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無人島生活十五日目 ジャムは作れるのか

 若いというのはとても凄いことで、あれだけたくさん食べたミュンのお腹は、お昼近くには引っ込んできた。


「アマチャー!」


「はいはい。元気になったんだな」


 飛びついてくるミュンの頭を、わしわし撫でる。

 ミュンの寝癖がついた髪が、ふわっふわに広がっている。


「よーし、それじゃあ探しに行ってみるか」


「チャ!」


 ミュンが大変よいお返事をした。


「ミュンは、パンに味をつけるならどんなのがいい? しょっぱいの?」


「ンー」


 とりあえず歩き始める俺達。

 歩きながら相談するのだ。

 ミュンは腕組みして、むずかしい顔をした。


「甘いの?」


「アマイ!」


 俺の言葉に、ハッとするミュン。


「アマイマーイ! コチャ、ノー!」


「あー、あの甘い紅茶みたいなのかあ。だけど、お砂糖たっぷりミルクティみたいな甘さは難しいかもしれんなあ」


 砂糖っぽい甘さがある植物、ないかなあ。


「ズーガー、ありそう?」


『ピピー』


 カメラ型ロボットのズーガーは、カメラアイを光らせて唸る。

 分からないっぽいな。

 というか、ロボットだから味覚が無いもんな。

 よし、ひとまず、頭を使ってやっていってみよう。


「よーし、ミュン、まずは果物を集めるぞ!」


「マ!」


「競争だ! 一杯集めて、ここに持ってくること!」


「チャー! ミュン、ルーノ!」


 ミュンから頑張る宣言が出た。

 俺とミュンと、二手に分かれることにする。

 ミュンが心配なので、ズーガーについていってもらうことにした。


「ピョイー」


 走っていったミュンの後を、カニが慌てて追いかけていく。

 さて、向こうは一人と一羽と一機、こっちは一人か。


「もが」


「あっ、ヤシガニ」


 ヤシガニは俺に向かって、はさみを振り上げて何か言う。


「もがもが」


「もしや、手伝ってくれるのか」


「もがー」


 どうやらそうらしい。

 こっちは、俺とヤシガニの一人と一匹のペアである。

 そうなれば、俺はちょっと高いところに生っている果物なんかを集めやすくなるな。


「ヤシガニ、聞いてくれ。これからやる作業はな、果物を集めて、甘みを集めて、ジャムを作るんだ」


「もが?」


「ジャムをパンに塗ると、さらに美味くなる」


 俺が伝えると、ヤシガニは一瞬停止したあと、ぶんぶんとハサミを振り回した。


「もがが!!」


 大いにやる気になったようだな。

 こいつ、ヤシガニなのに人間みたいな味覚を持っているのかもしれない。

 きっと甘いものも好きだろう。


 さて、ヤシガニを引き連れてやってきたのは、島の裏側。

 ミュンの足では遠出はできまいということで、遠くを探すのは俺の仕事なのだ。


「もがー」


 ヤシガニが指し示す、木の上。

 そこは葉っぱが長い椰子みたいになっているのだが、何かオレンジ色の細長いものがぶら下がっている。


「あれはなんだ?」


「もがもが」


「果物か」


「もがー」


「よし、頼むぞヤシガニ!」


「もが!」


 ヤシガニは俺からの頼みを受けて、ハサミとハサミを威勢よく打ち合わせた。

 そして、わしわしと木を登っていく。

 この間に、俺は甘味を探さねばな。


「えーと、ここは南国で、それなりに湿気もあるから……」


 俺がイメージする甘いもの。

 それは、サトウキビだ。

 甜菜なら北国だけど、こういう気候的に恵まれた南国ならサトウキビだろう。

 記憶の中にあるイメージを頼りに、歩き回る。

 すると、染料の草木が生えている辺りに、それっぽいものがあった。


「よし、切り取りだ!」


 俺はコントローラーを振る。

 すると、サトウキビっぽいものの半ばがポキリと折れた。

 皮をむき、中にある茎を舐めてみる。

 おっ、甘い。

 これ、間違いなくサトウキビだな。

 俺は周囲に生えていたサトウキビを、何本か収穫していった。

 その間に、ヤシガニがたくさんの果実を抱えてやってくる。


「もがー」


「おお、大漁じゃないか。それも味見してみるか」


 ヤシガニのお墨付きである。

 不味くはないだろう。

 一つを切り取って齧ってみると、うむ、甘酸っぱい。

 果肉はトロッとしていて、いわゆる南国の果物風だ。

 味わいはマンゴーに近い。

 これ単体では、甘いジャムにはならないだろう。

 サトウキビと一緒に煮てみるか……?


「よし、行くぞヤシガニ!」


「もが!」


 俺達は集合場所へと戻っていった。

 


 到着すると、ミュンはまだ戻ってきていない。

 ちょっと心配ながら、待つことにした。

 多分、一時間ほど経過する。

 その間に、俺はサトウキビを加工だ。

 すり鉢にサトウキビを切って入れ、すりこ木でごりごり潰す。

 水気たっぷりの砂糖汁があふれ出してきた。

 ペロッと舐めてみると、甘い。

 よしよし。


「もが」


「お前も興味あるか。ほら」


 サトウキビの切り身を手渡す。

 ヤシガニはこれを口に運ぶと、もしゃもしゃと食べた。

 そして、


「もがーっ!!」


 ハサミをばんばん砂地に叩き付ける。

 これは多分、甘さに喜ぶ感情表現だろうな。

 よし、これならばミュンも喜んでくれそうだ。


 しばらくすると、ミュンが戻ってきた。


「アマチャー!! レ! ナーノ!」


 小さな腕いっぱいに、青い果実を抱えている。

 あ、こっちに来るときに一個落とした。

 拾おうとしたら、また一個落ちる。


「モー!」


 憤慨するミュン。


「もが」


 ヤシガニが助けに行った。

 あの青い果物はどうだろうな。

 まだ熟してなさそうだけど。

 あ、ミュンの歯型がついてる。

 食べて試したな?

 ということは問題ないだろう。


「ミュン、こっちこっち」


「ンー?」


 俺に呼ばれて、ミュンがトテトテとやって来た。

 果物を、ぺいっと俺の横に放り出す。


「あーん」


「アー」


 お口をあけたミュンに、サトウキビの汁をちょっぴり放り込んだ。

 すると、ミュンが目を見開く。


「ン! ンー!! アマイマーイ!」


 大喜びである。

 よーし、砂糖は揃った。

 これから、ジャムを作っていくのである。


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