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ヒロインさん

 確かその少女が処刑されるのは明日の夜までだったはずだ。という事は別に今殺されている可能性があるかもしれない。


 「急がなきゃ」


 俺は全力疾走で領主の屋敷に向かう。辺りの風景は次々と変わっていく。酒場が見え、宿が見え民家が見え・・・。何だこれ。物凄く速いぞ。そうか。これが信念を貫く者の力なのか!!


 *注意。性格が歪みし者に与えられた力です。


 「フフフ・・・!どんどん力が湧いてくる感じがする・・・!行ける!これなら彼女を助けることができる!!!」


 俺は笑いながら領主の家まで走っていった。


 特に何の問題もなく領主のとこまで着いた。多分今までなら息切れを起こしていただろうけどそんなことはなくむしろ呼吸は整っていた。


 「———行こうか」


 過ぎた力は人格までも変えてしまうのであろうか。俺はやけに彼女を助けれるという自信があった。もう何も怖くはない。全力を尽くすだけだ。


 「こんな夜更けに何用だ?」


 門番が俺の姿を見るなり声をかけてきた。


 「・・・俺は勇者だ。一人の少女を助けに来た」

 「な!?・・・勇者様!?・・・少女ってあの魔女の事ですか?何であんなのを助けに?領主があれは魔物だと言っておりましたよ・・・?」


 俺が勇者と名乗った事に焦ったのか口調を変えてきた。俺がもし偽物だとしたらどうするんだろうか。さてはコイツ無能か?それと彼女は魔物なんかではない。ただ洗脳されていいように使われているだけの、ただの少女なんだ。俺だって詳しい事は何も知らないがこれだけは断言できる。

 だから静止を求める門番を無視して足を進める。


 「待ってください・・・!仕方ない実力行使だ。確かおめぇ弱いんだろ!?俺も馬鹿だなぁ何でこいつに敬語使ってたんだろ」


 そう言って槍で殴ってこようとする。俺はそのままそれをかわさずに足を上げた。そしてそれを思いっきり地面に叩きつけた。


 ガコォ!


 領主ご自慢の庭の煉瓦は俺を中心にクモの巣上にひび割れる。そして兵士は吹っ飛んだ。


 「ガハァッ!・・・な、何が起こった・・・。だ、誰だよあいつ弱いって言ったやつ・・・」

 「・・・これが正義を。信念を強く持つものの力だ」


  *注意。性格が歪みし者に与えられた力です。


 「く、くそ・・・!」


 そう言って彼は鎧の中から小さな箱を取り出した。


 「全兵士に告ぐ!侵入者だ!相手は一人!だが警戒しろ!奴は勇者だ!・・・奴の狙いは魔女だ!」


 なるほど。この世界にはトランシーバー見たいなのがあるのか。魔法の力なのだろうか。


 「へへ・・・。大人しく捕まっておくんだな・・・」


 そう言って彼は倒れた。・・・全く。めんどくさいことをしてくれる。


 「いたぞぉ!勇者だ!」


 早速援軍が来た。てか来るの早くね?凄いなこんな夜中に準備してすぐ来るなんて。


 「領主様からのお言葉だ。大人しく捕まっておけば命は助けてやると。」

 「あ、そ」


 あいにく俺は捕まる訳には行かない。あの少女を助けるという使命がるのだ。


 「な!?ま、待て!!」


 待てと言われて待つほど俺は頭は悪くない。めんどくさいので先を優先させてもらう。

 俺は庭を通り抜けて屋敷に入る。


 「ここは通さねーぞ!」

 「大人しくしやがれ!」


 屋敷に入ったら二人の兵に行く先を止められる。昼間は俺は彼らにびくびくしていたのに。今はそんなことはない。むしろ小物に見える。


 「—――邪魔だ」


 腕を横に一振りする。それだけで大の大人が吹っ飛んでゆく。


 「「グハァッ!!」」


 彼らは壁にぶつけられる。その威力は壁にひびが入るほどだ。


 「ぐ・・・、情報が違うぞ・・・!奴は弱いんじゃなかったのか・・・!?」


 そんなことを言う彼を無視して先に進ませてもらう。

 それよりもこの屋敷は迷路みたいになっていてめんどくさい。あの少女の部屋まで行くにはいったん3階まで上がる。そして、またさっきとは違う階段で地下まで下りる。まぁ言わずとも結構な距離を走らねばならない。

 

 「———止まれ」


 俺は廊下を走っていると前の方に明らかに今までの兵とは違う雰囲気を持つものがいた。


 「私は過去にゴールド級を持つ冒険者・・・。止まらねければその首を断つ」

 「知らん。どけ」


 違う雰囲気を持っていても今の俺からしたら奴も雑魚。手加減したドロップキックを食らわせる。


 「ゴハァッ!」


 全力でやったら彼の胴体に大きな風穴を開けちゃうので手加減する。そして吹き飛ばすくらいの威力でキックする。

 ちなみにゴールド級って何だったんだろう。まあいっか。


 俺はそのまま俺は階段を見つけ、3階まで一気に上がろうとするが。


 「「「「止まれぇ!!」」」」


 階段の道の狭さを利用してか、沢山の兵がいた。面倒な。


 「くらえ!」


 そう言って剣で俺を突こうとしてくるのでその腕を引っ張って階段の下に落とす。彼はそのままゴロゴロと転がっていった。


 「次」

 「く、くそ!」


 さっきのをみて学習したのだろうか。腕を掴まれない間合いを管理しながら剣を振るってくる。しかしそんなことは今の俺にとって無意味だ。

 俺はその振るわれた剣を二本の指で掴む。


 「は、離せよ!」


 彼は俺が持った剣が動かせないのか、押したり引っ張ったりしている。


 「側面がら空きだぜぇ!!」


 そんなことをしているうちに兵が俺の脇腹めがけて剣を振るう。

 俺は摘んでいる剣をそのまま横にずらす。


 「「な!?」」


 そのまま彼らはぶつかってバランスを崩し、下へと落ちていった。


 「めんどくさい。まとめてかかって来い」

 

