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初めまして、お久しぶりです。ぽむぽむです。
多くの方ははじめましてになるのでしょうか?
前作「mistel」を読んで下さった方は本当にありがとうございます。
今回も完全フィクションのファンタジー作品となっております。
皆様の心に何か一つでも引っかかるものがあれば至上の喜びと思っております。
どうかお楽しみください。
「・・・・・テオ!・・・テオ!」
自分の名を呼ぶ声に重たいまぶたを開こうとする。
だが、自分のものにしてはあまりに重く、力のないまぶたはなかなかに開こうとはしない。ぼやけた世界がまぶたの隙間に広がっては閉じていく。
何とか維持された狭くピントも合わないぼやけた世界には二人の男女の影が映っている。
二人は大粒の滴を振りまきながらこちらに向けて何かを叫び続ける。
女は力強く優しく体を支え、男は身を乗り出し女と顔を並べて声を荒げている。
「テオ!」
呼ばれる名前の他には二人の言葉は一つも聞き取ることができない。
目に映る世界は揺らぎ耳に入る音は歪んだ。
二人の歪んだ叫び声を耳にしながらも意識はそちらに向く余裕などない。
体が沸騰しているかのように熱い。全身を流れる血はぐつぐつと煮えたぎり水分ではない何かが体の中から次々と蒸発していく。目は焼けるように熱く、のどが渇き亀裂が走る四肢は痺れ指などそこにあるのかさえわからない。
無数に穴の開いたボールのように体の中にあった何かは全身から絶えず流れ出していく。今も体から流れ出すこれは自分の命なのだと本能が訴えた。
ここまで頑張ったまぶたにも限界が訪れ、目の前で激しく名を叫ぶ二人の姿を感じつつもゆっくりとまぶたは閉じられた。