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無人島生活九日目 えっ、ここって領海だったの

『ひええ。まさか、丸太船で私たちの船を引っ張るなんて……』


 褐色の肌の女性は、とても驚いたようで、メガネがずれてしまっていた。


「いや、まあ、凄い丸太船なんでな」


 俺はそう言うが、久しぶりに見た年頃の女性である。

 なんだかドキドキとする。


「チャ!」


「あいた!」


 ミュンが俺の太ももをぺちぺち叩いた。

 なんだなんだ。


「チャーモ! マー!」


「えっ、島にこの人たちを上げたのが気に入らないのか?」


「ンー!」


 違うっぽい。

 なんだろう。


『きっと、お父さんを取られちゃうと思って嫉妬してるね? 大丈夫よ、あなた。私はあなたのお父さんを取りませんからねー』


「ンー?」


 おっ、この女性の言葉がミュンに響いたようだ。

 イヤイヤする感じじゃなくなった。

 しかし、お父さんかあ。

 うん、ちょっと嬉しいな。


「お父さんって言われちゃったなあ。いやあー」


「オトサン?」


「そうそう、お父さんって」


「ンー……アマチャ!」


 いつもの呼び方に戻って、俺はちょっとガクッと来た。

 まあいいか。

 お父さんって、日本語だしな。


「えーと、それでみなさんは何しに来たんですか」


『はい、我々は、カリーフ共和国の国境警備隊です。この島はダムール島と言って、カリーフ共和国の領海に位置しています。ただ、どうやってもずっと、この島には上陸ができなかったんです。それが先日、海賊の一団を捕縛しまして、彼らがこの島に上陸したと証言したものでこうして。それに、島には人がいたと』


「領海……? ええと、つまりここは外国だったってことかい?」


 俺の背筋を冷や汗が伝った。


「その……パスポートとか全部流されちゃったんだけど。あ、俺は篤城数多。日本人なんだけど」


「ミュン!」


 俺が名乗ったので、真似してミュンも元気に名乗った。

 ズーガーが『ピピー』と発言し、カニが「ピョイー」と鳴く。


『はい、ありがとうございます。私は国境警備隊のラティファです。よろしくお願いしますね、アマタさん』


『生物学者のアフサンだ。よろしく』


 後ろから別の男性もやって来た。

 俺は、ラティファさんとアフサンさんと握手する事になる。

 あれ? パスポートが無いって告げたんだが、友好的だ。


『カリーフ共和国の見解では、アマタさん。ダムール島に人がいるならば、それは我が国の住人である、ということになっています。ですから、アマタさんはカリーフ共和国の国民ということになりますね』


「え? え?」


 俺が理解できないでいると、ラティファさんは俺に顔を寄せてきた。


『一応撮影しているから、話を合わせて。国側では、この島が領土だっていうのに上陸できなくて困ってたの。そこでここを何とかできるあなたと繋がりを持ちたいのよ。悪いようにはしないから!』


「あ、ああ。そうだよー。俺はカリーフの国民だよ」


 俺が棒読みで言うと、ラティファさんは満足そうに頷いた。

 

『という事で、仮決定なのですが、ダムール島に共和国の大使館を作りたいんです。……自国なのに大使館とか言っちゃだめですよ。だめだからね』


「は、はあ。つまり……?」


『私たちも、こちらにお邪魔することを許してもらえませんか?』


「あー、そういう……!」


 なんとなくピンと来た。

 この島、不思議なオーパーツまみれで、それが守っていたから島の周りを所有する国も近づけなかったんだ。

 きっと、この島がカリーフ共和国じゃなくなると、国の領海がごっそり減ってしまうんだろう。

 そこで、俺を懐柔にやって来たと。


『もちろん、ただでとは言いません! 娘さん……ミュンさんの教育や、生活に必要なものを用立てします。……まあ、日本と比べると大したことないけどね』


 毎回小声で本音を付け加えるラティファさん。

 本音で凄く疲れた顔をするので気の毒になってきた。


「ま、まあいいんじゃないかな。俺は構わないですよ。余計な事をしてこないなら」


『良かった! では、そういうことでお願いします! 以上、中継でした!』


 ラティファさんがそう言うと、アフサンさんが船に走っていって、カメラらしきもののスイッチを切った。


『ふいーっ……。た、助かった……。改めて感謝するわ、アマタさん。ということで、私たちも上からの命令で逆らえないの。なんとか邪魔をしないようにするから、しばらく置いておいてね』


「ああ、分かった。構わないが……」


「アマチャ、アマチャ」


「ん? どうした、ミュン」


 ずーっと大人しく話を聞いていたミュンが、俺の服の裾を引っ張った。


「レ、ゴハン! ネー」


「ああ、このお姉さんがへたってるの、お腹が減ったんだと思ったのか」


「ン!」


 ミュンは大きく頷くと、カニを引き連れて森の中へ走って行ってしまった。

 少しすると、家の周りに生えている柑橘類をたくさん抱えてくる。


「レ!」


『えっ、くれるの?』


「ン!」


 ミュンが自ら皮を剥いてくれる。

 彼女の指から、ラティファさんは直接柑橘類を食べた。


『ん~! し、染みるわー! そうか、私お腹へってたんだわ……!』


 本当にお腹が減っていたようだ。

 ミュンの見立ても大したものだな!

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