第1話 勉強場所難民
「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、自習室を当分の間閉鎖します。厳しい状況ですが、自分を甘やかさないで下さい」
突如として発生した新型のウイルスの脅威は、決して他人事ではなかったと思い知らされる。まさかここまで深刻になるとは、今年の2月ごろには考えもしなかったのだ。甘かった。
毎日届く大量のメール。しょっちゅう切れるWi-Fi。日に日に溜まる眼精疲労。とにかくストレスフルな日常だ。自習室が閉まったことで、勉強場所にも追われている。司法試験は来年5月にあるというのに、あまりやる気が出ない日々が続いていた。
家にいると、どうも勉強する気が起きないのだ。やろうやろうと思っているだけで時間が過ぎている。やはり外に出ることが一番なのだが、無料で勉強できるスペースは意外にもほとんどない。学校の図書館も、図書の貸出・返却のみ受け付けており、勉強禁止となっている。
スターバックスにでも行くか。
俺は近所にあるスターバックスに行ったが、そこは既に人で埋まっていた。ソーシャル・ディスタンスの確保のため席数が半分になり、かつ俺と同じように勉強する場所に追われた受験生たちが大挙して押し寄せていたのだ。
席は当分空きそうにない。俺はすごすごと引き返した。
さあ、どうする。
学校もダメ、スタバもダメ、家もダメ。
・・・仕方がない。あまり気が進まないが、俺はスタバから歩いて5分程度の場所にある、区立図書館に足を運んだ。
つづく