表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

騎士様の回想(番外

 俺はガルド。今は騎士をやっている。元々は孤児だった。毎日ゴミをあさり、それで野菜くずなどを見つけ食べていた。いつからそのような生活をしていたのだろうか。



 確か。俺は親に捨てられて。それから俺みたいな孤児たちと出会って。先輩方から生き方を学んだんだ。懐かしいなぁ。確か先輩たちは「何があっても犯罪に手を付けるな」そんなことを言っていた。

 きちんとした性格でさ。俺らは彼を慕っていた。


 そんなある日。先輩たちが万引きしていた。・・・偶然通りかかった果樹店だ。


 「待てえええ!!クソガキどもがぁあああ!!」


 裸足で追いかけていた。恐らくこの店の店主だろう。それは必死に追いかけていたさ。いつも正義感あふれる先輩が何でそんなことをしたのか。聞きたかった。なので夜、聞いてみた。


 「欲望のおもむくままにやりました。後悔はしていません」


 ・・・まあ。いつもゴミみたいなのしか食べてないし。仕方がないかと思っていた。次の日から気になって先輩方に隠れて付いていった。そしたら。


 「「「「まてぇぇぇ!クソガキがぁぁぁ!!!」」」」


 何という事だろうか。あんなに俺らに犯罪はするな。俺らは人間だ。動物とは違うのだ。心を強く持て!!とかどや顔で言っていた先輩たちが、ありとあらゆる人々に追いかけられているではありませんか。もちろん先輩方の手には盗んだであろう数々の品物があった。

 夜。問いただしてみた。


 「いや、だってよ。美味しそうなんだもん。しょうがないだろ?正直黙って大人しくしているお前らって馬鹿じゃないのか?・・・待って。首根っこ掴まないで。俺は猫じゃないんだからさ。ちょ!?お、おい。冗談だろ?そんな怖い顔するなって。な?笑えよ・・・っておい!マジで止めろ!!俺をどこに連れて行く気だ!!!」


 俺はこの動物さんを領主の元に連れて行った。


 「・・・ぼく。どうしたの?」

 「泥棒を捕まえてきました」

 「はーなーせッ!!」


 門番は俺らの姿を見るなり困った顔をした。


 「え~と。とりあえず中に入ろうか」


 そして事情を説明した。コイツがいつも盗んでばかりな生活をしているのでここに持ってきた。そんなことを言った。

 そして領主がきた。この街ならだれもが知っているグラード様だ。グラード様は何故犯罪を犯したのか聞いてきた。なので俺らが孤児だったことからすべて話した。


 「なるほどなぁ。孤児か。なら、私のところに来るか。私のところで働いてみないか?」


 その時のグラード様は輝いて見えた。嬉しかった。いつもは飢え死にしないように生きていたのだ。もう苦しい生活をしなくてもいい。他人から優しさを貰えるなんて生まれて初めての経験だった。


 「そうだなぁ。使用人か兵くらいしかなれぬが。どうする?」


 俺はお願いします!出来れば兵がいいです!とそんなことを言った。ちなみに先輩も図渦しくお願いしていたので足を蹴っといた。お前は盗んできた人たちに謝って来てからお世話になれよ。



 懐かしいなぁ。これが俺と領主が出会った時の記憶だ。俺はあれから努力して兵士から騎士まで昇れた。騎士はこの領地に3人しか居ない。騎士になるには特殊な試験があるのだが俺は合格することができた。嬉しかったなぁ。俺を助けてくれたグラード様を一生守ることが俺の生きる意味なのだ。


 ある日、領主の元に魔女が届いた。俺にもその魔女を見せてもらった。魔女と言えば赤い目に白い髪。これが常識だ。見させてもらった姿は想像通りだった。もっとシワがれた姿なのかなと思っていたがそれは違った。少女の姿だ。


 でも俺はその瞳、髪を見て俺は怯えた。魔女と言えば残虐非道、そしていくつもの街を壊滅させてきた。そんなおとぎ話を聞いたことがあるからだ。いくら彼女が少女の姿をしているからって関係ないのだろう。魔女は魔女だ。

 でもこの魔女には魔法が使えない首輪を付けてあるらしい。それに手枷も付いているし安心だと言われた。俺はほっとした。でも万が一があれば領主を守るために俺が殺すことになるのだろう。


 そして地下に魔女は閉じ込められた。殺すなら協会に明け渡してから処分するらしい。なのでその間はむやみに手出しは出来ない。グラード様も面倒な物を送り付けられたものだ。


 魔女が我が守るべき屋敷に来てから数日後。魔王が復活したとの情報が手に入った。魔王は昔に勇者に討伐されたと聞いたことがある。・・・それが復活したとの事。

 グラード様はいい人だ。この領地を守るためにどうすればいいのか。もしも魔王や、その配下が攻めてきた時にどうしたらいいのか考えていた。


 グラード様は言った。魔女を利用しようと。


 耳を疑った。正気なのか?化け物を使えるのか?もし失敗して街を吹き飛ばされたらどうするつもりなのかと。グラード様に問いかけた。しかも魔王のいる場所はここからかなり離れた土地だ。特に警戒しなくてもいいのでは?


