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第3話 ルールとわがまま

 昨日間違えた問題をもう一度解き直すところから勉強を始めたが、意外と人の話し声がして静かな環境とはいえない。図書館というと静かなイメージがあるが、実際はこの図書館と同じ階に児童館があるのでそこからの声も聞こえるし、館内の小さな子は私語禁止というルールも理解できていないために周りを気にせず話している。そして親も特に注意することなく子どもと笑いあっている。加えて司書さんの貸出・返却受付時の声も加わるので、「うるさい」ともいえるような状態になっていた。

 しかもいつ注意されるかとびくつきながら勉強するので、そこまで集中できなかった。図書館は学生に優しくないようにできているようだ。

 結局、何も注意されることはなかったが、2時間ほど勉強して家に帰った。


「今日、区立図書館に勉強しに行ったんやけど、特になんも言われんかった」

 俺は母に話しかけた。

 「なんで図書館で勉強したらあかんのかなあ」

 「あんま勉強してほしくないからでしょ。長く居座ってもらいたくないって思ってるからちゃう?」

 母は答えた。

 「でもさー・・・図書館って市民が知を深めるところやろ?図書館の本使って勉強することもあるかもしれんし。だいたい愛知県とかやとぜひ勉強してくださいっていうところもあるのに。なんで俺らだけあかんねん」

 「うーん、まあ、確かに・・・そこはほんまに場所によって考え方のちゃうところやろうなあ。京都はほら、学生が多いから、禁止せんとみんな勉強しに来るし、しゃあないんとちゃうか」

 「あー」

   そうはいってもやっぱり納得ができなかった。小学生も中学生も高校生も学校が始まっているというのに、大学生や俺達大学院生は学校にも行けず、勉強する場所も奪われている。なんで俺たちだけがコロナの煽りを食らわなければいけないのだ。不公平じゃないか。だから俺は明日も図書館に行く。それが周りにどう思われようとかまわない。俺だって勉強したいんだ。もしも注意されたら、「空いているならいいじゃないですか。ほかの利用者の迷惑にならないし」と言って、相手を論破してやる。

 胸の内に黒いものが渦巻くのを感じながら、俺は寝る準備をし始めた。


 今日も図書館に来た。今日は授業で扱った問題の復習をするつもりだった。人はそれほどいなかった。

 論破するつもりでいたから、注意されるかもしれないということは昨日ほどは気にせずに勉強できた。

 勉強を始めて30分ほど経ったところで、後ろから声をかけられた。

 「すみません、ここは自習禁止ですので・・・」

 来た――――――――――

                                         つづく



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