無人島生活四日目 日暮れ前の散策を
「プイー」
お腹いっぱいになったミュン。
お腹をさすりながら、俺に寄りかかってくる。
美味しいものを食べて、機嫌も良くなったかな。
食べかすや骨など、残ったものは浜辺に捨てる。
ズーガーに指示されたのだが、これを貝やら何やらが食べるようだ。
「ちょっと休憩して行こうか」
それから、午後の予定を考える。
空の太陽の位置からして、恐らくはもう昼下がりなんだろうけど。
ミュンがほわほわと欠伸をした。
「よしよし、眠いだろ。無理せずに寝ちゃえ」
「ンー……」
こてっと彼女の頭が俺の膝の上に落ちた。
すぐに、くうくうと寝息を立て始める。
「俺も軽く寝るかあ」
ミュンを引っ張って、木陰に移動する。
ヤシガニチェック……よーし。
何もいないな。
それだけ確認して、俺はどっかり横になった。
俺のお腹を枕にして、ミュンがぐうぐう寝る形になる。
さて、寝るか。
そよそよと、顔の上を潮風が撫でていく。
これは大変気持がいい。
椰子の葉で遮られているとは言え、日差しが強いし、周囲はとても明るい。
暗くしないと深く眠れない俺は、うとうとしては目覚めて、またうとうとする、という感じだ。
浅い眠りの中で夢を見た。
仕事をしてたころの夢だ。
俺は昼も夜も無く、平日も休日も無くバリバリと働いた。
で、心と体を壊した。
半年ちょい暮らしたところで、失業保険も切れたので、仕方なく働くことにした。
で、いきなりの海外出張……。
つくづく、自分はブラックな仕事と縁があると思っていて……まさか飛行機が落ちて今の有様だ。
「ミュー」
俺の腹の上で、ミュンが寝返りを打った。
パッと目が醒める。
眠りが浅いから、夢と現実が地続きになっている。
ちょっと顔を起こしてミュンを見ると、こっちに顔を向けながらよだれなんぞ垂らしている。
あーあー、俺の服によだれの染みが。
だけど、彼女がいるおかげで、くよくよする暇なんか無いのだ。
ミュンは放っておくとどこまでも行ってしまうし、危険に対して無防備である。
ここに来るまで、俺は子どもと関わりなんか無かったが、ミュンを放置するのは大変よろしくないということだけは理解できる。
試行錯誤しながら、お世話していく他ない。
「アマチャー……」
「おっ、お目覚めか。おはよう」
「ハヨー」
目をこすりながら、ミュンが体を起こした。
大きなあくびをする。
『ピピー』
ズーガーが木桶に、温泉の湯を汲んできてくれたようだ。
ほどよく、ぬるく冷めている。
「ふー、うまい」
「マイ!」
ミュンが湯冷ましを飲み終わったあと、俺の真似をしてプハーッと口を拭った。
いかん、お行儀が悪いやり方を覚えてしまう!
気をつけねば……!
「ありがとうズーガー。気が利くなあ」
『ズーガー、キガキク』
カメラに似た姿のロボットが、ぴょいんと反り返った。
胸を張ったんだろう。
「ズーガー、キクネー」
俺の口真似しつつ、ミュンがロボットの頭なのか、胴体なのか分からないところを撫で撫でする。
ペチペチ叩かない辺り、彼女なりに親愛の情を示しているんだろう。
「さあ、ミュン、ズーガー。日が暮れる前にもうひと仕事しよう! 服も白色しかないだろ? 色をつけたりだな」
「ンー?」
「あー、ごめんな。ちょっと調子に乗って難しいことたくさん言っちゃったなー」
「チャー!」
よく分からないなりに、ミュンがいいお返事をした。
『ピー』
「ズーガーは分かってるんだろうけど、まだ喋るには単語のデータとか足りないのかねえ」
『データトカタリナイ』
そうか……。
まあ、独り言みたいな今の状況も、そのうち二人が言葉を覚えてくれるかなと期待しつつ。
向かうは、染料探しである。
俺とミュンが着ているのは、昨日綿で作った不織布の貫頭衣。
ともに真っ白な服を着ているので、もうちょっと色をつけてもいいんじゃないかな、と思うのだ。
もちろん、色なんかつけても生活には何の影響もない。
だが、人間、生きていくためには、意味のあることばかりやっていては寂しいじゃないか。
「ウン?」
「ミュンも可愛い服を着たいもんな。あ、いや、着せたいのは俺か。しかもセンスには自信がない」
だが、やるのだ。
やるぞ。
俺はやる!
強く決意し、ミュンとズーガーを引き連れて一旦家に戻ったのである。
そこで、思わぬものを発見する。
「あれっ、これ……」
家の脇に、見覚えがある黄色い果実が成っている。
昨日はあったっけ、なかったっけ……?
「アマチャー、レ!」
自慢げに指差すミュンである。
そうか、ミュンは家のすぐ近くから、果物を取ってきていたんだなあ。
「ごめんな、ミュン。ミュンはちゃんと、危ないことしないでいてくれたんだよなあ」
「チャ!」
ミュンはニコニコしながら頷いたのである。




