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無人島生活六日目 お腹に(パンツの間に)赤ちゃんがいます(卵)

「ミュッ、ミュ、ミュ」


 ミュンが難しい顔をしながら、恐る恐る歩いている。

 服の下で卵を温めているので、落とさないように気をつけているんだろう。

 俺はと言うと、彼女の邪魔になりそうな足元の小石なんかをどかしつつ先導するわけである。


「よし、ミュン、こっちこっち!」


「チャ!」


 恐る恐る、ミュンがやってくる。

 あっ、何もないところでつまずいた!

 俺は滑り込みながら、彼女を受け止める。


「ピ、ピャアー」


 ミュンはびっくりして、目を白黒。

 次いで慌てて、下腹部の辺りをさすった。


「割れてないみたいだな」


「ン!」


 よしよし。

 俺としては、卵よりもミュンが無事であればそれでいいのだが。

 しかし卵の方も普通の生まれ方はしていない。簡単には割れないのかもしれないが……色々と試してみたい気にはならないな。

 今はそっと、卵が孵るのを待つとしよう。


「ミュ、ミュ、ミュ……」


 しかし。

 この、ミュンがゆっくり歩くと、ただでさえ歩幅が小さいので、あちこち歩き回るには大変厳しくなる。


「ミュン、ここは俺がミュンをおんぶしてだな……」


「ヤーノ!」


 彼女は自分の足で歩きまわりたい気分らしい。

 あれか。卵を抱っこして、母性本能が目覚めたんだろうか?

 いや、ミュンはまだ子どもだ。

 いやいや。だが女子ではあるからなあ。小さい頃でも赤ちゃんの人形で、ままごととかするじゃないか。

 うーむ……。


 ミュンを待ちながら、この後の作業を思案する俺である。

 今日はとりあえず、セントローンに動物のことを尋ねる以外は考えていなかった。

 一応、毎日のルーチンとして食料を集めておくか。

 それと、染料ももう少し欲しいな。

 よし、ミュンの歩みに合わせて、こっちで食材集めをやっちまおう。

 キノコに、山菜に、青バナナ……。


「アマチャ! ミュン、ルー!」


「ミュンも手伝ってくれるのか! 無理するなよ」


「ン!」


 ミュンが追いついてきて、恐る恐るしゃがみながら、すっかり覚えた食べられる山菜などを摘み始める。

 やっぱり動きづらそうだな。

 卵を簡易的にパンツの紐に挟んでいる状態だと、色々動きに支障があるようだ。

 ここで、俺はピンと来た。


「卵温める用のおくるみがあればいいんじゃないか!!」


 やったぞ!

 俺、冴えてる!


「ミュン、ちょっとそこ座ってて! いいもの作ってやる!」


「イモノ?」


 聞きなれない言葉に、彼女は首を傾げたものの俺の言わんとする事は理解したようだ。

 その辺りの岩にちょこんと腰掛けて、俺の動きを待っている。

 さて、では不織布作成機を稼働させるとしよう。

 すっかり温泉近くに安置して、たまに気付くと下着や靴下を作ったりしていたのだが、今日は久々に全く新しい物を作ることになる。

 サイズは……あまり大きくなくていいだろう。

 ミュンが抱っこできるくらいだから、紐で調整できるようにして……。


「オー!」


 俺が見慣れぬ物を作り出したので、ミュンが身を乗り出してくる。

 腰掛けていたところから立ち上がり、トテトテと走りそうになって、ハッとしてから恐る恐る歩き出した。

 待ってろよミュン。

 もうすぐ、存分に駆け回れるようにしてやるからな。


 ゴウンゴウンとローラーが回る。

 バラバラになった綿が、特殊な花の蜜でまとめられて一枚の生地になり、これをちょうどいい大きさと形にカットしていく。

 中央部を、卵をちょうど抱え込める形になるよう、立体的に組み立てたところで完成だ。


「ミューン! これなーんだ!」


 完成品を広げて見せる。

 ミュンはまじまじと、俺が手にした不思議な物を見つめ、ウーンウーンと唸った。

 分からないようだ。

 分からないよな。


「ミュン、卵出してみて。そう、ここの卵」


「ミュ? レ?」


 ごそごそと、パンツに挟まっている卵を取り出したミュン。

 俺はこれに、おくるみの完成品を被せた。


「アー!」


 ようやくミュンは気づいたらしい。

 目を丸くして、おくるみをぺたぺた触る。

 これをミュンのお腹にくっつけて、紐部分を背中に回すのだ。

 後ろからちょうちょ結びにして完成だ。


「どうだ、これで卵を抱っこしたまま普通に歩き回れるぞ!」


「オー! アマチャ、アマチャ! レ、ナーノ! ナーノ!!」


 ミュンが手をバタバタさせて、俺のお腹に頭をごちんごちんぶつけてきた。

 大変テンションが上がっている。

 うんうん、そこまで喜んでくれて、俺も嬉しい。

 そして、完成した姿を見ると、なんだかおくるみというよりは、卵が小さい過ぎて真っ白なタスキを掛けているみたいになってしまった。

 紐も太すぎたか……!

 次回に活かそう。

 きっと、卵が孵ったらその生き物がまた卵を生む。

 これを温める時に、次世代型おくるみは大活躍するはずなのだ。


「アマチャ、マー」


「あっ、すまんすまん、ご飯だったな。お腹空いちゃったか」


 ミュンに急かされ、思考中断。

 今はとにかく、昼ご飯にしよう。

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