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無人島生活十二日目 育ってる!

「マー! ポンポン!」


 ミュンが耳慣れぬことを言って、朝食後のお腹をぺたぺた叩いた。

 お腹がぽんぽんってことかあ。

 俺、もしかしてどこかで口走ってたかも知れぬ。

 子供の学習力、侮りがたし。

 変な言葉を教えちゃいかんな……!


『なんだかいつもよりも食事が美味しいわ……! お風呂の後の食事、最高……!!』


 ラティファが、涙を流さんばかりに感激している。

 彼女は久方ぶりの入浴を終え、つやつやしている。

 頭はまだ濡れ髪で、軽く水気を絞ったまま、風にさらしている。

 潮風で痛みそうだなあと思ったが、そういうところ気にしないタイプなんだろうか。


『じゃあ、僕は三日後にでも……』


 風呂に無頓着なアフサンもいるな。

 こいつは今夜風呂に叩き込もう。


「アマチャ!」


「お、なんだミュン。食べてすぐ動いたら良くないぞー」


 俺は木陰でゴロゴロする気満々である。

 だが、うちの幼女がそれを許してくれない。

 むーむー言いながら俺の手を引っ張る。


「なんだいミュン」


「ムギー!」


「あ、そうか!」


 俺は合点がいった。

 ミュンからすると、昨日は丸一日麦を見られていないのだ。

 熱を出したり、大雨に遭ったりしてたからなあ。

 この娘が麦を見に行きたがるのは、朝顔の観察みたいな感覚なんだろうかね。


『数多、お疲れ様。食事の後は片付けておくから、ミュンと麦を眺めてきなよ。ちょっとしたもんだよ、あれは』


「あ、すまん。だが、ちょっとしたものとは……?」


 アフサンは、笑うばかりで答えてくれない。

 どうやら、俺とミュンが出てこれない間、アフサンが麦の世話をしていてくれたようだ。

 どれどれ、と麦畑となっている、隣島へと渡っていった。

 すると……。


「ピャ────!!」


 ミュンが物凄い声を上げた。

 あまりの驚きで、いつもなら悲鳴の時に上げる声が出てしまっている。

 俺だって、同じ気分だった。

 なぜなら、目の前に広がっていたのは……一面の青々とした麦の海だったからだ。


「すげえ育ってる……!! い、いや、育ってる以上に、増えてる……!!」


「ムギー!! アマチャ、ムギー!」


「そうだな! 麦が凄く増えて、大きくなってるなあー」


 まだ、麦穂は出てきていない。

 植えたのが麦だと分かっているからこうして興奮するが、そうじゃなければ、これがどういう種類の草なのか分からなかっただろう。


「ピョピョ、ピョイー」


「アッ、カニー!」


 ミュンの股の間を、カニが駆け抜けていく。

 彼は緑の海と化した麦畑に、真っ向から突っ込んでいき、弾力がある茎にぶつかって、ぼいーんと跳ね返された。

 それを、ミュンが見事にキャッチ。


「チャ!」


「うまい!」


 俺が褒めると、ミュンはニヤニヤした。

 さて、二人で麦を見て回る。

 一昨日植えたばかりだと言うのに、なんとも凄まじい成長ぶりだ。

 昨日の雨が、この生育を促したのかな?


「ンー」


 ミュンは手を伸ばし、麦の葉をいじっている。

 最初は興奮していたミュンだったが、だんだん、麦が割と何の変哲もない草であることに気付き、興味を失いつつあるような。

 花が咲いたらまた違う気もするが、でも、確か麦の花ってめちゃくちゃ地味なんじゃなかったっけ。

 俺は、何とかしてミュンに、麦への興味を抱かせようと考えた。

 ここは……自分で育てているという実感を覚えさせるのはどうだろう。


「ミュン」


「チャ?」


「麦に水をあげよう!」


「ンー?」


 俺は、コントローラーを抜き放った。

 それで、適当に地面に振り下ろす。

 すると、土でできたジョウロが生まれる。


「チャ! アマチャ、レー?」


 おっ、ミュンが興味を持った!


「ふふふ、これはな、こうやって使うんだ」


 俺は海の水をジョウロに入れると、先端の穴からサーッと降らせてみせた。


「アーッ! ルーノ! ミュンモー!」


 よしよし、食いついてきた!


「でもな、ミュン。海の水を麦にあげちゃいけないのだ。水は、川から汲んでこないとな」


「チャ!」


 ミュンは俺からジョウロを受け取ると、何度も頷いた。

 そして、ダッシュである。


「あー、いきなり走り出す! 待てー」


 俺も後を追った。

 途中でアフサンを拾い、彼に森の外側で待機させる。

 俺はバケツを作り出し、これにジョウロ用の水をタップリ汲み、アフサンに手渡して往復するのである。

 とりあえず、ミュンが当座の間、ジョウロで水をやれるだけ確保できればいい。


「ミズー!」


『あら、ミュン、水やりするの? じゃあ私もお付き合いするわね』


 おっと、ジョウロを使うのが一人増えたぞ。

 ミュンとラティファ、二人仲良く麦に水やりするのを横目に、男たちは水汲みに精を出すことになったのだった。

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