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 わたくし、華園之宮 真珠はなぞののみやしんじゅと申しますの。名前の通り、ご先祖は大名、宮様の血を引く華族の血統、生粋のお姫様育ちでしてよ。幼い時から、外に出た折には、護衛代わりに忍びの血を引く、下足番を従えていましてよ。


 ☆☆☆☆☆


 ふう……無事に学び舎を出ることが出来ましたわ。守衛さんには、目と花の先にある、お花屋さんにご用があるから、と上手く話しましたの。放課後や、授業でお茶会やら野点があるので、お花屋さんと、お茶屋さん、お菓子屋さん、雑貨屋さんは、学園のご近所にお店がありますの。


 ここでわたくしは、お金の使い方を学んだのですわ。それに授業でも駅前の大通りに、社会見学に出向く事もあるのですわ。その時は各自の自家用車ではなく、民間交通機関を利用するのです。


 少しばかり郊外のここから、目指すお店がある駅前迄は、バスに乗らなければなりません。雑貨屋さんの前に、駅前が終点のバスが来る事は、この前知りましたから大丈夫ですの。


 プシュー、と息を吐くよな音を立てているバスが、直ぐに来ましたの。到着したそれに乗り込み、一番後ろ、憧れの窓際の席に座ると、小さな子供の様に、うきうきとしながら外を眺めます。


 運転手のアナウンスのあと、ぐらり揺れてから、駅前へと出発をいたしました。ウフフ、遠足の様ですわ。わたくしは携帯電話を取り出すと、お目当てのページを開きました。


 憧れのお店の位置を、しっかりと確認する為ですの。駅前のバス亭からは見えていたと、覚えてはいるのですが、些か不安なのです。


「やはり駅前に有りましたのね、これならば道路を渡れば直ぐですわ」


 ほっといたしました。


 初めての経験ですわ。たった独りで、こうしてバスに揺られることも、駅前に向うのも、彼女無しで外で、動いているのも……流れる街路樹の緑を、旅に出たばかりの勇者の様に、高まり行く胸の鼓動を抑えつつ、眺めておりましたの。


「次は、はなぞののみや記念病院、はなぞののみや記念病院、お降りの方はボタンを押してください」


 駅まではいくつか停留所がありますの。はなぞののみや記念病院、華園之宮神社前、華園之宮ホワイトパールホール前……と続くのですわ。


 ピンポーンと押されるボタン、運転手席近くのお方が押されましたの。ああ……一度、ピンポーンと押してみたいものですわ。郊外授業も、はなぞののみや駅前が目的地なので、途中下車の必要がなく、未だにその機会には恵まれておりませんの。


 ぶしゅぅぅぅ……と音立て停まるバス。杖をついたお年寄りの方がぼつぼつと降りまれました。そして再び動き出した時。


 ……、ふう、困りましたわね。バスの運転手さんがミラーを使い、わたくしの事を伺う様な、オーラを醸し出してます。キョドキョトと、運転しつつ視線を動かしてますわね。独りという事実を確認しておりすわ。


 こう見えても、自己防衛の為の授業は受けておりますのよ。それなりの気配を察したり、少しばかり戦う事も出来ます。


 しかし運転手さんは、敵ではありません。何故なら『はなぞののみや交通』の社員さんだからです。おそらく八咫を探しているのでしょう、独りで出歩く事など無いわたくしですものね。


 さて、わたくしの場所は既に、八咫の手には分かっていることでしょう、GPSが仕込まれておりますから。この運転手が知らせれば彼女は、わたくしの計画を読みますわ。


 初めてのおつかい、という感じで、見逃してくれる事を、神にお祈りしましょうか。



 ――、わたくし、華園之宮 真珠はなぞののみやしんじゅと申しますの。名前の通り、ご先祖は大名、宮様の血を引く華族の血統、生粋のお姫様育ちでしてよ。幼い時から、外に出た折には、護衛代わりに忍びの血を引く、下足番を従えていましてよ。


 やんごとなきわたくしは、これから向かう時への楽しみに、胸を膨らませていましたの。

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