無人島生活二日目 古代文明の遺跡出現!
「マ、マ、マママ!」
「あーっ、階段だから! 走ったら危ない!」
「ミャーッ!?」
「ほら滑ったー! 危ないだろミュン!」
勢い良く駆け下りようとして、一段目でつるんと滑ってすっ転びそうになった幼女。
本当に手をつないでいて良かった。
ミュンが尻もちつきそうなところを、ぐっと俺が持ち上げて堪える。
「な、ゆっくり行こう。一段一段、ゆっくり、な?」
「ユクリー」
こくこくとミュンが頷く。
言葉は正確には伝わってないだろうが、ニュアンスは理解したらしい。
今度は、恐る恐る、という感じで一段一段下りていく。
俺もまた、足元に気をつけながら。
何せ、靴じゃなくて葉っぱを巻いた足だ。滑り止めなんてものは無い。
「これ、階段のところまで植物が生えてきてるな。いや、根か……?」
閉ざされていたとは言え、隙間から植物が侵食しているようだ。
金属質の階段は、あちこちに草の根が絡まり、入り込んできた土を被っていたりして、これがまた滑るのだ。
俺とミュンで、少しずつ少しずつ、階段を下っていった。
行先は、一見して真っ暗。
「ヤー」
ミュンが先に行くのを嫌がった。
あー、暗いのは怖いもんな。
「じゃあ、戻ろうか」
俺がミュンにそう話しかけると……。
『ピガー!』
急にズーガーが話し始めた。
『モドロウカ、モドロウカ!!』
「ああ、だから戻るぞ」
『モドルゾモドルゾー!』
うん?
なんか、ズーガーは俺たちが戻るのを歓迎してないふうなニュアンスだな。
ええと、ここは……。
「戻らない方がいいのか?」
『モドラナイホウガイイ!!』
なるほど……。
「だが、明かりがついてなくてミュンが怖がってる。分かるか? 明かりだ、明かり。ええと、外、明るい。こっち、下、暗い。分かる?」
『ピピピピピ』
レンズを点滅させるズーガー。
こいつは、何か考え込む度にブルブルブルっと震えるのだが、それがミュンは大好きらしい。
「キャハー!」
ぶるぶるするズーガーを抱えて、くるくる回っている。
危ない危ない。
狭い階段の上でくるくるしてはいけない。
『ムムム……ムムムムムムーッ!!』
あっ、ズーガーが聞いたことがないほど気合の入った声を出した。
『アカリーッ』
ロボット渾身の叫びに合わせて、突然周囲がパッと明るくなった。
行先が真っ暗闇だったのに、夕方くらいの明るさになったのだ。
『プスーッ』
「ムー?」
抱っこしていたズーガーがいきなり動かなくなったので、ミュンが首を傾げた。
「マ! マ!」
「ああこれこれ、ズーガーを叩いちゃいけません。壊れちゃうでしょ」
「ムー?」
「ズーガーはね、頑張って向こうを明るくして、疲れちゃったんだよ。おやすみなんだよ」
「ズーガー、オヤスミ」
神妙な顔をして頷くミュン。
「よし。じゃあ俺がズーガー預かるから渡して」
「ヤー!!」
ダメですか。
ミュンはまたズーガーを頭の上に乗せて、ぽてぽてと階段を降り始める。
よく頭の上に乗せて落ちないもんだなあ。
とりあえず、明かりさえついてしまえば行き着く先が分かる。
ちょっと下りたところで、底に到着だ。
俺がちょっと早く降りて、ミュンの両手を掴んで持ち上げた。
「そーら、大ジャンプで到着ー」
「キャー! キャハハハハ!」
ふわーっと持ち上げられて着地、というのが楽しかったらしくて、ミュンが大喜びする。
「アマチャー。レ、レー」
「えっ、もう一回やるの? 仕方ないなあ」
ミュンを抱っこして三段くらい上に載せ、またふわーっと持ち上げて着地。
「キャー!」
よしよし、これで満足だろう。
「アマチャー」
「ええ……」
結局、その後四回くらいやって、俺はへとへとになってしまった。
ぐったりした俺を引っ張るように、奥に進んでいくミュン。
夕暮れの色のランプがついた廊下は、無機質な金属だかプラスチックだか分からないもので覆われている。さすがにここまでは、植物は入り込んでいないようだ。
「ふう……全然座るところとか無いな……。ええと、扉がたくさん並んでるみたいだけど……ドアノブも何も無い」
自動ドアかもしれない。
試しに前に立ってみたのだが、廊下に並ぶドアはどれも開かなかった。
ただ一つだけ。
廊下の突き当りに存在する、特別大きなドアが半開きになっていた。
奥からは、やはり光が漏れている。
「チャ!」
行こう行こう、と俺を引っ張るミュン。
「分かったから、ちょっとは手加減してくれえ。ひい、子どもの体力は本当に無尽蔵だなあ……」
それでいて、ある瞬間に電池が切れたみたいに、ストーンと寝落ちしたりするのだ。
俺はその可能性にも対処するために、ミュンを見ていなくてはならない。
気の休まる暇がないぞ。
幼女に引っ張られながら、大きな扉をくぐった俺。
そこで、思わず「げえ」と声を漏らしてしまった。
そこはそれなりに広大な空間だった。
廊下よりもずっと明るいが、考えてみるとこの光源はなんだ。
照明機器みたいなものは一切ない。
言うなれば、天井や壁、素材自体がほんのり光っているのだ。
『ピピピ、ガガー』
「あっ、気がついたかズーガー」
『キガツイタ、ズーガー』
「ズーガー、ここがどこなのか教えてくれ。一体何なんだ、ここは。どうして、こんなものが地下にあるんだ……?」
俺は、目覚めたロボットに疑問の声をぶつける。
すると、返答はズーガー意外からやって来た。
もちろん、ミュンではない。
彼女は頭の上のズーガーを見ようと、一生懸命目玉を上に向けようと面白い顔をしている。
返答がやってきたのは、部屋の中心部からだった。
『ビ%マア$ル#%%ジ$チャ』
床が盛り上がり、大きなテーブルのようなものを形作っていく。
それは平らになった頭の天辺をピカピカ光らせると、ズーガーもまた共鳴して、レンズをピカピカさせた。
『オボエタ、オボエ、タ。ナマエ、セントローン。ミュン、キタ。セントローン、オキタ……』
ミュンだって!?
これはまさか、この幼女に関係しているというのだろうか。
突然名前を呼ばれたミュンは、びっくりしてテーブルに目線を移す。
そしてその直後、テーブルに駆け寄ると。
『アーッ、アーッ! タタク! ダメ! アーッ』
ミュンにバシバシと叩かれて、悲鳴をあげ始めるテーブルなのだった。




