無人島生活七日目 二人と一匹、作戦会議
「作戦会議!」
「マー!」
「もがー」
ヤシの木の影で、二人と一匹でとりあえず飯を食ったあと、作戦会議を行うのである。
このヤシガニ、本当にこちらの意図を理解して和解できたのかどうか怪しいのだが……。
「多分海賊だと思うんだが、そういうのが来る」
船の絵を、砂に描いた。
昨夜見たあれは、多分それなりに大きい船だろう。
手漕ぎなんかではなく、エンジンがついていて動いている。
船の上に、人間を何人か書き足した。
「オー!」
「もが」
大きな船、というニュアンスは伝わっただろうか?
「チャー! ミュンモ!」
「うわー! ミュン、毛を生やしてはいけない! 船に毛は無いから!」
「もがもが」
「うおー! ヤシガニが絵の上で日向ぼっこを!!」
大変な有様になっていく。
ひとまず、俺の力では収集できそうなところから手を出していくのである。
まず、ミュンを抱っこして。
「オ?」
ヤシガニにウニの欠片を放る。
「もがー」
ウニの殻をもっしゃもっしゃ食べ始めた。
これで静かになった。
……うん、意思の疎通は無理だ。
これは、ヤシガニの習性を使って上手いこと誘導しないといけないかもしれない。
「なあヤシガニ。お前、普段はどこにいるんだ?」
「もが」
「ほら、あっちの磯にいたりさ、水の中にいたりしただろ。どこにいるか分からないと連絡取れないからさ」
「もがもが」
「あっ、だめだ意思の疎通ができない」
俺は諦めた。
だが、ミュンは全く諦めてなんかいなかったのだ。
「チャ!」
俺の腕から抜け出し、砂の上に着地する。
「チャーモ! マ! ヤチガニ!」
「もが」
「チャ! マーマー! ミュン! レ、アマチャ!」
お、自己紹介してる?
ヤシガニがミュンを見て、次に俺を見た。
「ヤチガニ」
「もが」
うーん……。
ミュンが話している時のみ、コミニュケーションが取れているように見える……。
「もがもがもが」
「ン!」
おお、ミュンが頷いてる。
何言ってるんだこのヤシガニ。
「ミュン、分かるのか?」
「ンー?」
このミュンの表情を見てると、分かってない気がするんだよなあ。
だが、現状、ヤシガニに意思を伝えるためには、ミュンの不思議なコミニュケーション能力の一点突破しかない。
俺はと言えば……。
二人のおやつになるような物を獲りに行き、会話を円滑にする手伝いをするだけである。
青バナナとキノコを採取してきた。
ヤシガニは植物も食べるかな……?
「もがもが」
食べた。
このヤシガニ、好き嫌いは無いらしい。
「ンマー」
ミュンも食べた。
まあ、ミュンは苦いものとか辛いもの以外はなんでも食べるもんな。
おやつを食べながら、二人の会議が続く。
俺には、二人が何を言っているのがさっぱり分からない。
だが、ミュンを放っておくわけにも行かないので、こうして近くで待機しているのである。
「アマチャアマチャ」
「なんだい」
「レ、テー? レ、ククーッテ」
棒を手にして、砂の上でもじゃもじゃと何か書く。
ああ、船を書いてほしいのか。
「船だな。これこれ、こんな感じの船……だったように思う」
「もが」
今度はヤシガニ、大人しく俺が書いた絵を見ている。
しばらく無言で、じーっと絵を見ていた。
絵を認識する知能があるのかね、こいつは。
ちなみに、ズーガーはさっきからずーっと物陰に隠れている。
間近にしたヤシガニが怖いらしい。
「もがー」
おっ、ヤシガニがハサミを振り上げ、何やらジェスチャーをしている。
「もが」
「あっ、俺の書いた絵が真っ二つに! これはもしや……このハサミで海賊を真っ二つというジェスチャーだろうか」
「もが」
「いや、さっぱり分からん……」
とりあえずはそういう事だと理解しておこう。
「チャ! ヤチガニ!」
ミュンがヤシガニのハサミを握った。
あ、危ない!
だが、俺が慌てて引き剥がそうとする前に、ヤシガニはごく穏やかな動きでハサミを上下させる。
それはまるで、幼女とヤシガニが握手しているようだった。
和解はなったのだ……。
なったのか……?
ヤシガニは俺たちに背を向けると、そのままヤシの木の下に去っていった。
あ、いや、また立ち止まり、木陰でごろんと横になった。
そこに住んでるの……?
「ン!」
ミュンは満足げである。
確かに、今回のMVPは彼女で間違いない。
何を話していたのか、どういう条件でヤシガニと和解できたのかさっぱり分からないが、まあ良い関係を築けたようだ。
これは、俺も自分でできることを何か考えておかねばならないぞ。
今日の開拓計画は中止だ。
コントローラーを使って、海賊撃退用の罠をこしらえたりできないもんだろうか。
「アマチャ?」
「うん、ちょっと計画を練る。ミュン、近くで遊んでて」
「チャ!」
『ピピー』
ヤシガニがいなくなったと見て、ズーガーが姿を現す。
頭の上には、枯れ葉のボールを載せているではないか。
「チャー!」
『ピー!』
ミュンとズーガーのサッカーみたいな遊びが始まった。
その横で、俺は海賊対策を練るのであった。
ヤシの木……椰子の実を投石機みたい投げる装置……むむむ……!




