無人島生活五日目 反対側へと道を通す
食休みの後、それでは作業を再開しよう、ということになった。
ミュンはご飯を食べると、すぐに眠くなってしまうので、一時間ばかり彼女のお昼寝に付き合ってから出立する。
まずは、島のあちこちに行き来できるよう、道を通すのだ。
ちょうど、俺が食材を取りに行くときに道を作ったように、今度は意図して、ここから島の反対側まで一直線に抜けるメインストリートを作る。
「ミュン、お加減はいかがかな」
「チャー……」
ちょっと眠いらしい。
だが、大体彼女の寝起きはこうなので、一緒に動き回っていれば徐々に目が覚めてくるだろう。
ズーガーに後ろを見てもらいつつ、ミュンを引き連れての道路作成事業を開始するのである。
「道よ、広がれ!」
俺がコントローラーを振り回すと、概ね意図した通りに植物が避けていく。
現れるのはむき出しの地面だ。
一度に作れるのは、せいぜい十メートル程度の距離。
これを根気よく何回も繰り返していく。
俺の予想では、この島は直径1km半ほど。単純計算で、同じ動作を百五十回繰り返せばいい。
……気が遠くなってきた。
よし、今日はできるところまで。できるところまでで妥協しておこう……。
「広がれ! 広がれ!」
ぶんぶんとコントローラーを振る。
そのたびに、少しずつ道は広がっていく。
確実に前進しているのだが、二十回も振ると腕がだるくなってきた。
俺の運動不足がここに来て本領を発揮しているな。
「ちょっと一休み」
「アマチャ、アマチャ! ミュンモー!」
「ええっ? ミュンもやってみたいのか?」
「ン!」
俺が道を作っているのを見て、すっかり目が覚めてしまったらしい。
俺の持っているコントローラーに、手を伸ばしてくる。
そうだな。
ミュンは確か、この島と深く関わる素性があるようだし、本来これらはミュンのために用意されたものだろう。
今から使えるように練習しておいてもいいかもしれない。
「よーし、じゃあ使ってみよう。道、広がれー、だぞ」
「ン! ミチ、ヒロガレ!」
ミュンは銀のコントローラーを、思いっきり振り回した。
体が小さいから、コントローラーに振り回されるみたいになっているな。微笑ましい。
……なんて思っていられたのは一瞬のことだった。
突如、周囲からゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと凄まじい音が響きわたる。
何事かと思って、俺が腰を浮かせると、周囲の木々が一挙に左右にどいて、まるでモーセの十戒の如く、道ができあがっていくところだったのだ。
「ななな、なんだこりゃあ!」
俺のスイング十回分くらいの効果が、ミュンのスイング一回で発生した。
これは凄いぞ。
やっぱり、このコントローラーは彼女のために作られたものだったのだ。
これからミュンに使い方を教えていけば、きっと島の開拓がはかどることだろう。
「やったぞミュン!」
俺は振り返った。
すると、彼女はペタンと腰を抜かして、へたばっているではないか。
「あっ、ミュン、大丈夫か!?」
「チャー……」
おお、しおしおになっている。
遊び疲れて寝転がっているのとは、感じが違うようだ。
何というか、エネルギーみたいなのを使い果たしてしまったような。
ミュンのお腹から、ぐ~っ、と音が鳴った。
さっき食べたばかりなのに、もうお腹が空いてしまっているのだ。
さては、あの凄い効果を発揮するスイング、ミュンのパワーみたいな物を一気に消費してしまうに違いない。
俺は携帯していた、昼飯の食べ残し、青バナナのハンバーガーを取り出した。
ミュンはそれを受け取ると、猛烈な勢いで食べ始める。
そしてまた寝てしまった。
「うーん」
これでまた、しばらく動けなくなる。
これは参った。
ミュンの力はものすごいが、あまりにも燃費が悪すぎる。
恐らく、力の制御が利かなくて、全力で使うことしかできないのだ。
これはホイホイと使わせるわけにはいかんなあ。
「よっこらしょっと」
俺は、寝ているミュンをおぶると、ちょっとずつコントローラーをスイングしながら、作業を進めることにした。
ながらで扱うと、五メートルくらいしか進まないなあ。
だが仕方ないか。
ミュンに使わせるのはリスクがあるし、寝てしまった彼女を置いていけないし。
結局、ミュンが目覚めるまで、一時間作業を続けた。
休み休みで、なんとか三百メートルほど進めて、今度は俺が力尽きた。
具体的には腕が上がらなくなった。
もうだめだー。
「オハヨ……」
目をこすりながらミュンが目覚めると、俺が大の字になって汗をだらさら掻いているわけである。
そりゃあびっくりする。
「ピャー!」
例のびっくりした声を上げて、彼女は慌てて川に走っていった。
服を染める際に、あそこまでの道は軽く整備していたから、ミュンの足でも問題あるまい。
彼女は木桶の三分の一ほどの水を、えっちらおっちら運んでくる。
「アマチャ! ハイ!」
「おおーっ! ありがとうミュン……!」
ごくごくと飲み干す。
汗で流れた水分が戻ってくるような心地だ。
そして、ミュンが自分で判断し、水を汲みに行った。
これは凄いことだ。
「偉いぞミュン!」
「ン! アマチャ、レ、メーヨ!」
あっ、なんだかミュンが怒っている。
どうやら、俺が無茶をしたことに腹を立てているようだ。
かくして、幼女に叱られる俺なのである。




