無人島生活十三日目 そろそろ肥料を探す
食休みも終わったところで、昨夜アフサンと話をした、肥料を見つけに行くことにした。
「それにしても、何がいいんだろうなあ……」
『一般的には堆肥だろうけど……作れたとしても、ちょっと抵抗があるよね』
アフサンも俺と同じ気持ちらしい。
だよなあ。
自分のウンコが使われてるとわかったものを食べるなんて、ちょっと抵抗があるもんなあ。
「アマチャ。クーノ?」
「うん、肥料を探しに行くんだ」
「ヒリョ?」
「そうそう。麦を育てるための、麦のご飯になるの」
「ムギ、ゴハン? ンー」
ミュンが首をひねった。
なにか考えてるな。
「ンー、カイ!」
「惜しい。貝は俺たちのご飯になるけど、麦のご飯にはならないんだー」
「アー」
ミュンが残念そうな顔をした。
でも、自分で色々考えようとするのはとってもいいことだぞ。
俺は彼女と視線を合わせて、頭をなでなでした。
「自分で考えて、ミュンは偉いなあ」
「エヘヘー」
なんだか分からないけど褒められてることが分かって、ミュンがニコニコした。
俺もほっこりする。
こうしてしばらく、ミュンと肥料になるものの連想ゲームをした。
何か言えば俺が褒めてくれると分かって、ミュンが次々、「コチャ!」とか、「カニ!」とか言う。
うん、カニを肥料にしちゃいけないよな。
でも俺は親バカなので、ミュンが何か言うたびに頭をなでるぞ。
「ミュンは次々に色々思いついてすごいなあ」
「エヘヘー」
そんな事をしてたら、ズーガーがちょこちょこと近づいてきた。
『ピピー』
「おっ、どうしたズーガー。あ、俺たちは別に遊んでた訳じゃなくてだな。肥料になるものを考えてたんだ」
『ヒリョー……ピピピピ……アル』
「肥料なあ。そう簡単には……って、あるの!?」
『ピピー』
ズーガーがクイクイと屈伸運動をした。これ、うなずいてるんだろうな。
「ズーガー! チャ!」
ミュンがズーガーをぺちぺち叩いた。
『ピガー!』
「あっ、ミュンやめなさい、ズーガーが屈伸できなくなってプルプルしてる」
「ンー」
俺に褒められまくって機嫌がいいミュンは、素直に言うことを聞いてくれた。
子どもは褒めて育てるものなのかもしれない……!
ということで、ズーガーに案内され、森の中へと分け入っていく俺たちなのだ。
そうは言っても、この二週間ほどで無人島の森は大体歩き尽くしてしまった気がする。
俺とミュンが住んでいる、ログハウスの周辺だろ。
そこから温泉に通じる道と、油田に通じる道だろ。
セントローンがいる、無人島の地下への入口だろ。
川が流れているところに、島の裏側にある染色用の花が生えている所だろ。
そしてヤシガニが住んでいる浜辺。
「まだ俺たちが行ってないところがあって、そこに肥料になるものがあるのかな?」
『ピピー』
ズーガーは答えず、ひたすら前に突き進んでいく。
カメラみたいな体に針金のような足が四本生えている彼は、なかなか俊足だ。
小さい体で、ミュンの早足くらいの速度を出す。
ミュンも、トテトテと小走りになってついていく。
俺は、ミュンが転ばないように注意しながら後ろをついていくのだ。
「ミャッ」
あっ、転んだ!
「ムイー」
ぺたんと腹ばいになったミュンが、うめく。
「ム、ム、ム」
「頑張れミュン! ミュンは強い子! 偉い子だぞ! 立つんだミュン!」
俺が横にしゃがみこんで、彼女を励ます。
すると、ミュンはハッとした顔になり。
「ンンー! マー!」
気合の咆哮をあげると、ぴょーんと立ち上がった。
「やったー!!」
俺も快哉を上げる。
「ター! ミュン、ターノ!」
「うんうん、偉いぞ!!」
頭をなでなでしつつ、ワンピースについた泥汚れをはたく。
ミュンはニコニコした。
『ピピー』
おっと、ズーガーのことを忘れる所だった。
ロボットは、「そろそろいいですかね……?」みたいな感じでそろりそろりとこっちを伺ってくる。
「よし、行こうか」
俺が彼を促すと、ズーガーはまた歩き始めた。
そして一分ほどで停止した。
『ピー』
「えっ、ここだったのか! ミュンが転んだ所の目と鼻の先じゃないか」
『ピピー』
ズーガーが指し示すのは、見たことが無い草だ。
にょろにょろと蔓を伸ばして、周りの木や草に巻きついている。
「このつる草……。どうも芋の予感がする」
「イモー?」
「そう、おイモ」
「オイモ!」
『イモ』
「ええっ、本当に芋だったのか!!」
ズーガーは、俺の言葉を反復して話をする。
端的な彼の説明は時にとても分かりやすいのだ。
「よし、それじゃあ、一つ引っこ抜いてみるか」
俺が蔓に手をかけると、ミュンも駆け寄ってきて、俺の懐に納まる。
そして、蔓を小さい手でむぎゅっと握った。
「おっ、ミュンもやるか!!」
「ミュ!! ミュンモ!」
「よーし、じゃあ一緒にいくぞ! せーのっ!」
「ンマー!!」
俺たち二人で、満身の力を込めて蔓を引っ張る。
めりめりめり、もりもりもりっ。
地面が盛り上がっていく。
『ピーガッ! ピーガッ!』
横では、ズーガーが両手に葉っぱを持って、それをふりふり俺たちを応援する。
「よーし、抜けろーっ!! うおおー!!」
「ミィーッ!」
俺とミュンの気持ちが一つになった。
今なら、大きなカブだって抜けるぜ!
二人のパワーが合わさったその時。
すぽーんっ。
間抜けな音を立てて、芋は抜けたのだった。
それは、とても大きな、丸くて一個だけ生っている芋だった。




