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無人島生活九日目 種をゲットする

『ああ、これはどうやら、僕らは森のなかに入れないらしい』


 アフサンが茂みに足を突っ込もうとして、弾き出されていた。

 靴先に、まるで壁のように絡まった蔦がぶつかり、一歩も先に進ませてもらえないようだ。


『僕らはあくまで、アマタが招いてくれた客人で、砂浜にいることしか出来ないみたいだ』


「そうか。そういや、セントローンも、俺をミュンの代理人として任命したみたいなこと言ってたもんな」


「ンー?」


 ミュンが名前を呼ばれて、俺を見上げた。


「いやな。俺とミュンしか、森に入れないなーって」


「モリー? ミュンネー、レ、ケルノー」


「おー、そうかそうか」


 多分、ミュンは一人で入れるよって言ってるんだろう。

 最近、ミュンの言葉がわかりやすくなってきたなあ。

 だが、あくまで日本語基準なので、ラティファとアフサンには分かるまい。

 しばらくはズーガーの翻訳が頼りだな。


「アマチャモー?」


「おう、俺も行くぞ。一緒にセントローンところに行こう! ってことで、種をもらってくる。そろそろ遅い時間だし、俺たちはこれで夕飯食って寝る。じゃあな」


『ええ、おやすみなさい、二人とも』


『明日から畑作り開始だね。楽しみにしてるよ』


 新たな島の仲間となった二人を後に、俺とミュンとズーガーは、森の中に入っていった。

 改めて気付くが、森の中はもう夕方だっていうのに、とても明るい。

 木々が葉を避けて、眩しくない程度に光を降らせてくれているんだ。

 夜になっても、満点の星空を望むことができる。


 アフサンが、この島の土や砂はナノマシンで出来ていると行っていたが、木々もそうなのかもしれない。

 俺たちは、島に守られてたんだなあ。


『ピピー』


 ズーガーの目が光、ライトになる。

 もう、日がすっかり暮れてしまう時間帯だ。

 ズーガーの光を頼りに、ミュンと手をつないで森を歩くのである。


「♪~」


 ミュンがふにゃふにゃと、歌にもなってない不思議な鼻歌を歌う。

 なんだか、聞いていると楽しくなってくる歌だ。


「ミュン、その歌自分で考えたの?」


「チャー! ネー、ラチハー」


「え? ラティファが教えてくれたの? もう覚えたのか、すごいなーミュンは」


「エヘヘ」


 ミュンが笑った。

 俺も笑う。


「よし、じゃあ俺にも教えてよ。言葉は分かんないから、鼻歌でいいや」


「アマチャモ! ネ!」


 二人でふにゃふにゃと、鼻歌を歌いながら歩く。

 心なしか、周りの木々も俺たちの鼻歌に合わせて揺れているような。

 やがて、島の地下に続く、倒木のもとに辿り着いた。

 倒木に見えて、地下への蓋なんだよな。


 コントローラーをかざすと、蓋はごろりと転がり、入り口が開いた。

 二人で気をつけながら下っていく。


 ミュンはまだ、ふにゃふにゃ歌っているので、地下の空間で歌声が反響してなんとも不思議な音に。

 彼女はごきげんで、握った俺の手をぶんぶん振った。

 教えてもらった歌が気に入ったんだろうなあ。

 いいことだ。


『ピピピー。シマ、シンニュウシャ』


 セントローンの部屋まで行くと、彼はそんな事を言った。


「そうだなあ。でも、森には入れないからいいんだろう?」


『イイ』


「それで、畑を作ろうと思うんだが、外で話してたの聞いてたか?」


『キイテタ。タネ、ツクッタ。ムギ? トカイウノ?』


 なんで疑問系なんだ。

 俺は、作りたい作物の話をズーガーにしておいたのだ。

 ズーガーはセントローンや、この島中にいるロボットと繋がっている。

 そんなわけで、ズーガーやロボットが見聞きしたことは、島のメインコンピューターらしき、このセントローンに伝わっているわけだ。


 にょろにょろと、蔦みたいなものが伸びてきた。

 セントローンのアームである。

 その先端に、種が幾つかくっついている。


「おお、サンキュー。これを撒けばいいんだな」


『ソダテル、マカセル』


「おう!」


「チャ?」


 俺が受け取ったものに、ミュンが興味を示した。


「これな、種なんだよ」


「タネー」


 俺の手のひらの上にある、ころころしたカプセルみたいなものを、ミュンがつつく。

 一つ摘んだと思ったら、あーん、と口に放り込んだ。


「あっ」


「ンー」


 ミュンは口の中で、種をコロコロすると、困った顔をした。


「ペー」


 舌に載せて外に出してくる。

 ミュンの舌から、俺は種を回収した。


「味しないだろー。これ種のままなんだから」


「ムー。タネ、ナーノ」


「そうそう、美味しくないの。ご飯は外で食べような」


「ン! ゴハン!」


 途端に、ミュンの機嫌が戻った。

 よし、それじゃあ一日の締めに、夕食をとって寝るとしよう。

 ああ、そうそう、お風呂にも入らなくちゃな。


「ピョイー」


 外に出ると、カニが俺の手の中の種をじっと見つめていた。

 ……こいつ鳥だから、種を食べちゃいそうだなあ。


「カニ、これは種だから、今は食べちゃだめだぞ」


「ピョイ」


「カニ! コー! ゴハン!」


 相変わらず無表情で、話を分かってるんだか分かってないんだかというカニ。

 ミュンはカニをひょいっと抱き上げると、トテトテと走っていく。


「ミュン、転ばないようになー! さてさて、何を食うかねえ……!」


 俺も二人を追いながら、夕食について頭を巡らせ始めるのだった。

 おっと、種は落とさないようにポケットに入れておかないとな。

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