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無人島生活八日目 謎の卵、孵る

 俺がぐうぐうと寝ていると、ぺちぺち顔を叩かれて起こされた。


「アーマーチャー! チャー!!」


 ミュンが何か、訴えかけてきている。

 昨日の今日なので、ゆっくり寝かせて欲しいんだが。


「ハヨー! アマチャ、ハヨー! レー! アマチャ!」


 ぺちぺちが激しくなる。

 これはもう寝かせてはもらえなさそうだぞ。


「う……ううーん。なんだよミュン。俺はもうくたくたでなあ」


「アマチャー!!」


 起き上がると、ミュンが俺の膝に飛び乗ってきた。

 なんだなんだ!


「レ! タマゴー!」


「えっ、卵!?」


 急に、意味がわかる言葉を発するのでびっくりした。

 そう言えば、ミュンはこの間から、セントーンにもらった卵をおくるみに入れ、大事に抱っこし続けている。

 それに異変があったんだろうか。

 ミュンに見せてもらうと、おくるみの中の卵に、ひびが入っていた。


「アマチャー」


 ミュンが不安そうな顔をする。

 あっ、自分が割っちゃったんじゃないかと思ったのか。

 でも、これは多分違う。

 だって、ひびの周りの殻が外に向かってめくれて来ている。

 今、ひび割れが広がり、ちょっと動いた。


「ミュン、これ、卵が孵るんだぞ! 何か生まれる!」


「ンー?」


 おっと、興奮して難しい言葉を使ってしまった。


「あのな、卵、割れる。それで、出てくるんだ」


 ジェスチャーを交えて説明すると、理解したようだ。

 不安そうだった彼女の顔が、ぱあっと明るくなる。


「レ!? タマゴ! レー!」


「うんうん、そうだ! 今日生まれてくるぞ!」


「チャー!」


 大興奮して、ミュンが飛び跳ねる。


「あっ、危ない危ない! 跳ねたら卵落ちちゃう!」


 俺は慌てて、彼女をひょいっと抱き上げるのだった。




 とりあえず、おくるみに入れたままの状態は継続。

 卵を抱っこしたミュンは、そろーっと、そろーっと慎重に歩いている。

 もう中身が生まれようとしてるんだから、そんなに恐る恐る動かなくていいのに。


「テー! タマゴ、レー」


 タマゴ割れてるから、と言いたいみたいだ。


「生まれてくるんだから大丈夫だよ。ほら、顔を洗いに行くぞ。それからご飯な」


「ゴハン!」


 朝から元気なミュンは、朝ごはんだってペロッと平らげる食いしん坊だ。

 ということで、一気にテンションが上り、彼女は俺を追い越して温泉に駆けていった。

 顔を洗い、お野菜と果物、豆の朝食を済ませ、さて、卵と向き合うぞ。

 ミュンと俺とで、砂浜で小山を作り、頂上を凹ませて卵を置いた。

 このまま、じーっと観察の体勢である。


 多少待つかな、と思い、ミュンがお昼寝できるように地面に枯れ草を敷き詰めたりしている俺。

 が、意外にも、誕生の時はすぐやって来た。


「アマチャー!!」


 ミュンの大声が聞こえた。

 これが何を意味するか、分からないはずがない。

 俺は抱えていた草を放り出して走った。

 砂浜に寝そべったミュンが、微動だにせず、それを見つめている。

 今まさに、卵から中身にいる生き物が孵ろうとしているのだ。


 ぶるぶると卵が震え、ひびがパキパキと音を立てて広がっていく。

 中から、何か小さな鳴き声が聞こえた。


「チャー……」


 ミュンが手を伸ばした。

 震える卵をつつこうとしたらしい。

 すると、彼女が触るよりも早く、卵の横っ腹が割れた。そこから、緑色の毛みたいなものがぽてっと外に投げ出される。


「ピャー!」


 ミュンがびっくりした。

 俺だってびっくりだ。

 鮮やかな緑色の毛は、濡れてしっとり。

 だが、毛の付け根がぶるぶる震えている。

 次に、逆側の卵が割れた。

 そこからは、二本の足が出てくる。

 これは……鳥の足だ。


 それは最後に、周りの殻をばりばりと割りながら姿を表した。

 緑の体に、真っ黄色の頭をした、ひよこみたいな鳥だ。

 頭には卵の殻が乗ったままだ。


「ピョイー」


 へんな鳴き声を出した。

 そいつは、きょろきょろ周囲を見回すと、ミュンに目を留めた。

 じーっと見ている。

 これはあれかな。

 刷り込みというやつ。


 案の定、その鳥はミュンに向かってトコトコと歩いてくる。


「チャ!」


「そうだなー。ミュンのこと、ママだと思ったんだな」


「ママ?」


「そう、ママ」


「ミュン、ママ! デー!」


 ミュンが手を広げ、鳥を迎え入れた。

 鳥は幼女の胸に飛び込むと、抱きかかえられて丸くなる。

 

「ピョイー」


「なんなんだろうなーこれ」


「ンー」


 腕の中で鳴く鳥を見て、ミュンが首を傾げた。

 何か考えている。


「カニ!」


「えっ」


「レ、カニ!」


 名前をつけたらしい。

 でも、カニって。


「カニー」


「ピョイー」


 カニと呼ばれて、鳥は返事をした。

 ああ、決まってしまった。

 そんなわけで、無人島に新しい仲間が加わった。謎の鳥、カニ。

 カニという名前だが、鳥である。

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