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無人島生活五日目 目覚めると染料が溜まっている

「アマチャ! オハヨー!」


 はっきりした発言で告げながら、ミュンのぺちぺちアタックが俺のおでこに炸裂した。


「うおー」


「オハヨー!」


 ぺちぺちぺち。


「うおおーっ、あ、あと五分……!」


「アトゴフ?」


 止まった。

 俺はまた夢の世界へ潜っていこうと……。


「アマチャ、オハヨー!」


 ぺちぺちぺちぺち。


「ぐわーっ! 起きる、起きるからー!」


 俺は二度寝を諦めて起き上がったのである。

 そこには、既に朝の洗顔を終えたらしいミュン。

 ニコニコしながら俺を見ているではないか。


「最近、ミュンは早起きだなあ。それにどうしたんだ? 機嫌がすごくいいじゃないか」


「ンー、ンー」


 あっ、この幼女、いっちょまえに理由を話すのを勿体ぶっている。


「なーんか隠してるな?」


「ンー」


 ニヤニヤしながら、お口をチャックして何も話さない構えのミュン。


「教えてくれよー」


「ンーンー」


 ニヤニヤがドヤ顔になっている。

 これは、こうなれば積極的にこちらから攻撃するしか無い。

 つまり、くすぐり攻撃である。


「よーし、それならこうだ!」


 俺はミュンの脇腹をこちょこちょとくすぐった。


「キャハー!」


 一瞬でお口チャックのポーズが決壊するミュン。

 大口を開けて、けらけら笑い始めた。


「それそれ! 話さないとずーっとこちょこちょするぞ!」


「キャハハハ、キャーッ! アマチャ、キャハーッ! チャ、モ、キャハハハハ!」


 床の上で、実を捩って笑うミュンと、大人気なく全力でくすぐる俺。

 最後は俺もミュンも疲れて、肩で息をする状態になった。

 戦闘終結である。


「フー、フー、ハアー」


 ミュンなど、目に涙を浮かべて、まだちょっと笑っている。

 だが、さすがは若さである。

 すぐさま回復し、立ち上がる。

 そして、俺の手を引っ張った。


「レ! ミー、レ!」


 指差すのは、昨日摘んできた、染料になる花ではないか。

 一晩経った花は、なんとすっかり色が抜け、萎れている。

 一日しか保たない花だったんだろうか。

 いや、水もやらずに積んでたから当たり前か。

 ちょっとがっかりする俺なのである。

 摘んでから、すぐに染めないといけないかな、あれは。


「ネー、アマチャ! レ!」


 ログハウスの階段をトテトテと降りていって、木桶の前の方に回り込んだミュン。

 なおも、レ、レ、と繰り返す。


「これって、上から見ても何もわからないけど……下には何かあるのか?」


 ミュンが興味を示すようなことが、木桶の下で起こっているのだろう。

 それはなんだろう。

 そう言えば、花が生えていたところは、地面も色とりどりに染まっていたな。

 もしかして、同じようなことが……!


「うおっ、本当だ!! 色が溜まってる……!!」


 そこは、色の洪水だった。

 木桶の隙間から漏れてきた色素が、地面を赤、青、黄色に染め上げている。

 さらにたくさんの染料が、しおれた花の下に溜まっているようだ。


「溢れてしまうくらい大量の染料を含んだ花ってことか……! しかも、一日で枯れる。なるほど、これは面白いなあ」


 そうと分かれば、ぐずぐずしてはいられない。

 俺はさっさと顔を洗い、ミュンと一緒に昨日魚を一夜干ししたものを朝飯にし、早速作業に取り掛かることにした。


「ミュンは何色が好き?」


 三つの木桶は、花は取り除かれ、染料だけが入っている。

 ミュンはそれらをじっくり眺め、腕組みをして考え込んだ。


「ンー」


 彼女なりに、この色選びが重要だということを理解しているのだ。

 たっぷり三分くらい悩んだので、ミュンとしてはかなり頭を使ったほうだろう。


「レ!」


 びしっと指差したのは、意外や意外、黄色の桶だった。

 それでは早速、染色に掛かるのだ。


『ピピー』


「おおっ、ズーガー、川はあったか!?」


『カワ、アッタ』


「よし!」


 ミュンの予備の服を黄色の木桶に漬け、たっぷりと染料をまぶしておく。

 そして、ズーガーの案内に従って川を見に行くことにした。

 すると、それは何の事はない。

 昨日摘んだ花の裏側を流れていたのだ。

 ただ、密集した木に囲まれていたから、流れる音が葉に吸われてしまっていたのかもしれない。


「ミュン、桶を運ぶぞ! そっち持って!」


「チャ!」


 染料を二つの大小の桶に分けて、二人で運んでいく。

 別に俺一人でやっても問題ないのだが、こういうのは気分だ。

 ミュンも参加してるって気分を持ってもらった方が、楽しいもんな。

 彼女はとても真剣な顔をして、染料を溢さないように、漬けられた服ごと運んでいる。

 染料はドロっとしているので、桶を傾けてもザーッとは溢れないとは思う。

 二人で、えっちらおっちらと茂みを抜け、川のあるところまで到着。


「よーし、やるぞ、ミュン!」


「チャ!」


 俺が桶を置いて身構えると、彼女も真似して同じポーズをした。

 黄色に染まった服を、取り出す!

 そして、川に(さら)す!

 すると、余計な黄色がサラサラと水に溶けだしていき、流れていく。

 残ったのは、上品な薄い黄色に色づいた貫頭衣である。

 もうちょっと濃いほうがいいかなと思ったので、これを再度染料に漬けて、また川に晒す。

 さあ、どんな出来になるか。

 気に入った色合いになるまで根気の勝負だ。

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