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無人島生活十日目 麦を囲んで夕ご飯

「ムギー?」


 あちこちに飛び出した麦の芽を、ミュンがつんつくと突っついて回る。


「ピョイー」


 カニが真似をして、嘴でツンツンと突っつく。

 食べちゃいそうだ。


「カニ、メーヨ!」


 ミュンが慌ててカニを抱き上げた。

 カニを赤ちゃんみたいに抱っこして、ぽふぽふと叩いているのだが、女の子はああいうお人形遊びが好きだなあ。


『あら、お父さんとしてはミュンちゃんがおませになって来て、ちょっと寂しかったりするの?』


「ラティファはやな事を言うなあ」


 いや、俺としては、ミュンが成長していくってのは嬉しいものである。

 血の繋がりどころか、間違いなく人種まで違う俺たちだが、この無人島で仲良くやって来たのだ。


 だがこう……まだまだ、俺に頼って欲しいなーとは思うのであった。

 こういうのが親心なのかしらん。


「まあいいや。俺はゆう飯の材料を獲ってくる!」


『僕も手伝おう。ラティファ、ミュンを見ていてくれるかい?』


『ええ、任せて。ズーガーはどうするの?』


『多分、僕と数多で別々のところで食べ物を集めるから、いらないかな。ミュンの言葉が分かるように練習しておいてよ』


『き、厳しいなあ……。まずはニホンゴを覚えるか、こっちの言葉をミュンちゃんに覚えてもらわないと……』


 色々と葛藤があるようだ。

 ひとまず、翻訳装置であるズーガーがいる間に、夕飯をどれにするか決めておかねば。


「アフサン、海のものを頼む。ええと、ここから見えるあの岬の辺りは割と、貝とかエビとかいる。大丈夫だと思うけど波にさらわれないでくれよ。君は俺と違って、この島に歓迎されてるわけじゃないから」


 俺とミュンの場合、多分、この島に守られているのだ。

 なので島で危険な目に遭ったことが……あの海賊騒ぎくらいしかない。

 だが、アフサンとラティファは違うのだ。


「というわけで、気をつけてくれ。思いっきり気をつけてくれ。何が起こるか分からない!」


『あ、ああ、分かった。そうだったね、この島自体が意思を持っているんだった』


 と言う風に、注意を伝えた後、俺は森の奥に消えていくのだった。

 森に入れるのは俺とミュンだけだからな。


 コントローラーで籠を作り、あっちこっちの果物や野菜を採取する。

 もう既に、勝手知ったる自分の庭。

 どこに何が生えているのかを覚えてしまっている。


 一時間もしないうちに、四人分としては充分な食べ物を確保できた。

 さて、アフサンはどうだろう?

 森から出てみると、岬の辺りでわいわいと騒いでいる。

 あれは……アフサンだけじゃない。

 ラティファに、ミュンまでいるじゃないか!


「レー! ウニ、アマチャノー!」


 ミュンの大きな声が聞こえてきた。

 俺の好きなウニを獲ってるみたいだ。

 ミュンが、二人に採集の仕方を教えているんだなあ。

 これはちょっと楽しい光景だ。


『ピピー』


 ズーガーがやって来た。

 なんと、向こうでミュンと二人は、ズーガーの翻訳なしでやり取りして、協力しての食材確保をしているのだ。

 いやはや、凄いなあ。


「いや、ミュンのバイタリティが凄いのかもしれないなあ」


 今日の夕食は麦畑で摂ると決めていたから、調理用のセットをそちらに持ち込む。

 俺が獲ってきた分をサッと火を通す。

 大丈夫だとは思うが、ここで食事をする時、大体のものには火を通してきた。

 医者も居ない無人島だ。何かあったら良くないからな。

 生で食べていいのは、柑橘類と一部の果物くらい。

 これは俺が身をもって確認した。


 おおよそ、野菜や火を通して食べる果実を焼き終わった頃、三人が戻ってきた。

 わいわいと俺が知らない言葉で盛り上がっている。

 あ、いや、ミュンはいつものミュン語だ。

 それなりに収穫があったようだな。


「おかえり!」


 俺が手をふると、ミュンが気づいて、ぴょーんと飛び上がった。


「アマチャー!!」


 なんと、ミュンはワンピースの裾を捲って、そこにいっぱいに貝殻を溜めて走ってくるではないか。


「ミュン、パンツが丸見えだぞー!」


「カイ! カイー!」


「ピョイー」


 うん、貝がたくさん採れたことは分かった!

 だが、女の子としてその格好はいかがなものか!

 ああ、いや、収穫物を回収する容器が足りなかったな。アフサンの分しか無かったものな。


 獲物を全部アフサンに持たせて、手ぶらなラティファが俺と目を合わせると、気まずそうに逸らした。


「ラティファはミュンを見習うべきだな……。しかしたくさん採れたなー。偉いぞミュン!」


 パンツまるだしでも、褒めるところはちゃんと褒める。

 俺はミュンの目を見て彼女をねぎらうと、頭をなでなでした。


「エヘヘー」


 ミュンがニコニコする。

 もじもじ動いたので、ワンピースに溜めていた貝がみんな下にぼとぼと落ちてしまった。

 洋服もへんてこな染みになってしまったな。

 うん、明日は洗濯だ。


「さあアフサンにラティファも、こっちに持ってきてくれ! どんどん焼くぞ! 自分で獲ってきた物を食うのは、格別に美味いからな!」


「ゴハン!」


「ピョイー」


 ミュンとカニが、元気に歓声を上げるのだった。

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