 「でもな・・・。いやな予感がするのだ」


 グラード様はそう言って、しばらく考えた。そして、「何でもない。この話は忘れてくれ」そう言った。


 その数日後だ。その数日後、大量の魔物が街に攻め入ろうとしていると見張りから通知が来た。

 この街の冒険者、兵士、皆外に出て魔物の撃退をした。運よく死者は出なかったがけが人は沢山でた。腕や足が無くなった冒険者や兵が出た。・・・何と言ったらいいのだろうか。死ななくてよかった言ったらいいのか。


 俺は皆を守り切れなかった罪悪感でいっぱいになりながらグラード様に被害の方を報告した。

 死者は出ていないという俺の報告を聞いて安心してくれた。でも傷を負って五体満足でいられなかった人もいたと報告をしたら悲しそうな表情を見せた。

 この人は本当に民を思ういい人なんだと思った。


 「・・・魔女を利用しよう」


 グラード様はそう仰った。しばらく悩んだ。今回は死人が出なかった。でも次襲撃があったら。最悪街が滅ぶかもしれない。


 「・・・分かりました」


 俺はあの魔女を利用することに賛成した。

 

 俺は洗脳する薬を手に入れた。そして注射器も求めた。これらは凄く高価なものだった。

 そしてあの魔女を幽閉しているあの部屋へと踏み込む。ここで俺が失敗したら何も残らない。そう思って覚悟を決めた。


 「嫌!なにするの!?私が一体何したって言うの!?」


 俺は嫌がる魔女の腕を奪い、血管に薬を通す。


 

 「あ・・・!あぁ・・・」


 薬が効いてきたのだろうか。後は洗脳するだけだ。


 「聞こえるな?」

 「は・・・い・・・」

 「お前の主はグラード様だ」

 「わた・・・しの・・あるじは・・・ぐらーどさま・・・?」

 「そうだ。そして主の命令は絶対だ」


 —――この日から俺は彼女の洗脳を始めた。


 それから数日たった後にグラード様の許可を経て魔女の洗脳のテストの為に外に出た。


 「お前の主は?」

 「・・・グラード様」


 俺は最後にそう確認してからこの彼女の魔法を封じ込める首輪を外す。


 「よし。あの丘に魔法を撃ってみろ」


 俺は内心ドキドキしながらこの魔女を見た。逸話では街をも滅ぼす魔力。もっと街から離れた所に移動した方が良かったのか。そんな心配をしていた。


 ———しかし。


 「・・・魔法ってなに?」


 俺は頭をガツンっと殴れた。いや、こうなることは分かっていた。・・・と言えばおかしいが・・・。

 ・・・俺は洗脳する時。時々思ったのだ。彼女は。この少女は本当に魔女なのか?と。

 

 でも一度法で禁止されている薬を使ってしまった。後にはもう引けないという気持ちで。領地を。領主を助けるという気持ちで行動した。

 日がたつに連れ、彼女はただ目が赤いだけで。ただ、髪が白いだけで———。それだけで魔女と周りから言われ虐げられていたのではないのか。そんな考えが頭に過ることがあった。


 でも。でも、俺は無理やり、思考を放棄して、コイツは魔女だ。そう自分に言い聞かせながら薬を打った。洗脳してきた。

 だけど・・・。現実は違った。いや、現実は正しかったのだ。


 彼女は魔女ではなくただの少女だ。


 俺はそれに気づいた時、現実を見たときに己の愚かさを恨んだ。今、キョトンとしているこの少女にどんな言葉をかけたらいいのか。分からない。


 俺は少女を連れて屋敷に戻った。グラード様に結果を伝えなければいけない。グラード様は民に、人に優しい方だ。あれは魔女ではなくただの少女だ。ただ見た目が魔女に似ているだけの。そう伝えようとした。

