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3分読み切り短編集

推しが出ない

作者: 庵アルス

 両手に握るは汗とスマートフォン。画面はソシャゲのガチャのリザルト。

 大人気鬼退治漫画とコラボ中の、限定ガチャだというのに、

「推しが出ない⋯⋯!」

 私はがっくりと膝を着いた。

「え、ガチャ爆した?」

 隣の友人がニヤニヤしながら訊ねる。笑いながらそういうことを言わないでほしい、へこんでいるのだから。

「推しは出なかった」

 口を尖らせてリザルト画面を見せる。

「えっ⋯⋯嘘、無限様出てんじゃん!」

 最高レアリティキャラが輩出されたところで、『お前じゃないんだよ!!』と叫びたくなる。他にもレアリティの高いキャラや、コラボキャラも出てきたが、推しではない以上、育てる気にならない。

 とはいえもちろん、漫画のキャラはみんな素敵だ。主要キャラはもちろん、数えるほどしか登場していない脇役もきちんと個性が付与されている。極悪非道の敵キャラですら、憎みきれない魅力があり、熱心なファンがついている、この友人のように。

 このようにソシャゲとコラボした日には、サーバーが落ちかねないくらいの勢いでガチャが回される。SNSにも、出た・出ない・ガチャ爆死の報告が絶えない。

「なんでー、なんで来てくれないの⋯⋯この日のために無料石貯めに貯めてたのに⋯⋯」

 食費を削ってまで課金し、ガチャを回した挙句、目当てのキャラが出なかった人もいるので、自分から『ガチャ爆死』とは決して言わない。しかし、心中は焼け野原のように燻って穏やかではない。

「描けば出るらしいよ」

 友人は気休めにもならないことを言う。コラボが発表され、開始当日になるまで、連日推しのイラストを描いてはSNSにアップロードし続けた挙句、推しがひとりも出ていない友人が。

 何故、こうも暢気に言えるのだろう。失うものがなくなったからだろうか。

「描いたもん、なんならSSも書いたけど?」

「お、じゃあ課金すれば出るんじゃない?」

「課金はしない!」

「うーん、じゃあとりあえず、もう一回やってみれば?」

 私は渋々、残っている無料石でガチャを回した。

 お決まりの演出が流れる。ガチャマシンの取手をぐるりと回し、落ちてきたガチャポンが割れる。

 すると、それは神々しく輝きながら、ゆっくりとシルエットが浮かび上がった。最高レアリティキャラが当たったときの演出だ。

 期待に胸が踊る。今度こそ推しが来るか⋯⋯?

 画面がきらりと七色に光り、ついにキャラが判明する。

 無限様だった。

 ランクアップした。

「お前じゃないんだよ!!」

 友人は羨ましがりながら爆笑した。

2020/11/25

僕が胡蝶しのぶさん推しと知った童磨推しの方に「あっ⋯⋯仲良く⋯⋯なれないですね⋯⋯」と淋しそうに言われたことがあります。

書き忘れですが、このお話のコラボキャラは架空のものです。名前で呪いをかけるあのお方とは関係ないので見逃してください。

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