 俺は急いでいるのだ。




――――――――――――――――――――――




 その後も来る敵来る敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げとしていたらやっと地下へと続く道がまでこれた。やっとだ。やっと彼女を助けれる。

 助けはいらないと言われたらどうしようか。その時は・・・。いや、考えるのはやめよう。後には戻れない。

 俺は洞窟を進む。さっき見た様に真っ暗なこの道を。ジャリッ、ジャリッと歩くたびに土の音が鳴る。


 「来たか・・・」


 その捕らわれの部屋の前の扉、あの騎士がいた。俺をこの領主まで連れてくれた騎士だった。彼がここにいるという事。それはもうあの少女を殺し終えたのか?・・・手遅れだったのか?


 「なぁ。あの少女を助けに来たんだろう?」

 「・・・そうだが」


 すると覚悟を決めた様に彼は言う。


 「俺を殺してくれねーか?」


 何を言っているのだ彼は。


 「俺はあの領主の命令で彼女を殺せと言われたんだがなぁ・・・。俺は殺したくないんだ。それに領主の命令を破る訳にもいかない。なら俺が彼女を処分しようとしたらお前さんが来て俺は殺される。・・・そしてお前は彼女を助けてやってくれ。あぁ。それと安心してくれ。彼女は目が赤色で髪が白色の魔力が高いだけの少女だ。決して魔女ではない。どうだ?お互いwin—winの関係だろ?」


 「・・・断る」


 そして俺は彼の首を持って壁に叩きつける。


 「ぐっ・・・!な、何故なんだ!?何がいけないのだ!?お前はあいつを助けに来たんだろ!?」


 俺は無言で彼の首を絞めた。そして彼は力なく倒れる。殺しはしていない。少し酸欠で気を失っているだけだ。


 「・・・唯一彼女の味方であったあなたを殺すなんて出来ませんよ。」


 俺を殺して彼女を助けてくれなんて。そんなことを出来ない。だから断った。無力化だけさせてもらった。彼は恐らく彼女がこうして捕らわれているのに罪悪感を感じているのだろう。ただの少女だって分かっていたから。それに領主からの命令もあって深く悩んだのだろう。そして考えた。

 俺がここで死ねば罪滅ぼしになるのではないかと。


 「頭固いなぁこの人は」


 でも立派だった。彼は自分の信念のために己の主である領主に反抗したのだ。・・・そんな奴の事を殺せない。


 「さて行くか」


 俺は木材を外し、グルグル巻きの鎖を外し、扉を開ける。


 「・・・」


 部屋の隅っこに彼女は居た。俺が来たときは手を鎖で繋がれてあったのに今は外されている。恐れくあの人が外したんだろう。・・・でも金属の首輪は付けられたままだ。外せなかったのだろうか。

 俺は彼女に近寄る。


 「ねぇ」


 俺は喋りかける。そしたら彼女は腕を出した。その腕は小さな針で刺された傷がポツポツとあった。


 「一緒に行こう」


 俺はその腕を持って引っ張った。しかし彼女は俺の手を振り払った。


 「・・・それは命令?」


 その言葉に息が詰まる。なんて答えたらいいのか。


 「君が好きなように捉えていいよ」


 すると案の定困ったような顔をする。恐らく命令されたこと以外の事をするな。そして命令されたこと以外の事をするな。そう洗脳されてきたのだろう。


 「ここに居たい?ここで一生過ごしたい?」


 彼女には悪いけど少し意地悪な質問をさせてもらう。


 「・・・は、はい。い、居たい・・・です」


 彼女はビクビクしながら、俺の手足をきょろきょろ見ながら言った。・・・少し困ったな。その返しが来るとは。


 「それが本当に君の本心なの?・・・知ってる?このままじゃ殺されちゃうよ?」


 もう少し攻めさせてもらう。申し訳ないが時間がないのだ。


 「・・・い、嫌!わ・・・私死にたくはない!ご、ごめんなさい・・・!いう事聞くから・・・!」


 耳を押さえて体を震わせる少女の姿。恐らく自分が殺されるのは薄々気が付いていたんだろう。怯え方が尋常ではない。でもそれは今日で最後にさせる。


 「もう一度きくね。それでもここに居たい?」


 震える彼女を抱きしめた。なるべく心臓の鼓動を彼女に聞かせるように。優しく、穏やかに。


 「グスッ!・・・嫌!もうこんな生活なんて送りたくない!!だ、誰か助けてよぉ・・・!!」


 ようやく本音が聞けた。・・・無理やりここから連れ出してもよかったのだがそれだと俺に不安を抱えたままになるだろう。そうさせない為に。彼女の不安を取り除くために。


 「安心して。俺は・・・勇者だ。君を助けるために来た。」


 抱きしめながら。背中を優しくさすりながらそう囁いた。


 「うぅ・・・!ひぐっ!えぐっ!」


 俺は静かに泣きじゃくる彼女を抱きしめ続けた。





 


 



 

少し面白いな。少しクスっと来たのならば。ブクマ、評価の方してくれませんか?


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