無人島生活三日目 新しい服で歩き回ろう
「できた!!」
「キター!」
俺とミュンはバンザイした。
合わせて二人分の貫頭衣が完成したのである。
俺が服を着込むと、ミュンがテテテッと走って横に並んだ。
ちらっとこっちを見て、腰に手を当てて立っている。
俺も同じポーズをした。
「お揃いだな」
「ン! オソロ」
にっこりとミュンが笑う。
俺もほっこりした。
「よし、それじゃあ、服を着て島の中を歩いてみよう。あと、足にはこれを履いて」
俺が取り出したのは、椰子の繊維で作ったサンダルだ。
まるごと不織布みたいなものなので、履き心地はなかなか。
サイズがアバウトだから、紐みたいにしたサイドパーツを足首で結んで固定する。
「オー!」
俺がサンダルを結んであげると、ミュンが目を丸くして驚いた。
ぽんぽん、と跳ねる。
これまでミュンが履いていた靴は、やっぱり中古の靴だったみたいで随分くたびれていたし、サイズだってあっていなかった気がする。
今度のこれは、とても軽いし、足に結べばジャストフィットだ!
俺も同じようにして、二人で出掛けることにした。
『ピピー』
あっ、ズーガーを忘れてたわ。
カメラみたいなボディをしたロボットが、俺たちの後をてこてことついてくる。
さあ、島をお散歩だ。
砂を踏むサンダルの感触が楽しい。
ふんわりしながらも、通気性がいい履き物だ。
重くなったら、足を持ち上げて振るとザザザッと砂が落ちる。
わざとスカスカに作ってあるので、汗は染みずに流れ落ちるし、ちょっとした石ころなら、踏んづけても躓かずにくっつけてしまう。
いや、これはこれで問題だな。
「キャハー!」
ミュンが貝殻やら石ころをサンダルに挟み込んで、楽しげに歩き回っている。
歩く度に、巻き込んだ石やら何やらがこぼれ落ちて、それをまた踏んづけてサンダルに巻き込む。
うん、履き物としての問題点ではあるが、これは楽しそうだな。
「どーれ、俺もやるぞ!」
「デー、アマチャ!」
ミュンが手招きする。
そこには、彼女が集めた貝殻がどっさり。
……そうか、この島、貝は海に入らなくても獲れるんだな!
俺は貝殻をサクサクと踏みつつ、考えた。
浅瀬の辺りに入って、足元をさらってみようか。
そうすれば、食べられる貝が手に入るかもしれない。
だが、貝にも毒を持った物がいたはずだ。
万一にもそんな貝だったらどうしよう。
うーむ。
「チャ?」
難しい顔をして、貝殻をむぎゅむぎゅ踏みつける俺を、ミュンが不思議そうに見上げた。
「いやな。ご飯の事考えてて」
「ゴハンー?」
「これこれ」
食べるジェスチャーをしたら、ミュンも合点したようだ。
「ゴハン!」
「この貝もな、中身が入ってれば食べられるかもしれないんだよ。おいズーガー、分かる? 食べられるのとか」
『ピピー、ワカル』
心強い返答である。
このロボットの、毒物識別機能はとても優秀だ。
一昨日、昨日と、ズーガーが毒あり、毒なしを判定してくれたから、俺とミュンは無事に今日まで生きていられるのだ。
よし、では貝を獲ってみよう!
俺は木の桶を改造して、大型のフォークみたいな道具にした。
これを押し寄せる波間に突っ込んで、波が引く勢いに合わせて……引き戻す!
すると、ずるずるっと濡れた砂を引っ掻きながらフォークは後退してきて、やがてガチッ、と何かを噛んだ。
そのまま、勢い任せに掘り返す。
「貝だ!」
ミュンの手のひらくらいの大きさをした、二枚貝が獲れた。
貝は目玉みたいなものを外に出していたが、土からほじくり返されてびっくりしたらしく、それをすぐにピュッと引っ込めてしまった。
「ズーガー、判定頼む」
俺は貝に向かって手を伸ばす。
『タベラレル』
「よし!」
拾い上げて、ミュンに手渡す。
「これ、後で焼くから後ろに置いておいて」
ジェスチャーと言葉を合わせて伝えると、彼女はコクコクと頷いた。
大事そうに貝を両手で包むと、後ろに駆けて行って何事か作業を始める。
さて、俺はまた、貝を採集しなければ。
波打ち際をフォークで引っ掻き、引っ掻き、腕がだるくなるまで作業する。
これはきっと、また何日かしたら筋肉痛が来るぞ……!
なんて思っていたらである。
「あれっ? そう言えば、一昨日働いた筋肉痛が来ないぞ……?」
そんな事に気づいたのだ。
一体、これはどういうことだろう。
何か特別なことをしただろうか。
ええと、せいぜい温泉に入ったくらい……。
「あの温泉、筋肉痛に効くのか……!!」
我が身を使って、温泉の効能を発見である。
それならば、また今日も温泉に浸からねばなるまい。
今日もよく働いた。
俺の足元には、掘り返した二枚貝がたっぷりと積み上がっていた。
流石にこの量は、二人だと食べきれないな。
半分は海に返すことにする。
「おーい、ミュン、それじゃあ持って帰って……!?」
「チャー!」
それは、砂と水と貝で固められた、現代の貝塚だった。
なんというものを作っているんだ。
「ミュン、食べるから、貝を取り出して」
「チャ!」
嫌がるかと思ったら、素直に頷くミュン。
食が絡むと素直になるのかもしれない。
覚えておこう。
即席の貝塚は、ミュンが一番下の貝を引っこ抜くや否や、ざらざらざらーっと瓦解してしまったのだった。
さあ、今日の夕飯は貝のグリルだ。




