無人島生活六日目 目覚めると幼女がくるくると
目覚めたら、俺の頭の上で幼女が踊っているんだが。
「チャー!」
「おお、おはようミュン。なんか……朝から元気だなあ」
昨晩、黄色い服を着たまま寝たミュンであるが、寝付くまでにやにやしっぱなしで、俺に何事かもちょもちょ話しかけ続けていたのだ。
そして、いつも寝るよりちょっと遅い時間になると、スイッチが切れたように寝落ちしてしまった。
子どもには夜更かしは無理だな。
テンションが上がりすぎて、くたびれて寝てしまったらしい。
だが、こうして俺よりも早起きしているのだから大したものだ。
「あ、いや、二日目以降はずっとミュンに起こされているような……」
大人の不甲斐なさを実感する寝起きである。
「アマチャ! テー!」
ミュンが俺の前に飛び込んできて、ずどーんとぶつかってきた。
「うおー」
大人と子どもの質量差を覆すほどの突撃に、思わずひっくり返る俺である。
ミュンは寝たときのままの黄色い服で、ぐりぐりと俺に服を押しつけてくる。
見てほしいらしいが、それじゃあ見えない。
だが、本当に気に入ったんだなあ。
嬉しい限りだ。
「ミュン、染料はついてないか? お腹だいじょうぶ?」
俺が彼女のお腹をぺたぺた触ると、ミュンはくすぐったがってけらけら笑う。
ぺろりと貫頭衣をめくると、うむ、おへその上にちょっと黄色いのがついているが、後は概ね乾いたみたいだな。
染料はお風呂で落とせばいいだろう。
それよりも気になるのはだ。
「ミュンー。朝だから、この白い服に着替えてなー」
「ヤーノ!」
俺が以前の白い貫頭衣を差し出すと、彼女はぷくっと膨れて、そっぽを向いてしまった。
ああ、やっぱり!
幼女はお洒落を覚えてしまったのだ。
元のシンプルイズベストに戻ることはあるまい。
ということは、俺は早急に、同じような服を量産する必要性に駆られたのである。
「分かった! じゃあ、今日は青い服、明日は赤い服、明後日は別の服……! どんどん染色していってやろうじゃないか!」
「フク?」
「服! あの色できれいにするからな」
白い服と、染料の木桶を指さすと、ミュンも俺の言わんとしたことをハッキリ理解したらしい。
一瞬沈黙し、次に、目を見開いた。鼻の穴が広がる。口が開いて、大きく息を吸い込んだ。
「キャ────────!!」
もう、今までみたことがないくらい、ミュンがはしゃいでいる。
なんだ、なんだこれは、どうしたんだ。
黄色い服の彼女が、俺の周りでくるくる舞い踊る。
もうでたらめな踊りだが、全身から喜びが伝わってくる踊りである。
きっと、ミュンなりの感謝の舞いなのであろう。
こうなったらやるしかないではないか。
俺は顔を洗い、朝食を二人で適当にすませると、早速染料を持って川に向かう。
昨日と同じように、服を青く染めて枝に引っかけるのだ。
「マー! ミュ、マ、ナー! レー! アマチャ、レ!」
「うんうん、そうだな。これは青っていう色だ。青」
「アオ! フク、アオ!」
「そうそう、上手いぞ! また、夕方にはちょっと乾くからな。そしたらミュンのお腹は、明日の朝は青色だな」
「チャ!」
すっかり服に夢中のミュン。
上の空で適当に返事をしてきた。
だが、大変元気のあるお返事だったのである。
さて、服を乾かしたところで、今日の予定を考えてみよう。
気になるのは、昨日見つけた動物の骨だ。
骨の化石。
あれは、よく似た岩なんかじゃない。
これについての質問を、セントローンに投げかけねばなるまい。
俺はミュンを連れ、地下へと下る場所へ向かった。
途中、どこかで油を売っていたらしきズーガーが合流する。
『ピー』
「お、ズーガー、頭の上にウニなんか乗せてどうしたんだ。遊んでた?」
『ピガー』
違うらしい。
抗議された。だが、彼が海に潜って何かをしていたらしい事は確かだ。
「何かしてたんだろうけど、説明してもらおうにも俺の言葉の仲に、説明する単語がないと話せないんだよなあ」
参った参った。
今はとにかく、セントローンに会って疑問をぶつけることにしよう。
次に、ズーガーが何をしてたのかを問うくらいでいい。
そんな重要でもないだろうし。
「ズーガー、チクチクー」
「そうだなー。チクチクを上に乗せてるなあ」
ミュンが、ズーガーの頭上のうにをつっつく。
ロボットはつつかれながらも、率先して地下に潜っていくのである。
俺たちは彼を追い、久方ぶりにセントローンと面会するのだった。




