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無人島生活九日目 なんか来た

「ピョイー」


 もっこもこしたものが顔面の上に乗っかってきた。

 うおっ、苦しっ!


「カニー!」


 すべすべしたものが上に乗っかってきた。

 重い! おもォい!!


「ぬわーっ!?」


 俺は跳ね起きた。


「ピョイー」


「キャー!」


 ミュンとカニがころころと転がっていった。

 すぐに起き上がって、こっちに向かってくる。


「アマチャ! レー、モーモー!」


「もう一回やって欲しいの?」


「チャ!」


 仕方ないのでまた横たわると、ミュンが上に乗っかってきた。

 重い!

 子どもとは言え、重いぞー!


「うおー!!」


「キャー!」


 ころころとミュンが転がっていく。

 部屋の隅にカニがいて、ミュンが当たってぼよーんっと弾んだ。

 うわーっ、ものすげえ弾力だ!

 俺はこの後、三回くらいミュンに付き合って、朝っぱらからくたくたになるのであった。




 朝飯タイム。

 むっしゃむっしゃと、ミュンが青バナナを食べる。

 俺も並んで、貝をほじくっては実を皿の上に並べていく。

 これをミュンが摘んで食べるのだ。


「アマチャ、アイ!」


「お、バナナくれるのかー」


 ミュンが差し出してくれたバナナを、俺もパクっと一口。


「うん、美味いなー」


「ネ!」


 にこにこっとミュンが笑った。

 俺もほっこり。

 ざざーん、と打ち寄せる波を見ながら、食べさせ合いっこになる。

 そろそろお腹がくちくなって来た頃。


「ン?」


 ミュンが水平線を見て、首を傾げた。


「どうしたー?」


「レー」


 何か見つけたらしい。

 ミュンは立ち上がり、背伸びして遠くを見ようとする。


「ンー」


 背伸びしてもちっちゃいからなあ。

 今度はミュン、カニを地面に置いて、上にあがる。


「ピョイー」


「うわー、ミュン、カニがつぶれる、つぶれる!」


「キャ!」


 だが、カニの弾力はヤシガニを弾き飛ばすほどのレベルである。

 ミュンはぼよーんと弾かれて転げた。


「ピョイー」


「カニ、お前凄いなあ……。鳥みたいに見えるけど、絶対違う何かだろ。何と何を混ぜたらこうなるんだ……」


「アマチャー!」


 俺がカニに感心していると、ミュンが俺の袖を引く。


「お、そうか、俺に抱っこして欲しいか」


「ン!」


「だけどな、ミュン。高いところから見るなら、こういうのもあるぞー」


 俺はミュンの後ろから、股の間に頭をくぐらせると、そのまま立ち上がった。


「キャー!」


 一気に、ミュンの視界が高くなる。

 肩車なのだ!


「どうだ。ミュン、見えるかー?」


「ン! レー!」


 びしっとミュンが、遠くを指差す。

 指の方向を見ると……ほうほう、あれは……船だな。

 一昨日来た海賊船とは、また違うようだ。

 遠すぎてよく見えないな。


「ズーガー、いるか?」


 俺がロボットを呼ぶと、カメラに似た姿の彼は、茂みからトコトコ歩いてきた。


『ピピー』


「お、いたいた。ズーガー、またちょっと望遠モードになってもらえるか? 遠すぎて見えなくて」


『ボウエン、ピー。フネ、ピピー』


 船が来ているところまで把握してるか。

 ズーガーは俺の足元から駆け上がってくると、『ピピー!』と何やら気合を入れた声を発した。

 俺の肩から、空中にジャンプ!

 そして、足を伸ばして俺のこめかみと頬をキャッチした。

 おお! 顔に装着するタイプの望遠ロボに!

 ミュンを肩車して、俺の手がふさがっているために色々考えたようだ。


「どーれ……。あ、なんか甲板に人がいるな。こっちに手を振ってる……? もう少し望遠」


『ピピー』


「……えっと、多分、女の人……? なんか友好的な感じがするが……」


「アマチャ! ミュンモ!」


 見てる途中だって言うのに、ミュンがズーガーをむしり取った。


『ピガー!』


「あー、ミュン、そんな乱暴に扱ったらズーガーが壊れ……ああ、こいつ頑丈だからそんなに簡単には壊れないか」


『ピガー!』


「チャー!」


 満足げに、ミュンが雄叫びを上げた。

 顔にズーガーをくっつけているが……それ、裏表。

 全然見えてないと思うんだが、あれでミュンはなんだか満足している。


「しかし……また船かあ。今度はいきなり襲ってくるみたいなことは無さそうだけど。ヤシガニに声をかけとくかなあ。……でも、なんであの船、近づいて来ないんだ?」


『ピピー』


「おっ、ズーガー、何か知ってるか?」


『シッテル。チカヅク、ナイ! フネ、チカヅク、ナイ!』


 どうやら、ズーガーというか、この島が余所者を寄せ付けないように何かしているらしい。

 それじゃあもしかして、あの船は行くも戻るも出来なくて困ってたりするのかな?

 助けを求める意味で手を振ってるんだったりして。


「どうかなあ。まあ、急ぐことはないか」


 すっかり、スローなペースが身に付いてしまった俺なのであった。


「ピョッ、ピョイ、ピョイー」


 そんな俺の脛に、ズーガーの真似をしたいらしいカニが体当たりしては跳ね返されている。

 こいつ、飛んだり跳ねたりは苦手なのかな……。

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