無人島生活九日目 土壌を調べてみる
「カニー! キャハハハハ!」
「ピョイー」
『ああーっ、待ってミュンちゃーん! す、すっごいバイタリティ……!』
カニと共に、島を突っ走るミュン。
彼女のお世話役を引き受けたラティファが、ひいひい言いながら追いかけている。
ミュンは元気だからなあ。
俺も一日あの子に付き合うと、クッタクタになるのだ。
「ミュン、あんまり走り過ぎたら、お姉さん疲れちゃうからねー」
「マー!」
お元気な返事がかえってきた。
ああ見えて、気遣いができるミュンである。
きっと手加減してくれるだろう。
『いいかな、アマタ。この辺の土を調べてみたのだけど、これは見たことがない性質の土だ』
アフサンが手招きしている。
俺がやって来ると、彼は鼻息も荒く告げた。
『砂浜の砂からして、組成が変わっている。調べてみたら、砂は一つ一つが休眠中のナノマシンなのではないかと言う結論に達した。電気的な刺激を与えたら、砂が動き出したんだ』
「へえ!」
これはびっくり。
普通じゃない島だと思っていたが、本当に全然普通じゃなかったのだ。
『土も同様だ。目に見えないほど小さなマシンが、土の形に擬態している。だから、食べかすの類は分解されてしまうし、砂をトイレに使えば清潔に処理できるというわけだ』
「なるほどなあ。だから、においが全然しなくなったんだな」
言われ見ると納得することばかりだ。
ここは、島全体がズーガーの仲間みたいなもので、恐らくは何もかもが人工的に作られた存在だったのだ。
『……と、ここまでは調べられたんだが、あとはお手上げだ。僕は、ナノマシンを使ってどう畑を作るか、という学問は専門外なんだ。というか、そんな事を考えている学者がどれだけいるかってレベルだけど』
お手上げとは言うものの、新たな知見を得て満足そうなアフサン。
ここからは俺にバトンタッチだろう。
俺はコントローラーを手にした。
横にズーガーを伴う。
「ナノマシンって、いわゆる目に見えないくらい小さい機械ってことだろ? 道理で、コントローラーを使うと魔法みたいにこの島のものが動かせたわけだ。なら、畑を作るのも簡単だな!」
『ピピー』
ズーガーが頷いたようだ。
このカメラみたいなロボットが、アフサンの言葉を肯定したわけだ。
よーし、いっちょ畑を作ってやるぞー。
「この辺りでいいか。畑になれっ」
指示を口に出しながら、銀色の棒を振るう。
すると、わずかだが棒が振動したように思った。
今までも、俺が使っている時は、コントローラーは震えていたのかもな。
地面がわさわさと動き出した。
草や木が移動していき、畑として使えそうなスペースが生まれてくる。
島の大きさには限界があるから、ちょっと見渡す程度の広さが限界かな。
『おお……。あっという間じゃないか! これ、本当にとんでもないなあ』
アフサンが目を丸くする。
慣れている俺からしても、コントローラーの作用はまるで魔法みたいだもんなあ。
「アマチャー! レ? ニー?」
「何してるのって? 畑を作るんだよ」
「アタケー?」
「そ、畑。あれ? ラティファは?」
「レー! カニ!」
ミュンが指差す方向で、ポヨポヨしたカニに顔を埋もれさせつつ、力尽きて倒れた彼女が見えた。
ミュンに付き合って疲れ切ってしまったか。
「よーし、じゃあ一緒に畑をつくろうか!」
「チャー!」
手を差し出すと、ミュンが飛び込んできた。
彼女を抱っこしつつ、コントローラーで畑を細かく調整していく。
「色々作ってみたいから、いくつかに畑の形を整えて……」
「アマチャアマチャ! ネ、アタケ! コーッテ、コー、コー!」
おっ、ミュンにいい考えがあるみたいだ。
空に、元気よくお星様の形を書く。
「お星様の形の畑か。いいね!」
「チャ!」
「一緒にコントローラーを振ってみようか」
「ンー!」
ミュンが手を伸ばし、俺と一緒に銀色の棒を握った。
二人で一緒に、せーのでコントローラーを振るう。
「星型の畑!」
「ホシ、アタケー!」
すると、もりもりと土が動き始める。
ちょうど、五芒星の形に、六ケ所に区分けされた畑が生まれる。
『す、凄い!! こんな造成をしようとしたら、普通なら何日掛かることか……! それがたった数分で!』
「ナノマシンって言われて、なるほどだよなって思ったよ。ここに来てから、ずっとこんな感じでやってるから。で、植える種とかどうしよう?」
『種か……。それじゃあ、本土に戻って持ってこないとなあ……』
『ピピー』
アフサンの言葉を翻訳した後、ズーガーが俺のズボンの裾を引っ張った。
「お、どうしたんだズーガー」
『タネ』
「種あるのか」
『ピピー』
あるっぽい。
そうか! 島のメインコンピューターたるセントローンなら、カニと同じように、種だって作り出せるかもしれないよな。
それじゃあ早速もらいに行かないと。
ああいや、まずはどんな作物を育てるのかを決めないといけないな。
「ミュンは、どんなものが食べたいかな?」
「ンー?」
俺の腕の中で、ミュンが首を傾げた。
じーっと彼女を見てて、思いつく。
「麦にしよう。応用が利きそうだしな!」
そうなれば、思い立ったが吉日なんである。




