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テオが助けた赤みがかった茶色い髪の少女ミアは、テオを産んだ母親の記憶と血の繋がった父アロイスの寿命のうち半分を使って作り出された『人造人間』だった。
それでも彼女がテオの大切な家族の一人であることには違いない。
そして彼にはもう1つ戦う理由がある。魔力が使えないリアムの弟マルクス。彼は今ゲオルクの研究の実験台にされようとしている。そうなったのは彼自身が力を求めた結果なのかもしれない。だが他人の上へと望む気持ちを揚げ足取り食い物にする。ゲオルクのその姿勢に腹が立った。
「オレの大切な家族に手え出しやがったんだ。絶対に許さねえ」
7月23日朝4時30分。まだ太陽も顔を出していない薄暗い建物の外でテオは体をほぐしながら息巻いていた。まだ出発までは30分ほどあるがおとなしく部屋の中で待っていることなど出来はしなかった。
ストレッチだけではどうにも心が落ち着かず少しランニングでもしようかとした瞬間後ろから声をかけられる。
「おい、テオ。お前これから戦だってのに何するつもりだよ。無駄に体力使ってんじゃねえぞ」
声の持ち主はテオの育ての親ブルクハルト・シェーラーだった。雷属性の身体強化魔術を用いた近接戦闘を得意とする本格肉体派の魔術師。『稲妻の拳』という二つ名を持っている。テオの戦闘スタイルは彼の影響によるものが大きくその点においては親子というよりも師弟に近いものがある。
セリフにこそ緊張感はあったがその声にも姿にも緊張感などかけらも存在していなかった。寝起き全開といった様で頭は寝癖で爆発、大あくびをかましつつ腹を掻いてのご登場だった。その姿はまるでテオ自身の寝起き姿を見ているようでなんとも心地が悪かった。
「そうだよ、テオ。ゲオルクは元々そこまで強力な魔術師ではないけど、今はミアも居るんだ。それに旧友であるはずの僕を躊躇いなく殺そうとする奴だ。どれだけ用心してもしすぎるということはないよ」
続いて声をかけてきたのは血の繋がった父親のアロイス・ライデンベルクだった。ブルクハルトとは異なりセリフ同様に立ち振る舞いにも緊張感が感じられた。しかし、その全てをツギハギ模様ブリキ柄のクマのキャラクター、ブリキベアのぬいぐるみが語っているのだ。自然とテオの瞳は冷めたものになる。
「なんだよその目は!僕だって好きでこんな体になったんじゃないんだ!もういい加減に諦めて慣れてくれよ!」
短い腕をぶんぶん振りながらキーキー言っていたかと思えば、『この体に入ったせいで魔法も使えなくなっちゃったし・・・』とぶつぶつ言いながらしゃがみこんでそばの雑草をちぎり始めてしまった。中身が父親であることを除けば実に愛らしい光景だった。
草をちぎるブリキベアを愛おしく見つめていると『さてと』とブルクハルトが切り出す。
「そんじゃ、そろそろ行きますか。奇襲は早いに越したことはねえ」
ブルクハルトの瞳は完全におねむモードから目覚めていた。触れれば斬りつけられそうなほど研ぎ澄まされた鋭い瞳。自分から息子をゲオルクに預けてしまったからこその覚悟なのかもしれないと、テオは思った。
アロイスも『よいしょ』と掛け声を出しゆっくりと腰を起こす。
「よし、行こう」
テオはアロイスの記憶と研究の記録が記された本とアロイスをリュックに入れ背負い立つ。




