弐
わたくし、華園之宮 真珠と申しますの。名前の通り、ご先祖は大名、宮様の血を引く華族の血統、生粋のお姫様育ちでしてよ。幼い時から、外に出た折には、護衛代わりに忍びの血を引く、下足番を従えていましてよ。
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キーンコーンカーンコーン♪授業終了ですわ。さ!今日はこれにて終わりですの。わたくしは帰る支度をそそくさと済ませております。すると……
「真珠様に、少しばかりお話がありますの」
あら……なにかしら?八咫に、取り次ぎを求めるクラスメートの姿。確かお名前は『牧之原薫子』様ですわ。ふっくらとしたした頬、天然パーマなのか、何時もクルンとした肩までの髪を、紺のリボンで束ねられている、かわいい系の彼女。
「何か御用でしょうか、薫子さま」
ああ!そんなぶっきらぼうに話さなくても、マコ様ファンかもしれません事よ。八咫は、わたくしの事を護るのが信条、ですから、近づく者は、男であろうと女であろうと、見知った顔であろうと子供であろうと、先ずは敵か味方かを見極めるのですわ。
「あ、あの……」
切れ長の視線を受け、どぎまぎとした薫子様です、うふ、かわいい、もじもじとされてる彼女はお人形みたいですよの。
小さい、可愛らしいものを美しいものと捉える感性は、平安京から確立されてる美意識。
あら、丁度良いですわね、八咫をこの子に任せて、わたくしは抜け出せそうでしてよ。お財布と携帯電話さえ、ポケットにあればよろしいのですから。
こほん、わたくしは一円玉とか、触ったことは御座いませんが、使い方はちゃぁんと、校外学習で学んでおりましてよ。今日の為に中身も入れてきてますの。
「お話をお聞きして置いて、わたくしは、お花摘みに行ってまいりますから」
直ぐに戻りますから、失礼、とカラリと戸を開けると、授業を求める終えた生徒が、ちらほらいる廊下へと出ましたの。
――、わたくし、華園之宮 真珠と申しますの。名前の通り、ご先祖は大名、宮様の血を引く華族の血統、生粋のお姫様育ちでしてよ。幼い時から、外に出た折には、護衛代わりに忍びの血を引く、下足番を従えていましてよ。
「真珠様、ごきげんよう」
「真珠さま、ごきげんよう」
わたくしが廊下を歩くと、自然に左右に分かれる生徒達。モーゼにでもなったかのようです。オーホホホ。
皆頭を下げ挨拶をしてまいりますわ。それに返礼をしながら、優雅に歩くわたくし。そういう風に振る舞うことを求められてますからね。期待を裏切ってはいけません。本来ならばこの様な場所など、駆け抜けたいのです。
急がば回れとも言いますものね。わたくしは、怪しまれぬ様に歩き進み、そして裏庭へと向かいますの。正面玄関では、じいやが迎えに来てますから。車寄せに運転手もおりますからね、見つかればアウト!でございますの。