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Dream and reality  作者: PeDaLu
4/6

来訪者

突然の来訪者に混乱する楓。そのときに起こるのは。。

玄関ドアを開ける音。チェーンロックがかかっててそれを引っ張る音。


「お母さん!お母さん!」


配膳をしている母親にすがりついた時だった。


「おーい。なんだこれー。入れないじゃないかー」


「なあに?楓、チェーンロック閉めたの?お父さんが入れないじゃない」


「まって!お母さん!本当にお父さんか確かめてからチェーンロックを外して!お願い!」


「はいはい」


母さんは呆れる様子で玄関に向かった。


ドタンッ!


玄関から大きな音がした。ヒトが倒れるような音。


「お母さん!」リビングから玄関廊下に飛び出しそうになって踏みとどまる。気配を探りながら恐る恐る玄関を覗くとお母さんが倒れていた。


ガチャガチャ!ガチャガチャ!!


「早くここを開けるんだ!おい!急げ!早く!」


玄関で倒れたお母さんは頭から血を流して倒れていた。


「お母さん!」


ガチャガチャガチャガチャ!!!


「開けろ!」


「いやーっ!!!!」


私は耳を押さえてその場にしゃがみ込んでしまった。


「楓!」


名前を呼ばれて玄関ドアを見ると隙間からお父さんが必死に手を伸ばしていた。


「楓!早く開けろ!母さんが!」



私は呆然と座っていた。あまりのことに現実が受け入れられない。何でこんなことになったのか。私がチェーンロックをかけたから?私がチェーンロックをかけなければ、お母さんはそれを開けに行くことはなかった?こんなことにならなかった?私のせい?


お母さんは病院のベッドの上に横になっていた。この部屋はとても静かだ。病院なんだから静かで当たり前なんだけど。そのなかでも特別に静かな気がする。


お父さんは部屋の外の廊下で誰かと話しているみたい。


「楓、お父さん、ちょっと席を外すから、一緒にいてやってくれ」


無言で頷く私の後ろでドアの閉まる音がした。


「なんで……なんでこんなことに……なんで……」


お母さんは眠っているように横になっていたが、もう起きあがることはない。


私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。


なんど反芻してもお母さんは戻らない。


「あの変な夢さえ見なければ!」


手に爪が食い込んで血が出るんじゃないかってくらいに握りしめる。


母さんは玄関で滑ったのかスリッパに足を引っかけたのか、フローリングから玄関のタイルに頭を打ち付けて死んだ。


お父さんが色々やって、一旦家に帰って準備をしよう、と言われてタクシーで家に帰る。

食卓にはお母さんが配膳した冷めた晩ご飯。お母さんが作ってくれた最後の晩ご飯。


私は制服に着替えてお父さんと葬儀場へ向かった。一報を聞きつけた杏子もすぐに来てくれた。


「杏子ちゃん……」


「楓、あなたはなにも悪くないわよ。事故は誰にも止められないわ。あなたは悪くない」


隣に座る楓の頭を抱きしめて私は繰り返す。それ以外になにを行ったらよいのか分からなかった。


=====


「ちょっとやりすぎなんじゃないの?」


「いやぁ、これは想定外だよ。僕のやったことじゃあない」


「でも間接的には君のせいだよ」


「かも知れないね」


=====


葬儀もなにもかも一通り終わって、通学再会初日。杏子ちゃんが迎えに来てくれた。


「今日もいい天気ね」


「そうね」


「今年の夏は暑くなるのかな」


「かもね」


「……。」


仕方ない。お母さんが亡くなったのだ。いきなり元気を出せる方がおかしい。でもコレは聞いておかなくちゃダメな気がした。


「ねえ楓、例のアレ、どうなの?」


「杏子ちゃん、助けて。お願い……」


「なにがあったの?」


立ち止まって楓の話を聞く。あれから夢は何度か見ている。メモは取ってないから記憶のみで話してる。葬儀場を外から見つめる景色を見た。私の家を見つめる景色を見た。私の後ろ姿を見てる景色を見た。


