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「で、どうするんだ?」
戻ってきたテオに尋ねたのはブルクハルトだった。どうする?とはもちろんミアとマルクスを助けに行くのかどうやって助けるのか?ということだった。
「もちろん、助けに行く。ミアもマルクスも大事なオレの家族だ。父さんの見立てじゃゲオルクの研究は失敗に終わる。しかもあいつの目的はリアムを魔術師にすることなんかじゃねえ。オレはあいつのことぶっ飛ばさねえと気がすまねえ!」
テオの決意にブルクハルトは下を向いたまま何かを考えていた。そしてテオたちが部屋の入り口に向かおうとしたとき声を上げた。
「テオ!その、すまなかった。マルクスのことで頭がいっぱいになっちまってた。もちろんお前よりマルクスが大事とかそんな話じゃねえんだ。だけどよ、やっぱりマルクスも大事なオレの息子なんだよ!幸せにしてやりてえんだよ!だから・・・・・本当にすまなかった」
『今日は随分と父親に頭を下げられる日だ』そんなことを思うとおかしくてテオは噴出しそうになった。
「だっせー」
「ああ?」
恥を忍んで息子に対して頭を下げたことを『ださい』となじられた。ブルクハルトは羞恥心と自尊心が怒りに変わりかけた。だが顔を上げた先にあるテオの柔らかな表情にすぐさま落ち着きを取り戻した。
「そんなことわかってるっての。そりゃあの時は顔面に風穴開けたくなるぐらいむかついたけどさ。親父の気持ちは理解してるよ。だてに14年もあんたの息子やってねえんだよ。それにマルクスはオレにとっても可愛い弟なんだよ。実験用モルモットにさせるわけにはいかねえだろ?」
挑戦的で悪戯な笑みを浮かべるテオにブルクハルトも思わず表情を緩めた。
ミアとマルクスの奪還にはテオにブルクハルト、それにアロイスも同行することとなった。ゲオルクが滞在している研究所までは1時間ほど。しかし今はもう夜中の1時を迎えようとしている。襲撃は明日の早朝にすることにして3人は休息を取ることにした。
「そういえばよ、アロ?」
「どうした、ブリッツ?」
「お前、なんでそんな体なわけ?」
「ああこれな。ゲオルクに殺されかけてとっさに練成術式描いたのは良かったんだけど、身動き取れなくて・・・そばにミアの8歳の誕生日プレゼントに買ったこれしかなかったんだ」
明朝6時、奪還作戦決行である。