 でもそれは信用してくれるのか?俺が失敗したからこんな言い訳をしているのではないのかと。疑われるのでは?そうしたら間違いなくあの少女は殺される。



 「グラード様。あの魔女の育成は順調であります」


 ・・・俺は初めて。・・・俺の命を助けてもらった恩師に嘘をついた。


 それから俺は洗脳の薬を彼女に打ち込むのをやめた。もうわかっている。彼女はただの少女なんだ。・・・俺はグラード様みたいな皆に優しく、皆を救ってみせる。そう・・・そう思いながら生きてきたのに。その為に騎士になったのに。

 

 目の前の少女の人生を俺が壊したのだ。


 それから俺は時々、この少女を外に連れ出して魔法の練習をさせた。もし彼女がここを出れるようになった時、一人で食べていけるように。多分これは彼女に対する罪滅ぼしだったんだと思う。

 彼女は自我を持たずに俺の命令に従って練習をしてくれる。・・・道具のようだ。俺が、俺がこのようにしてしまったのだ。


 人生で初めて涙を流した。

 ただ、ひたすら申し訳なかったのだ。


 それから一年ほどが経った。彼女の洗脳は少しマシになった。少しずつ。少しずつ、自我が戻ってきた。それでも傍から見れば自我がない人なんだろうけど。

 彼女は元々魔力が高いみたいでおとぎ話の魔女ほどとは言わないがそれなりに強くなっていった。これなら冒険者としてもだいぶ上の方に行けるだろう。

 そんな時、彼女はぽつりと言った。


 「・・・勇者がいる」


 それから彼女は走り出した。俺は一人で勝手に行動する彼女の姿を見たことなかった。俺が薬を使ったせいで一人で行動することが無かったのだ。嬉しかった。なので少し放っておくことにした。この辺は草原で安全だから下手なことはないだろう。


 ———ドォォォン


 彼女が恐らく魔法を撃ったのだろう。何故だ?何もないはずなのに?俺は不安になって音がした方向に向かった。そこには焼き焦げた大地があった。

 

 「何があったのだ?」

 「・・・まものがいた」


 こんな草原に魔物が出るとはおかしな話だ。それにさっき彼女は勇者が何とか言っていた。まぁ気にしなくていいか。


 その日帰るとグラード様が家の領地に勇者が現れたと仰っていた。確かに魔王が現れてから結構な時間がたった。勇者が見つかっても不思議ではない。


 「明日探してまいれ」


 俺はその命令に従って探すことにした。とりあえず少女は連れていく。見つかるまで長いことかかりそうなのであの部屋に閉じ込めたくはない。

 長期戦になりそうなので馬車とお金を持っていく。とりあえずギルドの方で確認してみる。


 「勇者はいるか!?」


 そう言って俺は辺りを見渡す。

 するとみんな一斉にある一人の男へと視線を向けた。


 「勇者って言えば・・・」

 「あいつの事か?」

 「あぁ。あのホモの事か」


 ・・・あの男同性愛なのか?・・・ま、まあいい。俺には関係ないことだ。


 俺は皆が視線を向ける男に近づいた。その男は初めて見る服を着ていた。真っ黒な服でとても高そうな生地で作られている。でも武器を持っていないし、少し不安だった。


 「貴方が勇者様で間違いないでしょうか」


 失礼だが彼は強そうには見えない。


 「い、一応そうですが」


 「失礼ですがギルドカードを拝見しても?」


 俺は出されたギルドカードを見る。職業は・・・勇者になっている。ギルドカードは絶対に正しい。人の血液は情報の塊らしい。そういう仕組みは俺は知らんがこのカードが間違えた情報を書くのは見たこともないし聞いたこともない。そして能力値は・・・?おかしい。一般人よりは少し強いくらいだ。まぁ経験とか技術もあるからカード通りの強さと決めつけるのは良くないのだが・・・。まあいい。彼は勇者なのだ。

 俺の仕事は勇者を屋敷に連れて戻ることだ。ならその仕事をこなすだけ。


 「勇者様、ギルドカードの拝見ありがとうございました。我が主の屋敷まで同行をお願いできますか」


 俺は受け取ったギルドカードを勇者に返しお願いをした。そしたら彼は不安そうな顔をした。そして周りにいる人たちは恐らく仲間なんだろう。挨拶をしてから同行を許可してくれた。


 そして勇者を場所に乗せるときに気づいた。


 彼女を馬車に乗せたままだった。一応外に出るときは大きな帽子を付けてもらっている。もちろん目と髪を見られないように。・・・大丈夫だろうか。心配だ。



――――――――――――――――――――――



 領主に着いた。馬車を開けて外に出てもらう。すると勇者の顔は難しい表情をしていた。それは何か悲しそうな。中で何かあったのだろうか。勇者がチラッと少女を見る。俺もそれに合わせて彼女を見た。服が濡れている。恐らく泣いていたのだろう。

