無人島生活八日目 鳥、ヤシガニと対峙する
「ピョイー」
あっ、目を離したら……!
勝手に貝を食べ終わったカニは、適当にその辺をほっつき歩いていたらしい。
カニはどうやら、飛べない鳥のようで、その分歩くのが得意である。
卵から孵ったばかりだというのに、どんどこ歩く。
「カニー、カニー!」
まだ食事途中のミュンが、離れてトコトコ歩いて行くカニを呼ぶ。
「ピョイー」
カニが振り返った。
あいつ、キーウィみたいな……カカポみたいな。
だけど、俺が知るどんな陸上の鳥よりも、もっこもこでふわっふわなんだよなあ。
しかも凄まじい弾力。
「カニー! レー! ミュンモー! ッテーテ!」
ちょっとミュンの言いたいことが分かってきたぞ。
ご飯終わるまで待っててって言ってるんだな。
彼女は慌てて、ご飯を口に詰め込んでいる。
「ミュン、ちゃんと噛んで食べないとだめだぞー」
「マ!」
口中を昼食の汁でべたべたにしているので、拭いてやる。
「ムームムー」
よしよし、やっぱり、俺の教育が行き届いているのか、ミュンは早食いするつもりでもしっかりともぐもぐしている。
顔を拭いてやる下で、もぐもぐもぐもぐと咀嚼しているのを確認して、俺は満足して頷いた。
その間に、またカニは違うところへトコトコと歩いて行く。
あいつ、本当に活発だなあ。
向かって行ったのは、ヤシの木の下。
ヤシの下と言えば……。
「ピョイー」
カニが何か、ヤシの下にいるものを嘴でつっついた。
「もがー!?」
砂がバスバスーッと吹き上がり、そこからヤシガニが飛び出してくる。
どうやら砂の中で昼寝していたヤシガニをつっついたらしい。
これは危ない。
「カニ! 危ないから戻ってこい!」
「モムアー!」
「ミュンもご飯口に入れたまま叫ばないの!」
さて、俺たちの目の前で、謎の鳥であるカニは、ヤシガニと対峙していた。
ヤシガニは、見覚えのない生き物を警戒しているようだ。
ハサミをシャキーン、シャキーンと動かしながら威嚇している。
これを見て、カニは首を傾げた。
「ピョイー」
絶対あいつ、何も分かってないな。
ヤシガニがハサミの先っちょで、カニをペチッと叩く。
ボヨーンっと跳ね返された。
「もが!?」
未知の感触に、ヤシガニが驚愕した。
まさかあいつがびっくりするとはなあ……。
今度は、恐る恐るハサミで挟んでいる。
あまりにも、フッカフカのもふもふで、しかもポヨポヨしているからハサミが通らないようだ。
カニの羽毛が、ボヨンボヨンと跳ねるばかりである。
「意外なところで、ヤシガニが通じないやつが出てきたなあ……」
「ヤチガニ!」
ご飯が終わったミュン、カニとヤシガニがわいわいと騒ぐところへ混じりに行った。
俺は後片付けをしながら、幼女と鳥とヤシガニのやり取りを見て……。
『ピガー!!』
ミュンがズーガーを抱っこして行ったな。
あのロボット、ヤシガニが怖くて、カニにも追いかけられて、ミュンにおもちゃにされて……。
いやあ、大変だなあ。
「ミュン、あんまり無茶するなよー」
「アーイ!」
ミュンはいいお返事をして、二匹の動物と遊びだした。
「ピョイー」
「もがもが」
「マ? チャー!」
『ピピー』
「うわあ、賑やかになったなあ……」
後片付けして戻ってくると、みんな言葉が通じないどうしでわいわいと喋っている。
絶対言葉が通じてないと思うんだが、通じて無くてもなんとなく分かるものなのかな。
だが、ミュンは遊び相手ができた訳で、これはこれで素晴らしい。
俺の手が空くのもいいが、やっぱり子どもには友達が必要だしな!
「よーし、遊べ遊べ、子どもよ。俺はちょっと、昼寝する……ふああ」
昨日の疲れが抜けていない。
ということで、俺はゆったり休むことにしたのだった。




