酒が飲みたいだなんて」
「公的な場面でも駄目かい?」
「駄目です」
「他の、貴族院の女性でも?」
「駄目です」
「母や姉とも?」
「・・・そこは少し考えます」
決して「いいですよ」とは言ってくれないらしい
まあ、言いにくい理由もわかってはいるけどね
「家族とじゃないか」
「家族であろうとも、ヴィトーリア様とキルシュお姉様はその・・・」
「そうだね。酒癖が異様に悪い。それは君がよくわかっているものね」
酒に溺れた姉と母にティルマが襲われかけたのは記憶に新しい
その時のティルマが服を全てひん剥かれていたことは、流石にお子様のエリシアには話さない
その後も大人らしい過激な話だから、内緒にしておこう
「・・・お酒、弱いくせに沢山飲むから私としては外で飲ませたくないのですが」
「それでも飲まなければならない時がある!」
「格好良く言っても無駄です。羽毟りますよ?」
「それは勘弁してほしい・・・流石にね、見栄えって大事だからね。翼も一種のステータスなんだよ、ティルマ。それは君も理解しているはずだ」
鳥族の見た目は比較的に美形が多いらしい。他の種族に比べてという話だが
しかし同族からみたら顔なんてどうでもいいのだ
同族の僕らが他者に見る外見的情報の一番は「翼の美しさ」
顔や体型など気にしない。翼の様子だけを気にするのだ
それから僕らは「声」を気にする
鳥族は歌うのが好きだ。話すのが好きだ
翼の好み、そして波長にあう声の持ち主・・・それこそ番に相応しい存在であると、僕らは考えている
「わかっているからです。ボロボロになれば言い寄る女もいなくなりますよね?」
「その思考は重すぎるよ、ティルマ。流石にやめてもらえるかな」
「そういう風にしないと、ユーリは色々な女の子にいい顔しちゃうので。恋人が、番がいるというのに」
「どんな存在にも優しくするのは当たり前じゃないか」
「その優しさは、私を傷つけていることに気がついていますか?」
「・・・」
あの日、そう訴えかけてきたティルマの寂しそうな目を僕は今でも覚えている
当時はその言葉の意味がわからなかった
優しくするのは当たり前。それが普通だと
彼女が言っている言葉の意味が、理解できなかった
けれど彼女はきちんと話してくれる
今、自分が何を思っているのか。何を感じているのか
「優しい貴方は誰にでも手を差し伸べる。老若男女関係なく。それは貴方の長所であると、私は断言します」
「けれど、それだけではないんだよね」
「ええ。私はそんな貴方が大好きで、大嫌いです」
「・・・意味がわからないね」
「言い方を変えましょう。私は誰かに優しくできる意志をもつ貴方が大好きです。けれど、その後にデレデレと女の子と会話をし続け、上手くいけば一緒に食事へ行くような貴方は大嫌いです」
「バレていたのか・・・」
「むしろなぜバレていないと思ったんですか?香水の匂い、会うたびに違うのですから嫌でもわかります」
「そこは盲点だった・・・」
睨みつけた後、ティルマは笑顔を浮かべて僕の羽へ手を添える
いつでも毟ることができるように
「女好きなのは変わりないですね。出会った時から軽い男です」
「まあね。女の子は今も昔も大好きだから。あ、でももう春は落ち着いているからね?」
「わかっていますよ・・・はあ、どうしてこんな男を好きになったのか、自分でも理解できません」
頭を抱える彼女はそのまま僕の羽を握りしめてくる
引っこ抜けそうになるけれど、そこまでの力ではない
でも、後で手入れ必須だろうなぁ・・・
「空のような綺麗な羽に見惚れ、声に聞き惚れ、心に惚れる。自分でも単純だと思いますが、種族の恋愛観からは抜け出せません。たとえ、半分であろうとも」
「そうだね。特に君は半分の方も色濃く出てしまっているようで」
天使の特徴は、心に決めた者を生涯愛し抜くところにある
その者が他の存在に心を揺らしたりすると、天使は嫉妬に溺れ、時には翼が黒くなってしまうらしい
よく見ると、ティルマの羽も少しだけ灰がかかっていた
それは彼女が僕に対して真っ直ぐな愛情を向けてくれていること。それに加えて、他の女の子と会話したり食事したりする僕に怒りつつ、その子達に嫉妬を向けている証拠だ
こんなことをしているが、別にティルマを試しているわけではない
元々僕は昔から女の子が大好きで、ティルマに出会うまでは相手を定めず、不特定多数の女の子と行動を共にするような鳥族だった
