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無人島生活十三日目 お腹のお肉の話

 この無人島に来てから、俺は大変寝つきが良い。

 眠りだって深いし、温暖だから腹を出して寝てても風邪を引かない。

 今日も今日とて、太陽の日差しがそれなりの高さになったころ、うっすらと眠りが浅くなってきた。

 そこに、いつもの声がかかる。


「アマチャー! ハヨー!」


 俺のお腹が、ぺちぺちぺちっと叩かれた。

 う、うおー。


「ぬおおー、ミュン、強烈な目覚めのあいさつだなー」


「チャ! アマチャ、ハヨー! ミュン、ムギ、ルー!」


「おー、今日も麦を見に行くのなー」


 俺はのろのろと起き始めた。

 すると、部屋の隅っこにいた毛玉が、こっちに向かってトテトテっと走ってくる。


「カニ?」


「ピョイー」


 カニは俺のお腹目掛けてジャンプ。

 ぼよーんと当たって跳ね返った。


「キャーッ」


 ミュンがその様子を見て、大喜びする。


「アマチャ、ネ、ポンポンッテ」


 またミュンがお腹をぺちぺちしてきた。

 あっ、触られて気付いたが、ふっくらお腹にお肉が……!!

 無人島だというのに、食生活が豊かだったせいだろう。

 ミュンが美味しそうにもりもりごはんを食べるので、俺もつられてもりもり食べたせいだ。

 運動しなくちゃ……!!

 幼女の体の代謝と、おっさんの代謝は全然違うのよ……!


「よーしミュン! 顔を洗って、朝ごはん食べて、麦を見に行こうか! 小走りで!」


「チャ!」


 ミュンが大変よいお返事をしたのだった。




『……それで数多は、うっすら朝から汗をかいてるわけね』


「ミュンを抱えて小走りで来たんだ」


 朝食の用意をしていたラティファは、半笑いで俺を出迎えた。


『でも、男の人ってお腹に肉が付きやすいんだから仕方ないじゃない? 私の国では、ちょっと太ってるくらいの男の人の方が貫禄があってもてるわよ』


「いや、もてる以前に、ミュンの前ではかっこいい俺でいたいのだ……」


『ふうーん? ねえミュン、お父さん、かっこいいままでいたいんだってー』


「ンー?」


 ミュンは分かってるんだか、分かってないんだか。

 でもいいのだ。

 俺の自己満足だとしても、自己管理して健康を維持する……!


『やあ数多。麦の生育は順調だよ。夜を経るたびに、劇的に成長するね』


 アフサンが畑の方からやって来た。

 じょうろを手にしているので、朝の水やりをしてきてくれたようだ。


「水やりありがとう。どんな風に伸びてる?」


『茎が倍くらいに伸びてる。ミュンの身長を追い越したね』


「そりゃあすごい!」


「ミュンノ? ムギ?」


 自分の名前と麦の話題が出たので、ミュンが興味を示した。

 下ろしてくれとじたばたするので、俺はミュンを地面に立たせる。


「アプサン! ムギー!」


『ああそうだよ。麦が大きくなってる。こんなに、こーんなに!』


 アフサンが手を広げて、麦がミュンよりも大きくなったぞー、と教えてくれた。

 これはミュンにもよく分かったみたいで、彼女はぴょんぴょん跳ねながら、「キャー!」と奇声をあげてはしゃぐ。


「ミュンー! 朝ごはん食べてからね。麦は朝ごはん食べてからー」


「ムー」


 今すぐにでも麦のところに行きたいみたいで、ミュンがぷくっと膨れる。

 アフサン、しまったなあ、という顔で後頭部を掻いた。

 ちょっと、ミュンの興味を惹きすぎてしまったようだ。

 これは、朝ごはん食べるモードにするのに大変だぞお。


『ふふふ、そこは私にお任せよ。ミュンー』


 ラティファがミュンを呼ぶ。

 その手には……ティーポット。


「アッー!」


 ミュンが気付いた。

 これは、紅茶タイムだ。


「コチャー! アマイー!」


 ぱたぱたと走るミュンが、すぐに食卓という名の砂浜の上に座った。

 そこには、火が起こされていて、海産物や青バナナが焼きあがっている。

 ミュンはきらきらとした眼で、ラティファが手にしたティーポットを見つめた。

 そして、可愛いティーカップに甘いミルクティが注がれる。


「アマチャー! ゴハンー!」


 はいはい。

 すっかりミュンは、朝ごはん食べるモードになって俺を呼んだ。

 隣の地面を、ばしばし叩いてる。

 ラティファは勝ち誇った顔をして、俺とアフサンを見た。


『やあ、子供の扱いはラティファの方が上手いね』


 アフサンは肩をすくめた。


「砂糖パワーだな。子どもは甘いもの大好きだからなあ」


 四人揃っての朝食の時間。

 いや、四人と「ピョイー」一羽と。


『ピピー』


 そうそう。

 最近はラティファとアフサンの周りによくいる、カメラ型ロボットのズーガー。

 生き物の方のカニみたいな足で、ズーガーは砂浜をてくてく歩き回っている。

 彼が俺とラティファたちの言葉を翻訳して、通じるようにしてくれているので、とても重要だ。

 今はラティファの船に入り込んで、構造を調べたりしているようだ。


「いただきます」


「イアラキアス!」


 俺が手を合わせると、ミュンがまねをした。

 おっ、舌が回るようになってきたな……。

 ミュンが日本語を喋るのも、もうすぐかもしれない。

 今までは、ごく単純な単語はマスターできていたが、そろそろ熟語を教えてもいいかもしれない。


「アマチャ、レ! レーモ!」


 俺が考えていると、ミュンが俺の前にどんどんと海産物を並べていく。


「ま、待つんだミュン! 俺はお腹を引っ込めるダイエットが……うわーっ、並べるのはやめてくれー!」


 食後も運動をせねばなのだった。

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