 俺は彼女が泣いてくれた、感情を持ってくれた嬉しさがあった。


 俺はいったん馬車に残して領主のところに案内をする。


 「グラード様。勇者様をお連れしました」

 「おぉ!ご苦労」


 そう言ってグラード様は俺を労ってくれる。

 

 「うちの領土で勇者が現れたときは耳を疑ったが事実なのか・・・。おい、ガルド。勇者って言うのは本当なんだろうな?」

 「えぇ。私はこの目で彼のギルドカードを確認しました。彼は正真正銘の勇者で御座います」

 「・・・そうか。そうか」


 この勇者がこの身なりだからだろう。一瞬疑いの目を向けたが俺のいう事を信頼してくれた。


  「勇者よ。知っているかと思うが一応自己紹介を。私はこの街の領主!グラード・グレンだ!これからよろしく頼む!」


 そうグラード様が挨拶をする。領主様だ。多分勇者も知っているだろう。そう思って勇者の顔を覗いたら、コイツ誰?みたいな表情をしていた。

 ・・・もしかして彼はこの街の住人ではないのだろうか。


  「これであの忌まわしき魔女を処分できる・・・。やっと私にも運が付いてきたか。・・・勇者よ!ここまで疲れただろう。この屋敷でゆっくりとするが良い」


 グラード様は勇者をこの屋敷で過ごさせるらしい。・・・いや待て!?今なんて言った!?ま、魔女を処分するといったか!?

 ・・・魔女が、少女が今まで生きていた。いや、生かされていた理由は魔物の襲撃の時に利用できるからで・・・。なら魔王に打ち勝てると噂の勇者がこの街に来たら?


 そうだ。魔女なんか用なしだ。むしろ危険だと言われている魔女を生かす理由なぞない。


 しまった。俺は何も考えていなかった。うかつだった。俺はどうしたらいいのか分からないまま馬車に戻って彼女をあの部屋に閉じ込める。


 「すまない・・・」


 俺はそう言って彼女の手首に鎖を首に魔法を使えなくする首輪をかける。


 ———お前はもうすぐ死ぬかもしれないんだ。


 そんな俺の気持ちが伝わったのか、彼女の頬にツーっと雫がたれた。それは静かに流れていった。

 人形のようだった。


 俺はどうすることもできないまま部屋を出た。


 そして夜になった。

 俺は少女を助けてもらおうとグラード様に話を持ち掛けた。


 「グラード様。魔女を本当に殺すのですか」

 「そうだ。この間協会の奴らが来た。そして赤い瞳で白い髪なら確実に魔女だから処分してもいいと。そうお言葉を頂いた。・・・そしてガルドよ。」


 ガルドとはもちろん俺の名前だ。グラード様がこの上なく真剣な顔で俺を見つめている。


 「お前、魔女の事で悩んでいるだろう?魔女に徐々に傷つけられているだろう?」


 違う。俺が彼女を傷つけたのだ。俺はそれを否定しようとするが・・・。言葉が出ない。喉まで出かかっているのに。


 「———勇者が我が領主の物になったのだ。彼女はもう必要あるまい」


 俺の苦しそうな表情を見て優しく、グラード様が仰った。


 「そうですが処刑するのですか?」


 殺さなくても。殺さなくてもせめて・・・生かせてあげてほしい。でもそれを上手くグラード様に説明できない。・・・苦しい。


  「当り前だ。我が領の戦力は小さい。だから仕方がなくあの忌々しい魔女を使っておったのだ。だが今は違う。我々は勇者を手に入れたのだ。奴などもう必要ない。むしろこの領地を汚す存在なのだ。これ以上は利用できん。」


 違う。魔女なんかじゃないのに。


 「でも色々洗脳して安全なようにされていたではありませんか。それにあの少女が放つ魔法は強大です。勇者を見つけたのも彼女です。それを手放すのですか」


 嘘だ。必死に俺は彼女の功績を作ろうとしている。


 「・・・何度も言わせるな。私に逆らうというのか」


 何か。何かいい手はないのか。グラード様とあの少女が助かるいい手が。


 「・・・申し訳ございません」


 ・・・何もなかった。俺は・・・どうしたらいいのだろう。


 「もうよい下がれ。明日の夜までには始末しておけ。奴は魔法を使うことができぬから容易いであろう。」


 ・・・あの首輪の事か。


 「分かりました・・・。失礼します」


 笑けてくる。人を守るのに騎士になったのに。

 一人の生活を、精神を壊した後に殺す。

 ・・・何のために騎士になったのだ俺は。


 俺はもう寝ようとした。しかしなかなか寝付けれなかった。


 その時。


 『全兵士に告ぐ!侵入者だ!相手は一人!だが警戒しろ!奴は勇者だ!・・・奴の狙いは魔女だ』


 これは通信用魔道具から寄せられた声だ。

 ・・・侵入者?勇者が攻めてきた?しかも狙いは魔女?


