無人島生活六日目 動物の遺伝子とかが保存されてる
「チャー!」
『ピガー!?』
下に降りた瞬間、ミュンがセントローン目掛けて走り出した。
セントローン、悲鳴を上げる。
そして、駆け寄ってミュンを抱き上げる俺なのである。
「まーた、バンバン叩こうとしたな。壊れちゃうだろー」
「アマチャ、レー。バンバン」
「だーめ。セントローン、安心してくれ。ミュンはこうして抱っこしているので」
適当なところに腰掛けて、この地下に存在する、コンピューターらしき存在へ話しかける。
セントローンという名前のそいつは、一見してかなり昔のゲームセンターの筐体みたいな外見をしている。
つまり、ディスプレイを天板にしたテーブルみたいな姿をしているのだ。
平たくてすべすべしているから、ミュンはバンバンと叩きたくなってしまうらしい。
「ムムーッ」
今も、俺の腕から逃れようともぞもぞしている。
しかし幼女のパワーで俺の抱っこを外せると思わないことだ。
「こうして抑えてる隙にだな。セントローン、今日は質問があってやって来た」
『シツモン?』
「ああそうだ。この間、セントローンはこの島に、動物は一匹もいないと言ってただろう」
『イッテタ』
テーブル型筐体に似たボディが、ぐぐっと起き上がってくる。
ディスプレイの中で、色付きの砂が動き回り、様々な模様を作り始める。
「それは、今はいないってことで、昔はいたのか?」
『ムカシハ、イタ』
「やっぱり……!」
「ニュ?」
俺の真剣な顔を見上げるミュン。
不思議そうに俺の顔を眺めてくる。そして、手を伸ばしてほっぺたをペタペタ触ってきた。
「わはは、や、やめろミュン、くすぐったい!」
「ムフー、アマチャ、ターモ!」
おっ、新しい単語が出た。
だが、ミュンが俺の頬やら顔やら首筋をナデナデしてくるのが大変にくすぐったい。
思わず俺がゲラゲラ笑っていると、その間にセントローンが目まぐるしくディスプレイの中の砂を動かしていた。
『ピピー』
「お?」
「チャ?」
ズーガーよりも大きな声に、俺とミュンの注意が惹き付けられる。
『ココ!』
ああ、注目して欲しいのね。
人間的なコンピューターだ。
俺たちが注目すると、セントローンは何度かディスプレイを、頷くように揺さぶった。
『ムカシ、ドウブツイタ』
映し出す光景は、恐らくは昔の、この島のもの。
そこは浜辺で、見たこともない動物たちが動き回っていた。
のろのろと森から出てきては、浜辺に出てきて転がるのは、毛深い特大ナマケモノみたいな動物。
後に続いて、空を飛ばないらしい緑色の鳥が次々に現れる。
お、頭と足が連動している。
そして、その後に続いて……褐色の肌をした人間が現れる。
これは過去の風景を表したものだろうか。
「人間が住んでたんだな」
『スンデタ』
「どこに行ったんだ、その人たちは」
『ドコニ』
「ええと……みんな死んだとか」
『シンダ、ナイ』
「そうかあ……」
俺は膝の上のミュンの頭を撫でつつ、考えた。
「ミュンがもし、ここに出ている人の血筋なら、同じ人種の人がいるんじゃないかと思ったんだがなあ……」
「ンー」
撫でられるのは嫌いではないようだ。
彼女は俺の胸に頭を預けて、ぐりぐりと押し付けてくる。
「おっ、もっと撫でるのか」
「ン!」
よしよし、どんどん撫でてやろう。
ぐりぐり撫でている。
髪がくしゃくしゃになるのだが、そういうのが好きらしい。
うわー、ミュン、お前の髪ってめちゃくちゃ毛が太いなあ。
俺もいい加減、年齢的に頭髪が気になってきている。この幼女の毛は羨ましい限りである。
「あー、セントローン。じゃあ、色々俺が喋る。それっぽいのがあったら拾ってくれ」
『ピピー』
「この島にいた人の子孫がミュン」
『シソン、ミュン』
やっぱりそうか。
「この島にいた人たちは、みんなどこかに出ていった」
『ピガー』
出ていったわけじゃない……?
「じゃあ、みんな死んだ」
『ピガー』
それも違うのか!
じゃあ、一体全体、どうしたって言うんだ。
ああいや。
みんなといえば、ミュンも入ってしまうのかもしれない。
彼女はこうして生きてる。
では別の話し方を。
「ミュンの他は、みんな死んだ?」
『ミンナシンダ』
よし。
つまり、この島に住んでいた人たちがいて、彼等はセントローンやズーガーを作ったか何かして、少なくとも不思議な力で島を管理していた。
島には独自の生き物がいて、この島の人々に飼われていた。
だが、彼等は何らかの理由で全滅し、どういう手段を使ってか、島の外にミュンの先祖を送り出した。
そして、ミュンだけが戻ってきた。
そういうこと……なんだろうか?
「動物たちも死んでしまったのか。じゃあ、やっぱり動物はいないんだな。復活させたりは……無理だよなあ」
『フッカツ』
「え、できるの?」
『デキル。ミュン、デキル』
「ミュンがいればできるのか……!!」
『ピピー』
「ンー?」
自分のことが話題になったので、ちょっとうつらうつらしていたミュンが首を傾げた。
そんな彼女の鼻先に、天井から何かが降りてくる。
それは、きれいな色の砂が詰まった、ガラスの筒だ。
「マ?」
ミュンがそれを掴む。
筒は天井から切り離され、彼女の手の中に収まった。
すると、筒の中の砂が、どくん、と脈打ったように見えた。
この砂、生きているのか。
どうやら、この砂を使って動物たちを蘇らせることができるようだった。
だが、一体どうすればいいんだろう。