女の子と未だに遊ぶのは、その時の癖が抜けていないだけだ。残念な話だけど
それともう一つ。反応が表に出るティルマを面白がっているわけでもない
彼女がそうする姿はとても可愛らしいのだが、僕が番と離れてストレスを感じるように彼女もまた、翼が黒くなると体調を崩してしまうから
「・・・嫉妬深くなるほどに貴方を好きでいる証拠です。誠意を見せてください、ユーリ」
「わかってる。でも、仕事で女の子と話すのは許してほしいなー・・・後、母さんと姉さん」
「わかっています。けど、そうですね・・・一つ、対策をさせてくださいな」
「どんな対策?」
「サスペンダーというおしゃれアイテムがあるらしいではないですか。それを仕事中は必ずつけてください。いや、つけて。絶対に」
「どうして」
「羽が展開しにくくなるどころか、動かしにくくなるでしょう?」
「ああ。そういう・・・」
「仕事からも逃げられなければ、羽の見栄えも良くはなるけれど動かせないから女の子たちが不審がって寄ってこない。軟派な鳥族の彼を持ってしまったパートナーにおすすめのアイテムだそうですよ?」
「・・・」
そんなとんでもないアイテムが出回っているらしい
しかし、僕のような鳥族に苦労させられている子は他にもいるそうだ
・・・だからこそ需要があり、裏で効果が広まっているんだろうな
「ユーリ、貴方が束縛を嫌うことを私は知っています。しかし、許してほしいのです」
「わかってるよ。君を不安がらせた僕の罰として、これはきちんと身に着けさせてもらう。飛ぶ時以外、いつでもね」
そうして僕はティルマから貰ったサスペンダーを身につけるようになった
同時期に僕へつきまとっていた「浮ついた噂」が消滅し、番へ一途に愛を向ける鳥族として巷で話題になった
同時に、パートナーへ誠意を見せるという利用方法で鳥族男性の間にサスペンダーが流行したのは、別の話
・・
「・・・と、いった感じの昔話だよ。僕とティルマだけの思い出話」
「り、理由は結構褒められたものではありませんし、天使の個性を垣間見た気がして若干恐怖を覚えているのですが・・・どうして、その話を?二人だけの思い出なのでは?」
「お礼も兼ねて、かな」
僕の制服を微調整しながら、ユーリさんは小さな声で呟いた
「デリが、エリシアは異種族の歴史や文化、生活や個性に関して大きな興味があるという話を聞いてね。知っているかもしれないけれど、少しでも君の知識の糧になってくれればと思ってね」
「デリ先生が・・・貴重な話、ありがとうございます」
「いいんだよ。君には、返しきれないほどの恩があるから」
「仕事というか、試験ですよ?」
「それでもさ」
ベレー帽をしっかりと整えた後、彼は僕の手をとってくれる
「エリシア・ノエリヴェール。最愛の彼女が遺した手紙を送ってくれた新たな伝聞師である君を、君の護衛を務めたカルル・アステラ・ヴァーミリオンのことを、運んでくれたもので救われた事実を、僕は生涯忘れることはない」
「・・・」
「僕は君たちの伝聞に救われた。だから僕は君たちへ報いるよ。僕にできる最大の援助を行おう。力になれることがあればいつでも言いなさい」
「・・・はい。ありがとうございます」
「それと、君たちが何故か依頼した伝聞証明書。デリから預かっているよ。何に使うんだい?それに、テージアってあの堅物門番の・・・」
「ティルマさんの手紙を受け取った際に、テージア様にはお世話になりまして。これは、彼からの依頼なんです」
「そうかい。じゃあ、早く持っていってあげないとね。うるさいよ、あの男は」
「そうですかね・・・?」
ユーリさんから証明証を受け取り、支給されたばかりの鞄に入れ込む
この鞄もどうやら僕に合わせて作られたらしい
丈夫な上に大きさも長さも調整できる「魔法道具」らしいので、古今東西を駆け抜ける伝聞師たちの間では必需品
命以上に大事な依頼品を運ぶのに使うのだから
「・・・あの天界人至上主義の男が、何をするつもりなんだ」
「どうかされましたか?」
「ううん。少し空も、忙しくなりそうな予感がしてね。あ、空の滞在先に困ったら我が家へおいで。美味しいご飯にふかふかお布団を用意して待っているから。いきなり押しかけても大丈夫なようにしておくからね!」
「ありがとうございます」
聞き間違いじゃなければ、空が忙しくなりそうな・・・だよね
