無人島生活四日目 染料のもとを摘もう
ミュンとのわだかまりが晴れたところで、本日二つ目の目的を果たそうと思う。
服を染めるための、染料探しである。
ここ四日間、無人島で生活していて思ったのだが、コントローラーがあっても、何かをしようとすると一日がかりだ。
今日は幸い、釣りの後の昼食、お昼寝と盛りだくさんの一日になった。
この上で染料を見つけることができれば、さらに充実の一日となることだろう。
「よーし、行くぞミュン!」
「チャ!」
大変よいお返事をして、ミュンが後ろをついてくる。
俺はコントローラーを使い、今まで行っていなかった方向の草木を掻き分け始めた。
草木を、俺の目的のために手折るのはとても気が引ける。
ということで、コントローラーで最小限だけ、植物をどかして道を作ることにした。
獣道、というやつだ。
「これくらいなら行けるかな?」
「マー! ミュン、クヨ、オー!」
おっ、道ができたので、早速ミュンが俺を追い越して走っていく。
俺は後から追いかけるのだ。
アクションをする前に、こうして一声叫んでもらえるとありがたいな。
トテトテと走っていくミュンだが、すぐに立ち止まった。
何事であろう。
俺も、彼女の隣で立ち止まる。
「なーるほど……」
そこには、色とりどりの花が咲いていた。
島の裏側にある、綿花の咲いている場所に近い草原で、背の高い木々が生えていない。
太陽の光をたっぷり浴びて、花の色は鮮やかだった。
赤に、青、黄色もある。
「きれいだね、ミュン」
「キレ?」
「そう。こういう時、お花、きれいって言うんだ」
「オハナ、キレイ!」
「そう! 上手いぞ」
褒められて、ミュンがニコニコした。
嬉しかったようで、しゃがんで花を一輪摘み、「アマチャ、レ!」と差し出してくる。
「おお、ありがとう!」
俺も嬉しくて、ニコニコとする。
ミュンの、「レ」っていうのは、「これ」とか「あれ」という意味みたいだ。
これあげる、だったり、あれみて、だったり。
短い言葉に色々な意味を込めている。
俺も、ちゃんと聞き取る努力をしていかなくちゃな、と決意を新たにした。
とりあえず花は大変嬉しいので、胸元に飾っておこう。
この不織布、割りとつなぎは適当なので、伸ばすと花くらいは挟んでおける……。
「あっ!! なんか、花びらがついたところが赤くなった……!」
慌てて、手のひらを見る。
血でも無いのだが、赤くなっている。
なんだ、これは。
花びらは、触れば移るくらいに赤い色素が強いのだろうか。
これはもしかして、染料に使える?
「どうだ、ズーガー」
『ピピー。ツカエル』
「おお、それはちょうどいい!」
「ンー?」
「ミュン、お花、摘もう。これも、あれも」
「オハナ?」
「そう。ほら、このお花、こうして……色がつくだろ? これを服につけると、服の色が、ほら」
「オー!」
ミュンが理解したようだ。
目を丸くして、ウンウンと難度も頷く。
取り掛かりが早いことで定評があるミュンさん。早速、用意した木桶にお花をぷちぷち摘みつつ、ぽいぽいと放り込んでいく。
「チャ! マ! ママママ!」
「おおーっ、作業がどんどん進んでいく。そして同時に、ミュンが花の汁ですっごい色になっていくなあ」
「オハナ?」
「ミュン、手のひら見てみて。こう」
「チャ? ……ピャー!?」
色々な絵の具で塗りたくったようになった手のひらを見て、さすがにミュンもびっくりしたようである。
手をゴシゴシこすり始めた。
そうすると、色と色が混じって真っ黒になる。
それを見て、ミュンは二度びっくり。
びっくりした後、けらけらと笑いだした。
「アマチャ、レ! オハナ、レー!」
「うんうん、真っ黒だ! よーし、ミュンだけを真っ黒にさせないぞ。俺も頑張ろう!」
お花摘みに俺も参戦なのである。
ひとところに、これだけ多彩な色の花が咲いているが、見ればこれらは同じ形の花らしい。
色だけが違う。
これらを摘んでは桶に入れ、また摘んでは桶に。
瞬く間に、桶は花でいっぱいになった。
この辺りの花はあらかた摘んだようだ。
だが、すぐ下の地面からは、既にこの花のものと思われる芽が顔を出している。
むき出しになった地面は、それぞれの花の色に染まっていて実にカラフルだ。
これは、混ぜ合わせないようにして染めれば、楽しい色の服ができるぞ!
花摘みに集中していたら、俺もミュンも混じり合った花の色で真っ黒だ。
ひとまず汚れを落とすために温泉に行って……。
待てよ。
染めるにしても、どうやって染めたもんかな。
その方法も考えていかなくては。
昔テレビで見たやり方だと、川の水に晒したりしていたが、川の水なんてあるのかな……。
よし、川を探すのは明日だ、明日。
「今日はもう、このまま温泉に入っちゃおう!」
「オンセン!」
ミュンも大賛成のようであった。
今日はひとまず、摘んだ花を色ごとに別の木桶に分けて、置いておくのである。
明日は実験用に不織布をちょこちょこ作って、色合いを調べて、それから本格的にミュンの服を染めて……。
忙しくなってきたぞ!




