無人島生活七日目 また地下に行く
二日連続ともなれば慣れたもので、ミュンがもりもりと率先して下っていく。
ちょっとくらいの段差もなんのその。
子どもの適応力というのは凄いのだ。
「アマチャー!」
「おう! 見てるよー!」
何段か降りる度に振り返って、手を振ってくる。
俺も振り返す。
そう言えば、最初の日には地下に続くこの階段は暗く、ちょっと距離が空くと向こうにいる相手が見えなくなった気がする。
だが、今は階段は夕方くらいの明るさで照らされているではないか。
「ズーガー、照明を修理したのかい?」
『シュウリシタ』
「それは俺たちのため?」
『アマタ、ミュン、タメ。ピピー』
なるほど。ありがたい!
ロボットたち同士なら、暗視が利くだろう。
だから、照明だって修理する必要はなかった。
辛うじて、セントローンがいる場所だけは明かりがついたのだ。
それを、俺たちがちょくちょく訪れるようになったものだから、きっと昨日から今日にかけて修理したのだ。
「アーマチャー!」
「おお! 一人で下に行けたか! 偉いぞミュン!!」
下の方で、ミュンがドヤ顔をしている。
俺もテンションが上って、どたどたと駆け下りていった。
冷静さを失っていたので、つるりと滑って転ぶところだった。
「うわーっ!」
『ピピー!!』
ズーガーが慌てて俺の踵を支える。
おお、すごいパワーだ。
ロボットは後足を階段に引っ掛け、前足で俺をちょっとだけ支えた。
お陰で体勢を立て直せる。
「ピャー!!」
あっ、ミュンが真っ青になっている!!
「大丈夫、大丈夫だからな!」
「ワー! アマチャ、メー!」
彼女はトテトテと上ってくると、俺の膝のあたりをぺちぺち叩いた。
「分かった分かった。気をつけるよ、ごめんごめん」
ミュンを抱き上げて、ゆっくりと下っていくことにする。
そして、真っ先にセントローンの部屋に向かうのだ。
そう言えば、そこに行く前にも幾つか閉ざされた部屋がある。背後には廊下がどこまでも続いているし、この地下の空間、遺跡はどれだけの大きさがあるんだろう。
『ヨウコソ』
俺たちが入ると、セントローンはテーブル型の体を起こして出迎えてくれた。
テーブル部分はディスプレイになっていて、その中で液晶代わりに色とりどりの砂が動き回っている。
「早速だけどセントローン、聞きたいことがあるんだ」
『ピピー。キイテル』
「ズーガーから伝わってるか。通信されてるの?」
『ピピー』
なるほど。
ズーガーのみならず、この島を動き回る全てのロボットの知覚が、このセントローンに繋がっているんだな。
正にメインコンピューターだ。
「では単刀直入に聞く。この島、俺たちが来る前に、元々いた人以外に人は来た? 来てない?」
『キテナイ』
「来てない? なんで上陸しなかったんだ。島の姿は見えているだろうに……」
『ジョウリク、ナイ。シマ、マモル。シマ、ミュン、マツ』
「ミュンが来るまで、誰も上陸できないようになる仕掛けがあったってことか……!? やっぱりここ、ただの島じゃなかったんだな。じゃあ、俺が上陸できたのは……」
『アマタ、ミュン、マモル。ワカル』
「俺の人柄とか分かってて上陸させたってこと? いや、確かに、ミュンを一人でほっとくわけにはいかないけどさ……」
「アマチャ?」
「ああ、いいんだ。気にするなよミュン」
「チャ」
「では、俺が昨夜見たあの船はなんだ? どうしてあの船がここまでやって来たんだ?」
『アマタ、ジョウリク。シマ、ジョウリクデキル』
俺が来たことで、この島に人が上陸できるようになったと。
そういうことらしい。
つまり、あいつらがもしも海賊だったなら、この島であいつらからミュンを守れるのは俺だけということになる。
「そうか。頼みがあるんだセントローン。俺にこのコントローラーの使い方を教えてくれ。俺は場合によっちゃ、あの船の奴らからミュンを守らないといけない」
『ピピー』
俺の足元で、ズーガーが鳴いた。
「そうだな。みんなを守らなくちゃいけない」
しばらく、セントローンはディスプレイをピカピカ点滅させながら黙り込んだ。
「セントローン……?」
『ヤ……』
「や?」
『ヤシガニ……。ヤシガニ、ハナシ、スル』
「は?」
ここに来て、ヤシガニの話である。
一体何を言っているんだろう。
ズーガーも、セントローンも、みんなヤシガニを怖がっている。
そもそも、動物が存在しないはずのこの島の唯一の例外があのヤシガニで、そしてこの島は他に動物が上陸できないようになっていて……。
待てよ。
ヤシガニは一体どこからやって来たんだ……!?




