無人島生活十三日目 大きなお芋を太鼓にする
すぽんと掘り出された、大きくて丸いお芋が一個。
大きいな。
バレーボールくらいの大きさがあるぞ。
色も白いから、本当にボールみたいだ。
「これが肥料ねえ……」
『ピピー』
ズーガーが屈伸運動をする。
どうやらそうらしい。
さて、どうしたものか……。
まずはこいつを、その辺の石をナイフにしてさばいて、と。
俺が考えてたら、ミュンがずんずんと前に出ていた。
「チャ!」
バンバン、と芋を叩くミュン。
おお、あの芋、中身がみっしり詰まってるな。
とってもいい音がする。
……あれ? この音、スイカを叩いてるみたいだな。
「チャー!」
ミュンも楽しくなってきたみたいで、調子よく芋を叩く。
バンバンバン、バンババン、バンバン!
「ミュン楽しそうだな。俺も叩かせて」
「アマチャ! ゾー」
どうぞって言ったらしい。
人に譲ることも覚えたのか。
うちのミュンは優秀だなあ。
俺はありがたく芋を受け取ると、胡坐をかいた上に載せた。
そして、小太鼓を叩くみたいに、ポコポコと手のひらで打ってみる。
おほ、こりゃあいいぞ。
とってもいい音がする。
ポコポコポコ、ポコポコ、バンバンポコポコ、バンポコポコ。
「アマチャアマチャ! レー! ポコッテ! ミュンモー!」
「おっ! このポコポコ言う叩き方を教えて欲しいのか! これはコツがあるぞ。習得はとってもキビシイ。ついてこれるか、ミュン」
「マ!」
おお、いいお返事だ。
多分内容は全然伝わってないけど。
ミュンは、いつも物を叩くときは全力である。
腕を振り上げて、全身全霊で肩から力を込めて叩き付ける。
だから、手のひらがお芋を叩くと大変よい音がするのだ。
だけど、俺の軽快な音は違う。
こう、肘から先を使って、ポコポコとだな。
いや、俺は打楽器をやってた経験とかないんだけど。
「ンー」
俺のやるのを真似して、ミュンも肘から先だけで、ぺちぺち芋を叩き始めた。
「上手いぞ上手いぞ」
「エヘ。ンー、モー」
褒められて嬉しいみたいだけど、でミュンは不満顔だ。
俺みたいにポコポコ音がしないからだ。
お芋はぺちぺち言ってるな。
「ミュン、叩く所はここじゃなく、この辺」
俺は、彼女の手を誘導した。
蔓がくっついていた、ヘタに近い部分がポコポコ言うのだ。
ミュンはそこを、ポコン、と一発叩いた。
彼女の顔が、みるみる笑顔になる。
「アー! ポコッター!」
「うんうん。ポコって言ったな」
「マー!」
ミュンがニコニコしながら、ポコポコとお芋を叩き始めた。
リズムはめちゃくちゃだが、いいじゃないかいいじゃないか。
独創性を感じるぞ。
ミュンは天才かもしれん。
『ピピー』
その時、あの~、という感じで俺の服の裾が引かれた。
ズーガーだ。
「あっ、悪い悪い。肥料にするんだったな」
『ピピー』
すっかり、芋を太鼓にして遊んでしまっていた。
しかしこの島、ああいう楽しい音が出るものが無いからな。
打楽器を叩くのは、思ったよりも楽しいぞ。
楽器初体験のミュンがハマってしまうのも分かる。
「あれはミュンに上げてだな。もう一個ない?」
『ピピー』
そういうことなら、と、ズーガーはさっき掘り出した芋の近くをごそごそ掘り返し始めた。
なんだなんだ?
すると、そこからは拳大くらいの可愛い芋が顔を出す。
「おっ! まだ埋まってたのか。……地下茎で繋がってたのかあ」
『ピピー』
どうやらその通りらしい。
俺は、ミュンの叩く芋太鼓の音をBGMに、肥料を作ることにした。
まずはコントローラーで、近くの石をナイフ状に加工する。
と言っても、磨製石器みたいな感じがせいぜいだ。
これで芋を切る。
何度もナイフを滑らせると、芋がちょっとずつ切れてきた。
芋の中は、でんぷんみたいなぬるぬるした成分でいっぱいだ。
焼いて食べてもいけそうだな。
『ピー』
「お、もういいの? じゃあ、これをコントローラーで……。あ、ズーガー手伝ってくれるのか」
『ピピー』
俺の腕にぴょいっと飛び乗ったズーガー。
コントローラーで、芋を肥料にする使い方を教えてくれるらしい。
彼に導かれるままに腕を振ってみる。
すると、なんとなく、コントローラーからイメージが流れ込んできた。
ああ、肥料になれーって念じながら振るのね。
目の前にある、切り分けられた芋。
それがあっという間に、ぐずぐずっと形をなくした。
そして、でんぷんの山みたいになる。
「これで完成なの?」
『カンセイ』
へえー。
俺は、このでんぷんの山を手にとって見た。
あっ、サラサラしてる。
もっとネバッとしてるかと思ったら。
「よし、何か容器に入れていこう。この辺の葉っぱを加工して……えいっ」
大きな葉っぱを、コントローラーで袋状にする。
その中に、でんぷんの粉を放り込んだ。
「アマチャ?」
「おっ、ミュンは太鼓終わりかい?」
「タイコ?」
「そう。そうやって、ポコポコ、バンバンって叩くのが太鼓」
「オー! タイコ!」
ミュンは大きな芋を抱っこしたまま、そのお腹をぺちぺち叩いた。
すっかりお気に入りだ。
では、ミュンの太鼓を聴きながら、麦畑に向かうとしよう。




