無人島生活六日目 動物復活作戦
ガラスケースを受け取った俺たちである。
一見すると試験管みたいな見た目だけど、中の砂がゴニョゴニョと動き回っている。
これを表現する語彙は俺には無かったから、セントローンからは情報を聞き出すことができなかった。
「後は実際に使ってみてどうかってことだよなあ」
「ンー? レ、マーム?」
背伸びしたミュンが、試験管をつついてくる。
色々つつくのが好きな子だ。
「外でやってみようか」
「チャ!」
何をやるかという確たるイメージは無かったが、とりあえず地面に撒いてみるか。
地下から上っていく階段。
ミュンは、この間はどうにかこうにか全身を使って上っていた。
だが、きちんと対策を考えていたらしい。
壁を利用して、手をつきながらひょいっと飛び上がる。
ぴょんぴょんっと、軽やかに階段を駆け上がっていく。
「おお、すごい!!」
転びそうなところを、壁に体重をかければ転ばないわけか。
でも、念のためにミュンを受け止めるために、後ろをそろそろついていく。
「チャ! チャー!」
どんどんと上に上に。
ハラハラしながら後を追う俺。
だが、心配の必要はなかったようだ。
彼女はあっという間に階段を上りきってしまった。
「アマチャー!」
汗をかきかき、俺に向かって手を振るミュン。
元気元気。
だが、子どもはほんの数日で成長するんだなあ。
階段への対策を学習して、上れるようになってしまう。
いつか、そう遠くない日にミュンは俺の手助けなんか必要なくなってしまうのではないか。
そう思ったら、ちょっと寂しくなった。
「アーマーチャ!」
「はいはい、分かった分かった!」
俺もトットッと駆け上がった。
ちょっと息が上がる。
すると、ミュンがポーンとジャンプして飛び込んできた。
「うおー!」
なんとかキャッチ。
ズドンと来たな!
「ダッコ!」
「おう!」
ミュンを抱え上げると、湧き上がっていた不安感が消えてしまった。
うん、まあ、まだしばらくは俺が必要なんじゃないだろうか。
「コー、アマチャ!」
「行くのか? よし、行くか!」
ミュンの手に、試験管を握らせる。
さて、これを多分、地面に撒くのだと思う。
一体どこでやればいいか……。
やっぱり、温かいところか?
ならば、温泉へ行こう。
『ピピー』
おっ、ズーガーも来たな。
これでいつもの三人になった。
温泉までやって来ると、お湯は今日も威勢よく湧いている。
「ミュン、この辺りに試験管の中の砂を撒こう」
「コノ?」
「そうそう。でも、お湯だとほら、こうして広がって、薄まるからもっと陸の……あ、あ、あ」
「チャ!」
威勢よく温泉の中に試験管の中身をぶち撒けるミュン。
あーっ、温泉の中ってことを強調しすぎたかー!
俺は頭を抱えた。
だが、どう? という感じで得意げにこっちを見てくるミュンを叱るわけにも行かず、引きつった笑いを返した。
ああー、貴重な生き物の素が……。
ところが。
「アーッ!」
ミュンが温泉を指差し、ばたばた手を動かす。
「え? どうしたんだ? お、おおおおっ!?」
温泉に注ぎ込まれ、散らばったと思ったカラフルな砂。
それがお湯を吸ってより集まり、なんだか見たことがある物体へと変わろうとしていた。
それは、色こそ、セントローンのディスプレイに詰まったようなカラフルなものだったが、形は卵そのもの。
「いけね、ゆで卵になる!」
俺は慌てて温泉に入り込み、下半身をびしょ濡れにしながらも卵を回収した。
掴んでみると、外の殻もしっかりしている。
不思議だ。
あの砂が、卵になってしまった。
しかも、これがゆで卵ではない証拠に、俺の手の中でドクンドクンと動いている。
これはやはり……温めて孵化させる必要があるんじゃないかな。
「アマチャ? レ、ナー?」
「これか? これはね、卵っていうんだ。たまご」
「タマゴ? タマゴ!」
「そう、卵。これはね、温めて孵すと思うんだけど……」
「タタタメル?」
「温めるの。こうしてね」
「アーッ! ミュン! ミュン、ルー!!」
ミュンが興奮して、俺の腕に飛びついてきた。
危ない危ない!
温泉に落ちるところだ。
だが、ミュンがやりたいというならば止めはするまい。
温泉にあの砂を撒いたのも、結果オーライだったしな。
ミュンにカラフルな卵を手渡すと、彼女は大事そうにお腹とパンツの間に挟んだ。
「潰さないようにしないとな。ぎゅーって。そしたら、パリーって」
「ヤーノ!」
卵が割れてしまうジェスチャーをしたら、ミュンはほっぺたを押さえていやいやした。
うん、これなら大丈夫そうだ。
さて、この卵、温めたら何が孵るんだろうな。