「楓の後ろ姿?それって……」


後ろ姿を見られたということは、完全に相手は楓を認識しているということだ。思わず後ろを見る。誰もいない。


「ねぇ、杏子ちゃん、私もお母さんと同じように殺されちゃうのかな……」


「楓、お母さん、殺された訳じゃないでしょ?警察も事故だって言ってたんでしょ?」


「でも……あんな変なもの見なければ。私が!」


今の楓にはなにを言っても自分を責めるだけに思えた。余計なことは言わずに、見守るだけにしよう。

お昼は楓と一緒に食べた。楓のご飯は購買のパン。いつものお弁当ではない。私も明日からはお弁当じゃなくて購買のパンにしようかな。


「楓、今日はバイトに行くの?」


「うん。お父さんが帰ってくるまで家で一人でいる方が怖いから」


「そう」


バイト先では良太がどう声をかけたらよいか、という感じでこちらの様子を伺っている。なんか悪い気がして私から話しかけた。


「良太。あのね?この前、私の後ろ姿を見ているのを見たの。もう怖くて……」


「それって……まさか……」


楓は怯えきっていた。仕方がない。自分の後ろ姿を見たってことは、真後ろに居たのだ。目線の正体が。


「なぁ、楓。学校でも俺の他に誰か男子に話して気にして貰った方が良いんじゃないか?杏子ちゃんだけじゃ万が一の時に危ないだろ」


確かにそうかも知れない。でも、その人を巻き込むことになるかも知れない。


「うん。杏子ちゃんにも相談してみる」


その日から翌日のお昼休みまでは、なにも見なかった。お昼休みに杏子ちゃんに、昨日バイト先で良太に言われたことを相談した。


「うーん……。誰が良いかなぁ」


「あのね、杏子ちゃん。私は弘前くんが良いと思うの」


楓からのご指名があるとは思わなかった。でもなんだ弘前くんなんだろ?


「なんで弘前くんなの?」


「なんとなく。クラスではよく話す方だし」


「分かった。呼んでくるね」


杏子ちゃんが教室の反対側で男の子グループでお昼を食べていた弘前くんに話しかけている。なんか、グループの人たちに冷やかされているような気がする。


「なんだ?伊勢原」


「弘前くん、ちょっと言いにくいというか、聞いても信じられないというか。他の人には聞かれたくない話なんだけど……」


弘前くんのグループがこちらの会話にそば耳を立てている。


「弘前くん、ちょっと教室出れる?」


「あー、ちょっと待ってくれ。まだ昼飯食い終わってないんだ」


「それじゃ、放課後にちょっといい?


「分かった。俺、自転車だから駐輪場で待ち合わせで良いか?」


「うん」


弘前くんは自分の席に戻って中断した昼食を再開した。


「ねぇ、楓。弘前くん、協力してくれると思う?」


「分からない。でも私は協力してくれると思ってる」


楓の自信がなんだか分からないけど、楓が安心するなら私はそれでいいと思った。


「伊勢原、待ったか?」


「ううん。ちょっとだけ」


「長谷川は?」


「部活に行った」


「そうか。で、話ってなんだ?歩きながらでいいか?」


本当は杏子ちゃんから話してもらう予定だったんだけど、例のOG鬼コーチが来るらしくて部活を休めなくなってしまったので、自分から話すことになった。


「うーん……怪奇現象にしては現実味が高すぎるな。最初に見たもの、覚えてるか?というより時期」


「ええと……いつだっけ……最初は景色が見えるとかそういうのは無かったの。なんか気のせいかな、くらいで。だから正確な時期は覚えてないんだけど、景色が見えるって意識したのは今年に入ってから」


「一番最近見たのは?」


「昨日の夕方。私の後ろ姿を見たの。だから怖くて……」


「それはヤバいな。本当だとしたら真後ろに居たことになるじゃないか」


弘前くん、ちゃんと話を聞いてくれてる。聞いてくれると思った。良かった。

真後ろからの視線を見てしまった楓。迫るなにかから逃げることはできるのか


次回「悪夢再び」

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