無人島生活九日目 丸太船を作る
「よーし、では助けに行くかー」
「オー!」
俺の宣言に、ミュンが元気よく同意した。
用意するのは、コントローラーとズーガー、それと、ロボットが調達してきた謎の工作機器である。
さあ、工作開始だ!
「ミュン、丸太を探すんだ」
「チャ!」
「ピョイー」
ミュンが了解っ、というポーズをする。
カニが真似して不思議な体勢になった。
一人と一話が、トテテテッと茂みに走っていくので、俺はその間に船を観察だ。
ズーガーを使って、望遠。
どーれどれ……。
「女の人が一人と、男の人が二人か。ちゃんとした格好してるなあ。船も、海賊が乗ってた漁船とは違うし……あれはもしや、この島がある海域を所有する国家なのでは」
だとすると、俺は不法入国者に……?
うーむ……!!
助けるのやめようかな、まで一瞬考えてしまった。
だが、俺は基本的に善人である。
なんか、彼らを見捨てるのは気分が良くない。
後のことは後で考えよう。
今は助ける方向で動くっと。
「アマチャー!」
ミュンの声が聞こえた。
丸太を発見したな。
俺は声がする方向へ急いだ。
茂みを掻き分けてみると、ミュンが立派な丸太の前で仁王立ちしている。
バンバンと丸太を叩き、得意そうに胸をそらすミュン。
「ネー!」
「おおー! こりゃすっごい丸太だ! 偉いぞミュン!」
ご褒美のなでなでをする。
ミュンはむふーっと鼻息を荒くした。自尊心がとっても満たされたらしい。
「よし、じゃあ作業開始だ!」
「チャ!」
三分間クッキングじゃないが、島の遺跡から手に入る謎の工作機械で、ばりばり加工をやっていくぞ。
まずは丸太を、工作機械でくり抜く。
バリバリバリーッとくり抜く。
うわーっ、めっちゃ早い。
三分くらいで、丸太がくり抜かれてしまった。
これ、摩擦とか色々どうなってんの。
あっという間に、木くずが山盛りになってしまった。
「アマチャ、レー?」
「乗りたいの?」
「ン!」
「よーし、乗っていいぞ!」
「キャー!」
ミュンが歓声を上げた。
丸太の中に乗り込んでいくミュン。
俺はこれに向かって、コントローラーを振った。
すると、丸太の下の部分に足みたいなのが生えてきて、トコトコと歩き始める。
「ピョピョピョ」
カニが、丸太船と並走する。
この羽毛玉な生き物、何気に本気を出すと速いんだよな。
「ピョピョ、ピョイー!」
ホップ、ステップ、ジャーンプと来た。
カニがぼよーんと飛び上がり、ミュンの懐に飛び込んだ。
「よし、俺もだ」
ミュンの後ろに乗り込んだ。
このまま、丸太船を進ませる。
茂みを抜けて、どんどん走る丸太船。
砂浜を駆け抜けて海にドーンっと突っ込んだ。
「ワー! レ! クーノ! アマチャ、レー?」
「これ? これはね、お船って言うんだぞ」
「オフネ!!」
ミュンが船をペチペチと叩いた。
丸太船が海を駆ける。
なんていうか、昔映像でみたモーターボートみたいな速度だ。
助けに行く先の船の人たちが、目を丸くしているのが分かる。
「やあ、助けに来たぞ」
俺が手を振ると、甲板に出ていた男女は呆気にとられていたようだが、やっと我に返ったようだ。
「~~~~~~!」
女の人が口を開いたんだが、何を言っているのかよく分からない。
現地語だなこれ。
「ズーガー、翻訳できる?」
『ピピー』
お、できるっぽい。
この一週間とちょっとで、俺の言葉をかなりマスターしたズーガーだ。
……待てよ。現地の言葉はマスターしてないんじゃ?
一瞬心配になったが、それは杞憂だったようだ。
『そ、それって何!? どうして丸太が、凄い速さで走ってるの!?』
ズーガーを通して聞こえたのは、女の人の声だった。
褐色の肌をしていて、メガネを掛けた知的な感じの女性だ。
年齢は二十代後半くらいだろうか?
外人の年は分からないな。
いや、この国だと俺が外人か。
「話すと複雑かつ、俺でもよく分かってない事情があるんだが、とにかく助けに来た。見た感じ……」
俺は、外国の船の下を見た。
海藻が大きく伸びてきていて、それが船に絡みついている。
これは動けないなあ。
『ねえ、海藻をどうにかできるの? これって、銃で撃っても全然効かないの! もちろん、刃物だって通らなかったわ』
「これは特別なんだよ。ちょっと待ってな。ミュン、膝の上からちょっとどいてね」
「チャ!」
良いお返事をすると、ミュンが立ち上がった。
俺は丸太船から身を乗り出して、コントローラーを振る。
「海藻、ほどけろー」
我ながら間抜けな姿だなあ、と思うが、これで、如実に効果が現れる。
海藻がするするっと解けて、あっという間に船が解放されてしまったのだ。
船の上にいた男の人たちが、わーっと歓声を上げた。
なんだか、俺を指さして魔法使いだ、なんて言っている。
『すごい……! ありがとう! ええと……詳しい話をしたいんだけれど、島に寄ってもいいのかしら?』
女の人はそう聞いてきた。
俺としては、ここは島の主であるミュンにお伺いを立てないとな。
「ミュン、いいかなー?」
「ン! チャ!」
ミュンのお許しが出た。俺は船を先導して島に戻るのだった。




