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無人島生活十日目 さあ水やりだ!

「ミュン、麦は蒔いたが、水をやらないといけない」


「ミジュー?」


「そう。いつもほら、ごくごくって飲むやつな」


 俺がジェスチャーをすると、ミュンはむむむーっと首を傾げ、ハッとした。


「レー!」


「わかったか! よし、水汲みだぞー」


「チャー!」


 ミュンと二人、並んで水汲みに向かうのである。

 この間まで、染色に使っていた川。

 この島で唯一真水が取れるのはあそこだけだ。


 ミュンのサイズのバケツを作って、二人で水をたっぷりと汲む。


「ミュン、持てるかー?」


「ミュン、テモー!」


「そうかそうか。でも無理だったら運んでやるからな」


「アマチャ! ミュン、チャモ、レナーイ!」


「わはは、分かった分かった! ミュンもできるもんな! さあいくぞ!」


「チャ!」


 ラティファもアフサンも、森の奥まで入ることはできない。

 だから、水やりは俺たちでやるしかないのだ。

 後は、二人のための飲水も汲んでこないとなあ。


 わっせわっせと水を運び、畑まで片道十分くらい。


「プヒー、プヒー」


 おっ、ミュンが頭から湯気を立てている。

 それでも頑張って、桶を落とさないところは意地だな。

 俺は彼女が無茶しないようにちょこちょこ見つつ、これからの動きについて頭を働かせる。


『ミュン、大丈夫? とっても重そうだけど……』


「モー! ミュン、レナーイノー!」


『あ、一人でやるのね!? ああ、でも重そう……』


 ラティファがハラハラしながらミュンの後ろについてくる。

 心配になるよな。

 だけど、子供が最後までやりたいと言うならやらせてあげるのがいいと俺は思うのだ。

 そして、ようやくの到着!


「マー!!」


 やり遂げた!

 そんな喜びを全身で表しつつ、ミュンが空に向かって吠える。


「えらいぞ、ミュン!」


「チャ!」


『凄いわ! 頑張ったわね、ミュン! あー、小さい子が頑張ってる姿って、どうしてこんなにグッとくるのかしら……。ううっ、年をとると涙腺が緩くなって……』


 年をとるとって、ラティファそんな年なのか?

 女性に尋ねるのは失礼な気がして、年齢を聞くことはできないが。


 俺たちが到着すると、アフサンが寝転んで、生えてきた麦の芽をルーペでしげしげと眺めている。


『いやあ、これは僕の知らない種類の麦だよ。少なくとも、こんな形で芽を出すことはありえない! そうだな、君の国の言葉で言うなら、「トテモ、メズラシイ」だ!』


 俺はびっくりした。

 基本、アフサンとラティファの言葉は、ズーガーによってリアルタイム翻訳されている。

 だが、今のアフサンは、意識して日本語を口にしたのだ。


「あっ、俺が日本人だって分かった?」


『分かるさ。僕の職場にも日本人が出入りしたりするからね。「ニホンゴ、チョトダケ、ハナセル」そのうち、もっと上手くなるよ。さあ、水をやるんだろう? じょうろが必要なんじゃないかい?』


 このアフサンという男は変わり者だが、有能だなあ。


「まあ、じょうろは任せてくれ。行くぞ。桶、じょうろになれー」


 ポケットに突っ込んでいたコントローラーを抜き、ぶんぶんと振る。

 すると、ミュンが地面に置いた桶が、可愛いサイズのじょうろになる。


「チャー!」


 ちょうどいい所に取っ手があったので、ミュンがそれを握ってはしゃぐ。


「よし、ミュン、水をやるぞー!」


「ミジュ!」


「二人で一緒にあげような」


「チャ!」


 後ろからミュンの手を支えて、こうしてこうして、とやり方を教えながら一緒の水やりだ。

 じょうろの先から、ちょろちょろと水が溢れる。

 頭の上から水を受けて、麦の芽がプルプルと震えた。


「大きくなれよー。たくさん麦の穂をつけて、美味しいパンになれよー」


 ミュンにパンを食べさせよう計画、その一歩なんである。

 こうして、彼女も一緒に育てることで、俺なりの食育も兼ねている。

 自分で育てて、収穫して、それで料理して食べる。

 これはとても大切なことだぞ。


『ふーむ、これは……こうして見ている間にも、少しずつ成長しているようにも見えるね。これは凄いぞ。つまり、この島の土を構成しているナノマシンが麦を育てようとしているということなのか……?』


『アフサンがトリップしちゃったわねえ。こうなったら、日が暮れるまで戻ってこないわ。さあさあ。アマタが汲んでくれた水で、私は二人に労いのお茶でも淹れようかしら』


「コチャー!?」


 ミュンが飛び跳ねるように振り返った。


『そう! あまーい紅茶!』


「アマイマーイ!」


 ミュンはじょうろをぽいっと放り出し、ラティファに飛びついた。


「あー。まだまだ、知識欲より食い気だなあー」


 苦笑しながら、俺はじょうろを回収。

 残りの水やりは、俺がやるとするか。


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