 俺は迷ったがグラード様の安全を確保するために寝室に向かった。


 「グラード様!ご無事ですか!?」

 「ガルドか!・・・報告は聞いたな!?私の事は良い!今すぐ魔女を殺しに行け!勇者は恐らく魔女を解放するのが目的だ!!」


 俺は頭を下げて地下へと降りた。


 そしてドアを開け、少女の元へ歩いていく。彼女は寝ていた。


 「・・・」


 俺は無言で剣を抜いた。その音で起きたのだろう。少女が目を開ける。


 「・・・ヒッ!」


 彼女は剣を見て怯えた。俺はそれを見て・・・。


 ・・・剣を下した。


 ———ガキンッ!!


 「・・・え?」


 俺はそのまま剣を収める。


 そして無言でこの部屋を出た。




 ――――――――――――――――――――――





 「来たか・・・」


 目の前にいるのは紛れもない朝に俺がこの屋敷に連れてきた勇者だった。あの低い能力値で我が兵をすべて葬ってきたのだろう。・・・恐ろしいやつだ。


 彼の顔を見る。目が凄く汚れているが・・・。本当に彼女を助けに来たのだろうか?


 「なぁ。あの少女を助けに来たんだろう?」

 「・・・そうだが」


 やはりすごく濁った目をしているがその言葉に嘘偽りは感じられなかった。


 「俺を殺してくれねーか?」


 これは俺の心からの頼みだ。領主様の命令を裏切って、嘘をついて。一人の少女を壊した罪滅ぼしがしたかった。いや、単純に逃げたかったのかもしれない。

 だからさ。お願いだ。最後くらいは誰か。俺の願いを叶えてくれないか。


 「俺はあの領主の命令で彼女を殺せと言われたんだがなぁ・・・。俺は殺したくないんだ。それに領主の命令を破る訳にもいかない。なら俺が彼女を処分しようとしたらお前さんが来て俺は殺される。・・・そしてお前は彼女を助けてやってくれ。あぁ。それと安心してくれ。彼女は目が赤色で髪が白色の魔力が高いだけの少女だ。決して魔女ではない。どうだ?お互いwin—winの関係だろ?」


 彼は少女を助けに来たのだ。きっとこの条件を飲んでくれるさ。

 死なら覚悟できている。

 俺は静かに目つむった。


 だがしかし。


 「・・・断る」


 俺は目を見開いた。こ、こいつ助けに来たんじゃなかったのかよ!?


 俺は彼に壁に叩きつけられた。


 「ぐっ・・・!な、何故なんだ!?何がいけないのだ!?お前はあいつを助けに来たんだろ!?」


 彼は黙ったままだった。何も答えてくれない。ただ、ただ俺のことを悲しそうな顔で見つめながら首を絞めてくる。

 このまま誰も守れないまま死ぬのか。・・・我ながら笑える人生だ。ゴミばっか食ってた孤児らしい酷い死に方かもな。


 俺はそのまま意識が途切れる。



 「・・・唯一彼女の味方であったあなたを殺すなんて出来ませんよ」


 最後にこんなセリフを聞いて。



 俺が起きたのは朝だった。俺は生きている。・・・生かされた?

 とりあえず少女を閉じ込めていた部屋を見に行く。


 そこには誰も居なかった。


 「はは・・・」


 多分彼が助けてくれたのだろう。


 そうして屋敷に戻っていく。勇者に襲われて、死者とか居たら丁寧に葬ってあげたい。一応この件は俺のせいでもあるのだ。

 そうして戻ってみたら俺は驚いた。誰も。誰も死んでなどいなかった。彼は殺さずに、我が兵全てを無力化させたのだ。


 「どんな化け物だよ・・・」


 俺は苦笑いで、最後にありがとうと。


 彼はまさしく勇者だ。


 俺は彼みたいに強くなろうと。決意しながら今日も1日働くのであった。



 







少し面白いな。少しクスっと来たのならば。ブクマ、評価の方お願いします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