テージア様は友好的な感じであったが、天界人至上主義・・・つまりは天使や神に連なる種族しか認めていないような存在だったということだ
そうとは思えないのだが・・・昔はそうだったのだろうか
奇妙な予感を感じつつ、僕はユーリさんに見送られながら部屋を出ると、廊下でいつもの二人と再会する
「きちんとネクタイを結べと言っているだろう」
「嫌だね・・・あだだだだだ!首締めるなって!」
いつもの教員服を着たデリ先生はカルルのネクタイを握りしめて、怒りながらそれをきつくしめているようだ
大変なことになっているカルルの服も、伝聞局から支給される護衛の制服
ローブととんがり帽子は自前のだが、それ以外は制服らしいものになっていた
オーソドックスな護衛制服なのだが、それをカルルは酷く着崩しているようだ
ネクタイだってそのうちの一つ。ワイシャツはズボンから出ているし、ベストなんてボタンを一つも閉めていない
正直みっともないのだが・・・それでもかっこいいと思わせる振る舞いは何なのだろうか
「カルル、せめてネクタイだけは自分で結べ・・・!」
「今日は特別にしたいの!ほら、デリ!首絞めてないであっちいけって・・・しっし」
「なんだよ。何をする気なんだ。どうせアリシアみたいに突拍子もない事をしでかすんだろう?わかっている。わかっているから止めようと・・・」
「エリちゃん」
後ろでひたすら文句を言い続けるデリ先生を無視して、カルルは僕の前に立つ
それから身長を合わせるように中腰になりながら、それを手渡してくれた
「似合ってるね」
「ありがとう・・・カルルも、着崩しているけど」
「こっちの方が俺らしいでしょ?」
「うん。似合ってるなって思った。公的な部分ではしっかりしてね」
「わかってるよ」
「ところで、なんでネクタイを僕に手渡すの?」
「エリちゃんに気合い入れてもらおうかなって。ネクタイ、結べる?」
「実はまだ・・・」
「エリちゃんもネクタイじゃ・・・あ、リボンなのか」
「好きなのを選んでいいと言われたから・・・」
僕の首元に巻かれているのは、緑色のリボン
色も自由だったので好きなものを選んだが・・・悪手だったかな
こういう時は、迷わずネクタイを選ぶべきだっただろうか
「・・・エリちゃんらしい優しい印象が出てるね」
「子供っぽくない?」
「まだ未成年だから。十五歳になったら、ネクタイにしようね。どの種族でも十五歳が大人の基準でいいんだよね?」
「うん。僕らの成獣基準も十五歳からだよ」
テレジアノーツの大人は十五歳からと大体の種族間で統一されている
最も、短命な種族はその限りではないが
十五歳になったらできること
葉巻を吸えたり、お酒が飲めるようになる・・・かな
異種族結婚は十八歳だけど、同族なら十五歳から結婚はできるらしい
今はまだ興味がないから調べたことはないけれど、いつか真剣に調べたりするんだろうか
恋とか、しちゃうんだろうか・・・
「どうしたの、エリちゃん」
「・・・大人ってどんな感じで過ごしてるのかなと思って」
「子供と対して変わらないと思うけどね・・・まあ、三年後に大人の遊びを教えてあげるから楽しみにしてなよ」
「どんな遊び?少し教えてよ」
「カルル。エリシアに女遊びとギャンブル、それからお酒と煙草その他諸々悪いことを教えたらお前を生涯追いかけ回してやるからな」
「女遊び?ギャンブル?」
「デリがその悪い遊びの片鱗教えてどうするの・・・エリちゃん。今デリが言ったことは絶対にしちゃ駄目だからね。約束だよ」
「はーい」
「でもまあ、そんなカルルを警戒して初勤務地は厳しい場所にしておいてよかった。食事は美味しいけど娯楽が全く無い辺境にね・・・」
「え・・・」
デリ先生がそう呟くと同時に、ユーリさんが指示書を持って僕らの前へ立つ
「エリシア、カルル。君たちの初勤務先は水の都こと「レーアクルフ」だ。中央区からかなり離れた場所の赴任先になるから、初勤務日も少し遅らせている」
「そこで、新米伝聞師として先輩たちから色々と教えてもらいなさい。三年前に伝聞師になった「鹿族」のキャレットが君の教育係だ。とても親しみやすい子だよ。エリシアも話しやすいと思う」
「先輩・・・!」
真新しい制服に袖を通し、初勤務先を伝えられる
入局式は明日。出発は明後日
まだ知らない先輩伝聞師たちが待つ水の都への道は、もう少しで開かれる