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無人島生活二日目 洗濯物が乾く間に散策

「ふう……これで下着類はしばらく干したままだな」


「マウー!」


 ミュンが、俺の真似をして洗ったパンツを高らかに掲げている。

 よしよし、分かったから、振り回してはいけない。水しぶきが飛ぶからね。

 温泉脇の、ちょうどいい枝に俺たちの下着を引っ掛ける。

 腰には、大きめの葉っぱを巻いて、ちょっとした原住民の装いである。


「よし、行くかミュン!」


「マー!」


 幼女、元気よく両拳を天へと突き上げる。

 何故か頭の上に、カメラ様の便利ロボ、ズーガーを載せている。

 頭の上に何か載せるの好きだなあ。


「ミュン、ズーガーは俺が持って色々使うんだからよこしなさい」


「ミャー!!」


 俺が手をのばすと、ミュンは大変嫌がり、ロボットを掴んで絶対に渡さない構えを取る。

 これはいかん。


「グルルルル!」


 どこで覚えたのか、犬が唸る真似までしてくる。

 ぬう、言葉が通じないから、彼女を説得することができない!


「おいズーガー、なんとか……」


『ピピピピピ』


「うん、まだそこまで言葉を学習できてないよな」


 お手上げである。

 仕方ない。

 いざとなれば、探索の必要がある時にミュンごと持ち上げて、あちこちを探るとしよう。


「パパパー」


 ミュンが両手を飛行機みたいに広げて、先行してトテチテターと走っていく。


「ああ、もう! 危ない! 一人で先走ると危ない!」


 慌てて追う俺。

 道なき道を突っ走り、切り株ですっ転び、泥地で泥だらけになり、藪に突っ込んで身動きできなくなり。

 あれっ、ミュンが意外とどんくさいぞ。


「アマチャー……」


 藪にこんがらがって動けなくなったようで、涙目で助けを求めてくる。

 俺は藪の枝を振り払いながら、幼女を抱き上げるのである。

 おお、泥が、泥が!


「ミュン、ここは、手を繋いで動いたほうが良いと思うんだ」


「?」


「こうしてだな、手と、手を」


「オー!」


 手を繋いだだけなのに、何故、その発想はなかったみたいな顔をして、目をキラキラさせるのか。

 とりあえず、この幼女の行動に付き合っていると疲れるが、退屈はしない。

 さあ、ミュンの行動を管理下に置いたところで、改めて散策だ。

 革靴も乾かしているから、今は葉っぱを足に巻いている。

 流石に裸足は怖い。

 ということで、草むらを避け、足元に注意し、ゆっくりゆっくり。


「チャー!」


「あーっ、走るのかミュン!! ぬおっ、意外とパワフル!」


 慎重に動くことを許さぬ、幼女のアクティブさ。

 途中で何度かズーガーを落っことしつつ『ピガー!』『ピピピガガー!!』二人と一個で、森のあまり深くないところまで歩いていったのである。


 森の中は、あちこちにぬかるみがあったり、倒木があったり。

 ぬかるみの近くには決まって湧き水や、小さな沼があった。

 案外、水だけならば豊富に手に入りそうだ。

 焦って水を掘る必要はなかったなあ。

 倒木は、何かに切り倒された跡がある。

 一見して古い木で、周囲に生えているのは新しい木に見える。

 何者かが、森の新陳代謝を促しているんだろうか。


「アマチャ! アマチャ! レー、レー!」


 ミュンが俺の手をぐいぐい引っ張る。

 何かに気づいたようだ。


「どうしたんだ? ええと、何かあるのか?」


 ミュンの目線の高さで、何かさらに低い場所を見ている。

 俺もしゃがんで、彼女と同じ目線になってみた。

 すると、一見して倒木にしか見えないそれが、地面側で全く違う質感の何かに変化しているではないか。

 ミュンの背丈に合わせてみると、ちょうど差し込んだ太陽の光が、そこに反射している。


「ありゃ、なんだ……? まるで金属みたいな光り方をしてるけど……」


「チャ!」


 ミュンが俺をぐいぐい引っ張る。

 両足で踏ん張って、あの色合いが違う倒木まで引っ張ろうとする。


「分かった分かった! 行こうか。なあ、ズーガー、あれは何だ?」


『ピピピピピ!!』


 ミュンの頭の上で、ロボットが振動した。


「キャッキャッ」


 音を立てて震えるのが面白かったらしく、喜ぶミュン。

 いや、待てよ。

 ズーガーのこれは、ちょっと今まで見たことがない動きだ。


「ちょっとズーガーを貸して……」


「ヤー!」


「うん、嫌だよな。よーし、じゃあミュン、あっちを向いてみようか。ほーら、あっち向いて、ホイッ」


「ホイッ!」


 まさにあっち向いてホイの動きで、指先を倒木へ動かすと、ミュンの顔が、ズーガーごとそちらに向いた。


『ピピピピ、ピンコーン』


「おっ」


 新しい音だ。

 ズーガーの緑のレンズが、今までにない強い光を放っている。

 すると、倒木の金属質な部分も、ピカピカと同じ緑に輝き出した。


「な……なんだこれは……!? 秘密基地だとでも言うのか!?」


「ピャー!」


 さすがのミュンも、目の前で起こる光景に驚き立ち止まる。

 光り輝く倒木は、ゴゴゴゴゴッと蠢くと、次いで、実に億劫そうな動きでゴロリと転がった。

 さっきまで倒木があった位置に、穴が出来ている。

 いや、あれは穴じゃない。


「階段だこれ……!」


 金属の枠に覆われた穴は、ゴージャスなマンホールのようだった。

 縁が今も、ピカピカと点滅している。

 枠のあちこちに、緑のレンズがはまっているのだ。


「これはどうやら、普通の場所じゃないみたいだぞ……!」


 どうする、という一瞬の逡巡。

 だが、行く場所が今のところ無い俺たちにとって、選択肢は一つしか無いのだった。

 いざ、穴の中へ!

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