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無人島生活十日目 畑の候補地を調査せよ

『うーい……おはよーございまーす』


 ぼさぼさ髪のラティファが出てきた。


「船のベッドって寝心地が良かったり?」


『やー……ソファだしー……ちゃんとしたベッドで寝たいぃ』


「俺とミュンなんか、適当な葉っぱの上で転がってるだけだもんなー」


「ネー」


 二人でこつんと拳をぶつけ合う。

 そしてミュン、寝起きのラティファにも容赦がない。


「ラチハー! ノー! コ、チャー! アマイマイー!」


「ミュンが甘いお茶を所望してる。ラティファ、頼むぞー」


『な、なんて容赦がない……!』


 アフサンは後ろでニコニコするばかり。

 かくして、寝起きのラティファはお湯を沸かすことになった。

 綺麗な水なら幾らでも湧いているという、割と奇跡のような島である。


 俺とミュンとでお茶用の水を汲んできて、これを石油燃やして沸かす。


『私は空きっ腹だってのにー』


 寝起きのラティファはぐにゃぐにゃしているな。

 ぶつぶつ言いながらお茶を淹れて、そこにたっぷりミルクと砂糖。

 うん、甘いものは格別だなあ。


「ンー!」


 ミュンも大満足のようだ。

 容器を両手で持って、冷ましたお茶をこくこく飲んでいる。


『ラティファ、あっちに君の分の朝食は取り分けてあるから適当に食べなよ』


『わあ……朝食が用意してあった……』


 ふらふらと、朝食を摂りに行くラティファである。

 彼女がもさもさとご飯を食べている間に、今日の計画のことをアフサンと話す。


「アマチャ!」


「ピョイー」


 あぐらをかいていたら、膝の上にミュンとカニが乗っかってきた。

 一人と一羽を乗せながら、俺は切り出す。


「畑を作るっていう話だったけど、アフサンに手伝ってもらうなら、森の外側に作らないとだな」


『そうだね。僕らは森のなかに入ることが出来ない。アマタはぐるりとこの辺りを一周したんだろう? どこからいけそうな場所はなかったかい?』


「うーん、どこも木や葉っぱが生い茂ってたな。コントローラーで無理やり開拓すればやれないことはないと思うが」


 例えば、染色するための色素が取れる草の群生地。

 あの辺りは切り開けそうだが、ミュンの洋服も、またカラフルなやつを用意してやりたいし。

 俺のそんな話を聞いて、アフサンも首を傾げた。


『難しいね……。ミュンのために、染料が取れる植物は残しておいたほうがいいだろう。となると、森を切り開くしかないか……?』


 これは困った。

 詰まってしまったぞ。

 そう思った時だった。


「チャー」


 ミュンがポケットをごそごそやって、昨日セントローンからもらった種を取り出した。

 一見して、茶色いカプセル。


「おっ、そういえば昨日の服、寝巻き代わりにしたまんまだったな。お着替えするかー」


「ンー」


 ミュンが何がもごもご言ってる。

 なんだろう。


「ネー。タネネー」


「うんうん」


「タネー、ポッテ。ルーノ」


「ほうほう」


 どこかに種を撒きたいみたいだ。

 だけど、まだミュンの言葉は曖昧でよく分からない。

 さて、どうしたものか。

 こういう困った時は……。


「ズーガー」


『ピピー』


 その名を呼ぶと、カメラみたいな形をした小型ロボットは手足を生やし、立ち上がった。

 アフサンたちの言葉を翻訳するために、常に傍らに控えているのだ。

 俺としてはこのロボットが、島の生活における相棒に思えている。


「ズーガー、どうしたらいいと思う?」


『ピー、タネ、マク、デキル。ハタケ』


「畑を作れるのか」


『ツクレル。コントローラー、ウミ』


「コントローラーを海に向かって振るう?」


『ピピー』


 肯定が返ってきた。

 もう慣れたもので、どの『ピピー』がどういう意味なのか大体分かるぞ。


『どうするんだい、アマタ?』


『うん? 何かするの?』


 顔を洗ってさっぱりしたラティファもやって来た。

 俺は彼らを連れて、海辺まで歩くのである。


「アマチャー! ミュンモー」


「一緒にやる?」


「チャ!」


 ということで、俺はミュンを片手に抱きかかえ、一緒にコントローラーを握る。

 振るのはミュンに合わせながら……。


「地面、盛り上がれ!」


「レー!」


 すると、ゴゴゴゴゴッと音を立て、水底にあった砂場が盛り上がってきた。

 それも尋常な広さじゃない。

 下手をすると、俺たちがいるこの島と同じくらいの広さがある、海藻が生えてる地面が誕生したのだ。


「キャーッ!」


 ミュン大喜び。

 カニも、ピョイーとか声を出しながらミュンのポーズを真似ている。


『すっご……!? っていうか、もうこれって魔法だよね……!?』


「二人の船が動きを止められただろ? この島の範囲にいる限り、セントローンの支配下にあるんだ。だから、島と呼べる範囲は想像しているよりもずっと広いんだと思ったんだよ」


 呆然とするラティファに説明してやる。


『し、しかし、海の底から上がってきたわけだから、土には塩が多量に含まれているのでは……』


「塩を弾き出せー」


「レー!」


 俺はコントローラーを振るう。

 ミュンと二人でこれをやると、なんだか体力の消費が物凄く少なくなるぞ。

 ミュンも元気なままだ。

 これは新しい発見だな。二人一緒にアクションするのが一番効率がいいのだ。


 新しく生まれた大地が、ぶるぶるぶるっと震えた。

 きらきら光るものが、たくさん地面から吐き出される。

 それはみるみる内に増えてきて、気が付くと、ザラザラと地面を海に向かって転げ落ちていく。


「これで畑の準備は完了だな! 次は種まきだ!」


 俺が宣言すると、ミュンが種を握りしめ、高らかに吠えるのだった。


「タネタネー!」

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