無人島生活六日目 今度こそ島を貫く道をを作る
ミュンは、おくるみを大変気に入ったようである。
事あるごとに、お腹の辺りに固定したおくるみを撫で撫でしている。
「ムフフー。マーメ、ミー」
「うんうん。でもあんまり触ると、おくるみが痛むかもしれないからなー。ほら、布を割りと立体的に組み合わせてて、実験的な作りだからさ」
「ミュ?」
うん、複雑な話すぎて理解できなかったな。
まあ、破れた時は破れた時だ。
卵が割れないことを祈りつつ、予備のおくるみもそのうち作っておこう。
さて、今日これからやるべき事は、だ。
昨日挫折した、島を縦断する道を完成させることだ。
腰に挟んでいたコントローラーを取り出す。
昨日までに完成させた場所にたどり着き、さて、作業再開だ。
「ほいほいっと」
めきめきと、十五メートルほどの道ができた。
昨日は十メートルくらいだったから、もしや俺の腕が上達しているのでは。
……と思ったら、後ろにミュンがくっついていた。
ミュンにコントローラーを使ってもらうと、五十メートルくらい一気に道ができるのだが、すぐに力尽きて倒れてしまう。
幼女に無理をさせるほど、俺は鬼ではない。
ということで、時間がかかってもコツコツやっていくことにするのだ。
しかし、ミュンが俺の服の裾を握っているのだが、こうして接触しているとコントローラーの威力が上がるようだ。
「ミュン、疲れてないか?」
「ンー?」
大丈夫っぽいな。
この調子なら、四回振ればミュンの一回分とちょっと。
悪くないペースだ。
十回ほどスイングして一休み。
また十回ほどスイングして一休み。
昨日は五百メートルくらい進んでいたから、これで三百メートルで……合計八百メートル。
あと四十回くらいスイングしたら、道が向こう側まで通じそうだ。
……気が遠くなってきた。
まず、こうしてスイングすると、コントローラーが何らかのパワーを発するらしく、振り下ろしたところで動かなくなる。
そして目の前で木々が動き始める。
これをじっと眺めているわけだが、完全に道が完成するまで、コントローラーを振り上げる事はできない。
つまり、振り下ろしたまま固定だ。
この姿勢の維持がなかなかきつい。肩や腕も辛い。
ミュンのみ、この制限を無視できるようだが、一回スイングするとぶっ倒れて腹ペコになる。
「……ミュン、やってみる?」
「ヤー」
「だよなあ。ちょっとずつ行くかあ」
結局その日は、道を完成させると意気込んだものの、あと十五回のスイングで俺がギブアップした。
完成した道の長さは、五百二十五メートル。昨日よりはちょっとだけ長い。
そしてくたびれた。
ミュンは完全に飽きてしまい、二百メートルほど向こうの道の真ん中で、大の字になってお昼寝している。
戻ってくると、横向きになってすぴょすぴょと鼻提灯を出しているではないか。
「うりゃ」
鼻提灯を割ると、思いの外大きい音がした。
「ピャ!」
目覚めるミュン。
「チャ?」
「うん、今日は終わりだ。もう俺は疲れ切ってだめだあ」
「アマチャ、ダーメ?」
「そう、だめなのだあ」
「ゴハン!」
「うっ、集める力は残ってない……」
「チャ!!」
俺がしんなりとへたり込むと、ミュンが何やら、決断的な意志を持って立ち上がった。
ミュン、まさかお前……!
「アマチャ、レ! ミュン、ルー!!」
ミュンは何やら堂々と宣言すると、踵を返した。
「ズーガー、マー!」
『ピピー』
ズーガーを従え、幼女が駆ける。
今日の夕食は、彼女が全部集めるとそういうことなのである。
ううっ、心配だ。
心配すぎる。
だが、俺は無計画に道を作った挙句、体力を消耗しきってこうしてぐったりしている。
今は彼女の無事を祈るばかりだ。
いや……いやいやいや。
「せ、せめてミュンの近くにだな……!」
俺は匍匐前進のような速度で、じわじわとミュンの後を追い始めた。
保護者として、最後の力を振り絞ってでも彼女の身を守らねばならない!
だが、この前進速度では追いつくことができないのではないか。
俺はちょっと考え、コントローラーを握った。
「車輪、できろ! 俺を運ぶ台車! いや、キックボード!」
近くにあった木が、めきめきと形を変える。
それは、俺の両足くらいの大きさの細長い板と、下についた車輪である。先端からは棒が上に向かって突き出し、ハンドルがついていた。
俺はこれの上に乗って、地面を足で蹴る。
よし、いける、いけるぞ!
これなら最小限の力で、凄まじい速度で走れる。
ミュンの疾走に匹敵する速さだ。
俺は今、幼女の夕食集めをサポートすべく、残された力を振り絞るのである。




