無人島生活十五日目 ジャムに取り掛かる
用意するのは瓶と、煮るための器具。
すぐ食べてしまうが、保存もしたいから蓋は作っておかないとな。
あとはえーと、ジャムを塗る匙か!
俺がコントローラーを使い、次々に道具を作っていると、後ろでミュンがふんふんと鼻息を荒くしている。
今、果実を潰す仕事を任せているのだ。
「マ!!」
ミュンが気合とともに、果実をすりこぎでぶちぶちーっと潰す。
「マママー!!」
潰れる潰れる。
本当なら皮むきするのだけれど、コントローラーで皮をふにゃふにゃに柔らかくしたのだ。
なんでもできる、コントローラー。
「進み具合はどうだ、ミュン?」
「ンショ、ンショッ! アマチャ、ミュンネ、レ、ナノ!!」
多分、一生懸命やってるので話しかけないで、ということではないか。
順調に進んではいるのかもしれない。
俺は俺で、必要な道具をあらかた作り出した。
ずらり並べて、これからやるジャム作成の手順を指差し確認する。
「ミュンが潰した果物を用意するだろ。そっちで干してる砂糖と混ぜるだろ。それをぐつぐつ煮込むだろ。それでアク取りをしながらぐつぐつ煮る、と。瓶詰めしたこいつを海の水で冷やして完成だな」
「マー!!」
ミュンが一際大きな声を出すと、こてんと後ろに倒れた。
やりきったようだ。
ミュンの前には、潰された果実がどっさりと積み上がっている。
念のため、すり鉢を大きくしておいて良かった。
「ミュン、そこでちょっと休んでるんだ。はい、果物」
「チャ!」
思ったより元気に起き上がり、ミュンは果物を受け取った。
ジャムにするはずだった、マンゴーもどきだ。
あーん、と口を大きく開けて、もぐもぐ食べ始める。
あー、顔と洋服がべとべとだ。
皮を柔らかくしたから、果汁が飛んじゃうんだな。
ま、後で洗濯すればいいや。
「よーし、行くぞ!」
ここからは、コントローラは使えない。
これ、料理みたいな細かいことができないんだよね。
瓶に果物を詰め込み、ざらざらーっと砂糖を入れる。
ぐるぐるかき回し、これでよし、と。
瓶を火にかけた。
このまま少し待つ。
瓶は、あらかじめ熱に強いように作ってあるから、割れる心配はない。
「アマチャ、レー?」
横にミュンがやって来た。
じーっと瓶を見ている。
ぐつぐつ、ぐつぐつ。
「ンー!」
甘い匂いがしてきた。
ミュンが目を閉じて、すーっと息を吸い込む。
「アマイー」
「そうだな、甘い匂いだなー」
砂糖と果実が一体になって、煮込まれた香り。
なんとも言えぬ、甘くていい匂いなのだ。
おっと、アクを取らなくちゃ。
俺はスプーンを差し入れて、アクを取り始めた。
「レー?」
「ん? これは、アクって言ってな。食べられないの」
「ンー」
ミュンが首をかしげる。
食べ物から出てきたものなのに、食べられないというのが分からないんだろう。
そのまま二人で並んで、ぐつぐつ煮込まれるのを見守ること大体三十分。
「どれ、ちょっと味見」
熱くなったジャムを、ふうふうしてペロッと舐めてみた。
おっ、いける。
砂糖多目だから、結構甘いし。
「アマチャアマチャー!! ミュンモー!! アマイマーイ!!」
ミュンが血相を変えてしがみついてきた。
俺の腕を掴んでぴょんぴょん飛び跳ねる。
「わ、分かった分かった! でも熱いからな、フーフーするんだぞ」
「フーフ?」
スプーンに掬ったジャムを、ミュンに差し出す。
俺がフーフー、としてやると、ミュンも真似をしてフーフーした。
二人で、熱いジャムをフーフーやって、ほどほど冷めたところで……。
「ミュン、あーん」
「アー」
ジャムをひょい、とミュンの口の中に落とした。
「ンム! ムー!! アマイマー!!」
「おっ、気に入ったか! じゃあ、これで完成だな!」
「アマチャ、レー!」
「ああ、今食べちゃダメ! これは、パンに塗って食べるんだ。今日は冷やさないとな」
「パン、ジャムー? ……チャー!!」
パンとジャムのマリアージュを想像したみたいで、ミュンはほっぺたを押さえて夢心地になった。
早く食べさせてあげたいもんだ。
俺は流されないよう、重しにくくりつけたジャムの瓶を、海水に沈めるのだった。
「おっと、ヤシガニ、食べちゃダメだぞ。お前にも明日分けてやるからな」
「もが」
ヤシガニに念を押すことも忘れなかった。




