第2話 図書館と勉強
区立図書館の駐輪場に自転車を停めて、階段を上る。入り口には「新型コロナウイルス感染症対策のため、長時間の滞在はご遠慮願いますようお願い致します」との貼り紙がしてあった。そして手前の机にはアルコール消毒液が置いてあった。図書館に限らず、今やどこでも見かける風景だ。
アルコール消毒は別に好きではないが、一応しておく。「みんながしているのだから、しないやつは悪い奴」という村八分思想が日本人の国民性を基礎づけていることに嫌気がさしていたが、ある程度そのような同調圧力に従わざるを得ない自分も若干嫌だと思う。俺もやはり日本人ということなのか。
中に入ると、人が結構いた。親子連れと老人がほとんどだった。俺のような20代前半の若者はほとんど姿を見かけなかった。
図書館の壁には
「次の行為はご遠慮下さい。
・飲食
・携帯電話
・私語
・自主勉強 」
と書いてある。そう。俺は今から図書館において禁止されている勉強をやろうとしているのだ。
なぜか。
一つ目の飲食禁止は理解できる。なぜなら本が汚れる可能性があるからだ。二つ目の携帯電話もまあわかる。電話はうるさいから外でやれということだ。私語も同じことだ。では勉強は?なぜやってはいけないのだろうか。図書館は本を読む場所であって、勉強をする場所ではないからか?しかし本が汚れる心配もなければうるさくする心配もないから、他の禁止事項に比べて圧倒的に帰責性が低いのではないだろうか。そんなに図書館で勉強するのはいけないことだろうか。席がいっぱいならまだしも、そうでないなら別に勉強したって良いのではないだろうか。
どうも釈然としなかった。
この世は他人が作り出したルールに満ちあふれている。俺が生まれる前から決まっていたルールがいっぱいあって、それに従えと周りは言う。でも、自分が決めたわけでもない、どこかの知らない奴が作ったルールに、理由もなく従わないといけないというのはおかしくないだろうか。せめて理由を分かるように書け。そしてその理由に合理性がないなら、そのルールには従うべきではないのではないか。
俺は胸の辺りがモヤモヤするのを感じながら、刑法の「短答過去問パーフェクト」という参考書を開いた。
つづく