表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/84

無人島生活十一日目 ミュンの熱と看病の日

 朝である。

 太陽の光が差し込んできて目が覚めた。

 さて、そろそろ来るぞ、ミュンが起こしに来るぞ……と、毎朝の恒例行事を待っていたらだ。

 いつまで経ってもやってこない。


「おや? ミュン?」


 起き上がって、隣を見た。

 すると、真っ赤な顔をしながらうんうん言っているミュンがいるではないか。


「あっ」


 俺は一瞬頭が真っ白になった。

 彼女の顔に触れてみると、熱い。


「ね……熱がある!!」


 また頭が真っ白になった。

 ドッと汗が吹き出してくる。

 ええと、こういう場合どうしよう。

 熱だから、喉が乾くよな。水が必要だ。小さい子の薬ってどうすればいいんだっけ?

 むむむむ……!!


「アマチャ……」


 ミュンがうっすら目を開けると、俺の服の裾を弱々しく掴んできた。


「ううう、だ、大丈夫、大丈夫だからな。喉乾いてないか?」


「ンー」


 ミュンがうなずいたのを見て、水汲みに行こうと決心する。

 途中でズーガーを拾って相談だ。


「カニ、俺が水を汲んでくる間、ミュンを任せたぞ」


「ピョイー」


 いつもなら、何を考えているんだか分からないようなカニだが、今回ばかりはしっかりとした意志の色をその目に感じた。

 俺は桶を手に、泉に急ぐ。

 水をたっぷり汲むと、家に戻った。

 家の前には、ズーガーがやって来ていた。


『ピピー』


「おお、いいところに来た! 実はな、ミュンが熱を出してて」


『ピガー!?』


「こらこら、お前まで気を動転させなくていいから! どうしたらいいかセントローンに聞いてくれ」


『キク。マッテテ』


 俺はロボットがピコピコと、島の中央コンピューターであるセントローンと通信している間、柑橘類などを摘んで戻ってきたのである。


「アマチャー」


 ミュンが身体を起こして俺を迎えようとする。


「ああー、無理しなくていいから! 辛いだろ? ほら、酸っぱいの取ってきたから水飲んで食べて」


「ンー」


「あんまり食欲ないの? じゃあ、汁を絞ってやる」


 これは何だろうなあ。

 病気か何かだと思うが、急にミュンがこんなことになるとは。

 昨日まではなんとも無かったが……。

 もしかして、ラティファとアフサンが、大陸の方の病気を持ってきてしまったんだろうか。

 いやいや、今は人を疑ったりするのはやめだ。


 ミュンは、果実の汁ならばいけるようだった。

 抱っこして、少しずつ飲ませる。

 その後、汗を拭いてやり、水につけた布をおでこの上に乗せた。


「チャ」


「ヒヤッとして気持ちいいだろー」


「ンー」


 ミュンが、俺の胸に後頭部を擦り付けてくる。

 うーむ、キュンと来るな。

 早く良くなってくれよ、ミュン。


 また寝かせて、俺も柑橘類を食べながら看病することにした。

 汗を拭いて、布を冷やし、時々水分を飲ませる。


 しばらくして、ミュンが寝息を立て始めたら、ズーガーが『ピピー』とか言いながら上がってきた。


「シーッ! 寝た所なんだぞ」


『ピ』


 ズーガーが声を潜める。


『ワカッタ』


「わかったか」


『ネツ、シマ、シラベル。ダンダンナオス。シマノタベモノ、タベテ』


「ふむふむ、つまり、セントローンでもミュンの熱を調査してると。島の食べ物を食べてってことは、調査した対策みたいなのが、随時食べ物に更新されてるってことか」


『ピ』


「よし来た」


 俺はミュンが寝ている隙に、また外で食べられるものを回収してくる。

 歯ごたえがあるものは辛そうだったから、おかゆみたいにできないかな。

 青バナナを取ってきて、すり鉢とすりこぎを作り、潰してお湯で割ってみる。

 うん、ドロッとした不思議な物ができた。

 味はネギ。

 これに果汁を落とすと、まあ食えないことはない味だ。


 戻ると、ミュンが目を覚ましている。

 青バナナのおかゆを食べさせたら、美味しくなさそうな顔をした。

 気持ちは分かる。

 半分食べて、「ヤー」と言ったのでこれまで。


 もう、日が高い時間帯になって来た。

 なんだか今日は、時間が経つのが早いな。

 ミュンのおでこに触ってみると、ちょっと熱が下がっていた。


「おお、おかゆの効きが凄いぞ。なんとかデータを集めて、今後の対策を用意してくれ……!」


『ピピー』


「アマチャ、ミュンネー、ムギ、ナノー」


「麦を見たいかー。でも、ミュンは今日一日、熱があるから寝てないとな」


「ヤーノ」


 いやいやをするミュンだが、いつもより弱々しい。

 これは寝かせておかないと。


「あっ、ズーガー、伝言を頼まれてくれるか? ラティファとアフサンに、ミュンが熱を出したから今日は看病してるって」


『ピピー』


 ロボットがうなずいた。

 カメラみたいな姿が、ぴょんと家から飛び降りて、そのまま浜辺に向かって消えていく。

 体調が戻ってきたっぽいミュンは、今日一日外出できないというのが不満らしく、頬をぷくっと膨らませて、カニをぺちぺち叩いている。

 カニは基本、なされるがままなのだが、お陰でミュンの暇つぶしの相手になっているようだ。


 しかしまあ、ミュンがちょっと元気になってきて安心した。

 安心したら俺も腹が減ってきたぞ。

 ミュンが残したおかゆを食べる。

 うん、微妙な味だな。

 今後はこういう、消化に良い食事も研究しなくちゃなのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