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無人島生活十四日目 かまどと、焼き立てパン

 パンの種はできた。

 ならば、あとはかまどを用意するだけなのだ。

 俺はその辺から石を幾つも持ってくる。


「チャー!」


 ミュンも真似をして、彼女のなりに大きいと思う石を持ってくる。

 これを積み上げて……。


「よーし、石よ、かまどになれ!」


 俺は石に向かってコントローラーを振った。

 すると、石がカチャカチャと組み合わさり、それなりに見栄えのする小さいかまどになる。

 この中に、火を燃やすところと、その上の板を用意して……。

 板は、いつも調理に使ってる鉄板でいいか。

 そして、薪になる枯れ木を集めてきて、火を点ける。


「オー!」


 かまどの中でごうごうと炎が燃え盛る。

 これを見て、ミュンが興味深そうに近付いていった。


「危ない危ない!」


 ミュンを抱っこして引き離した。


「アマチャ! モー! ミュンモ、ルッテー!」


「ミュン、あそこは熱い熱いだからな。火傷して、イタターになっちゃうぞ!」


 抗議するミュンだが、俺が真剣な顔で危ないんだぞと教えたら、「ンー」と考え込んだ。


「アツイアツイ?」


「そう」


「チャ」


 理解したらしい。

 物分りがいい。


 さて、薪を燃やして、どれくらい待てばいいんだっけ。

 石のかまどが熱くならないといけないんだよな。

 遠赤外線効果で、外はカリカリ、中はふっくらなパンを焼くのだ。

 コントローラーは便利だけど、パンの焼きまではできないらしいから、ここからは俺の腕が問われるのだ。


 しばらく、かまどが温まるのを待った。

 ミュンは途中で、うつらうつらとし始め、俺に寄りかかって昼寝を始めてしまった。

 カニも砂浜に頭を半分突っ込んで寝ている。


『ピピー』


「おっ、もういいのか?」


 ズーガーがかまどが温まったことをお知らせしてきた。

 では、いよいよ焼きを開始しよう。

 ミュンを起こすことにする。


「ンー、ハヨー?」


「ミュン、パンを焼くぞ。って言ってもパンが分からないかな? さっき作ったお饅頭とお団子をだな、この板に載せるんだ」


「ンー」


 まだ半分寝ぼけたまま、泡だったお団子を板の上に並べていくミュン。

 あー、握りつぶしてしまった。

 むにゅっと言う感触で、ちょっと目が覚めたらしい。


「アー!」


 変な形になってしまったお団子を並べて、ミュンがどうしよう、という顔でこっちを見る。


「仕方ない、そのまま焼こう」


「ミュー」


 今度はミュン、気をつけながら、そっとお団子を並べていく。

 俺の生地を載せるスペースがなくなってしまったな。

 まあいいか。


「よーし、じゃあ、パンを焼くぞ!」


「マー!」


 二人で大いに盛り上がる。

 かまどに板を差し入れ、じっと待つのだ。

 焚き火はちょろちょろになっているが、余熱が充分に残っている。

 後は、コントローラーを振ってかまどに蓋をするだけ。

 ええと、どれくらい焼けばいいんだ?

 とりあえず、シンプルな小麦のパンだし、熱いうちにサッと焼いてしまうか。

 目指すはフランスパンだ。


 俺はなんとなくで、十五分ほど焼くことにした。

 焼きあがるまでの間、ミュンと二人でお芋の太鼓を叩いて過ごす。

 俺とミュンで、交互に太鼓を叩いてリズムを作るのだ。


 ポコポコッ。

 ぼんぼん。

 ポンポコポコ。

 ぼんぼん、ばんばん。


「ポコポコ!」


「そうだなー。ポコポコだなー」


 ミュンはポコポコ打ちと、バンバン叩く二つのやり方を、かなりマスターして来ているようだ。

 やはり天才かもしれん。

 やがて、太鼓を叩いているうちに美味しそうな匂いが漂ってきた。

 ミュンはハッとした顔をし、お鼻をくんくんさせた。

 そして。


「アーッ!」


 ついに、匂いの元を探り当てたらしい。

 しっかりと風をされた石のかまどから、ふんわりといい香りがして来ている。


「そろそろ十五分か。蓋よ、なくなれ!」


 コントローラーを振る。

 すると、かまどが一気に解放された。

 その中から、なんとも堪らない、小麦がこんがりと焼ける匂いが飛び出してくる。

 うわあ、島に着てからついぞ縁の無かった、パンの香りだ。

 あまりにいい匂いだったので、向こうからヤシガニもやって来た。


「もがー」


「お前も一緒に食べるか? こっち来いよ!」


 彼を招いて、みんなでパンを食べるのだ。

 板を取り出すと、その上でお団子は、こんがり狐色に焼きあがっていた。

 表面はカチカチ。

 ミュンが早速手にとって、


「マッ!?」


 熱くて落っことした。

 かなり熱かったみたいで、手をフーフーしている。

 大丈夫か?

 火傷して無いか?

 ヤシガニもパンにチャレンジだ。

 熱々のパンを、ハサミでガツンと叩く。

 おっ、パンが割れた!


「もがー!」


 ヤシガニは両方のハサミを振り上げ、ガッツポーズをした。

 いいぞヤシガニ!

 二つに割れれば、パンも冷め易くなるだろう。

 少し待って、手に持てるほどになってからミュンに手渡した。

 熱いパンを持って懲りていたミュン。

 恐る恐る、俺の手の中のパンを掴んでみて、熱くないのでホッとしたようだ。


「食べてみようか」


「チャ!」


 俺とミュンで、半分こにしたパンをかじる。

 カリッとした皮の歯ざわりと、ふんわり、しっとりとした中身。

 噛み締めると、焼けた麦の香ばしい味が口いっぱいに広がり、鼻から抜けていく。


「あー、美味い……!」


「ン────!!」


 ミュンはもぐもぐしながら、立ち上がってじたばたした。

 気に入ったみたいだ。

 砂糖もバターも入ってないから、本当にシンプルなパンなんだけど、この麦、焼くと物凄い旨味を出してくるんだな。

 これは、国に帰ったラティファとアフサンにも食べさせてやらねばだ。


 ヤシガニとカニも、パンを分け合ってむしゃむしゃ、つんつんと食べている。


「もがもが」


 ミュンが丸めたパンは、ヤシガニにも好評なようだった。

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