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一万ニ千年後のレフュージア  作者: 上日 ゆうじ
26/28

25 アトミック作動

 俺はアニキによって、魔方陣の中央へと引きずられた。抵抗は出来なかった。

「彼女はトウ軍より、第三号学校遺跡の人炭の破壊を命じられていた。我々に資源として、使わせないためにね」

 そう。それは俺とカトレアが初めて会ったあの日の出来事だった。

 竜人の少女は、ツバメが残すことを主張した俺以外の、全ての人炭を破壊して、火を放った。

 その中に、俺の妹がいたのだ。カトレアは当然そんなこと知るよしもないから、普通に壊して、マッチをすった。

「おそらく中学三年の彼女は、マモルの通う高校に手渡しで願書を提出に行ったついでに、マモルに会いに来たのだろう。そこで、シャイン・ラインに巻き込まれた」

 カトレアがおぼつかない足取りで、フロート・シェルの貝型の機械へと向かう。ミーアが、「だめだよ、そんな・・・」とうめいている。

 俺はほとんど何も聞いていなかった。

 不幸には、いつまでたっても完全になれることはない。

「私は先日、司令部となった学校で、竜人の少女と二人きりで話す機会をつかみ、このことを話した。我が軍の偵察用ドローンが撮影した、映像まで見せてね。

 彼女は、マモルと私の妹を殺した罪を、認めた」

 カトレアが機械の中に収まろうとするのを、ミーアは止める。絶望的な表情でうなだれた竜人の少女の腕を、必死に取る。

「知らなかったから仕方ないな! カトレアは悪くないな!」

「そう、私も彼女が悪いとは思わない。彼女は自分の仕事をしただけだ」

 アニキはミーアをつまみ、投げる。

 彼女は尻餅をつき、か細くうめく。

「しかし起こったことへの責任は、とってほしい。私の肉親を一人減らしたからには、もう一人は救ってほしい」

 カトレアが、翼を気の毒なぐらい折りたたんで、貝の中に入った。俺をちらりと見て、目をそらす。

 俺が魔方陣の真ん中に、カトレアが貝に挟まれるようまん前に、それぞれ移動が完了した。

 あとは少しの操作で、貝が閉じられ、彼女は死に、その相転移のエネルギーで俺のウミは抜かれるはずだ。


 俺は、怒りで気が狂いそうだった。

 あまりにも怒りすぎると目の前が真っ暗になる、これは本当だ。


「マモル、カトレアを止めてな! 君が言ってくれないと・・・」

「彼女はすでに同意済みだ」アニキは歩く。

「カトレアが死んだら、そこのツバメも悲しみにゃ」

 気絶したままのツバメが、少しまぶたを動かした。

「待てよ」

 アイツは、操作パネルのまん前で、ぴたりを足を止めた。

「アニキは妹が、スバルが壊されたのを、いつ知ったんだ?」

「トウリア攻略戦の最中だ。ドローンの撮影した映像はすみやかに私の目に入るし、そこがマモルの通う高校で、スバルが願書を出しに行ったことも知っていた」

 カトレアは、自分の身体を浅く抱いて、目をぎゅっとつむる。

 その時を待っている。

「そこの竜人は丁寧な仕事をしたから、スバルの破片を集めるのは大変だったよ」

「じゃあ、俺やカトレアよりもずっとずっと早く、このことを知ってたんだな」

「そうだ」

「俺とダイバーランドで再会したときにはもう、全てを知ってたんだな」

「おまえが妹を壊した竜人とともにトラッシュレインに向かったことまで、把握していた」

 我々には無人機も有人機もあるからなと、ヤツは言った。

 俺の体の血液が、人炭の赤い線が、急激にうごめくのがわかる。筋肉の一つ一つがわななき、沸騰しそうになり、見ないでも鎧の神経が太くなったのがわかった。

 俺は鎧と一体になる。

 怒りが沸くほど嫌いだった概念鎧が、その怒りによってまさに、統合された。

 立ち上がる。月と人工の月が空に見える。

 しっかりした足取りで、歩く。そのまま魔方陣の外へ。

 俺は夜に、昼間のように動いている。

 すぐ横でちぢこまっているカトレアの、すぐ隣にまで。歩いた。

 彼女は閉じた目ながらも、俺の影を感じて、見上げる。

「機械の操作方法、わかるかい?」目を開いたとき、涙がつっとたれた「それともアタシみたいなケガレタやつの世話になりたくない?」

 それはどんな罰でも受けると観念した、人間の悔悟と絶望がやどった瞳だった。

 俺は握りこぶしを作る。自分の本来の腕がわなわな振るえ、クリスタルの腕も呼応する。

 ミーアが、「やめて、やめて」と口を押えている。

「マモル、彼女を攻めるのはお門違いだ」

 アニキが背後からたしなめる。「それとも運命に怒っているのか? それはお門違いどころか、無意味だ。さあ、魔方陣の真ん中へ戻れ。彼女は志願して、おまえのウミを――」

「違う」俺は静かに言った。爆発する前に力を矯める、いわば嵐の前の静けさだ。

「俺が怒ってるのは、カトレアでも運命でもない・・・ おまえだ!」


 ふりむきざま、自分史上、最も素晴らしいこぶしが、炸裂した。


 アニキが、少なくとも数百キロはある巨体が宙を舞う。

 真空波のように衝撃が伝わったのか、中のサングラスが割れた。

「妹が死んでるの、なぜ俺と再会したとき素早く言わなかった?! なぜその後もいくらでもあった機会の中で伝えなかった?! おまえは俺を操りたいがために、自分がもっとも『効果』があると思った最悪のタイミングで、肉親の死を伝えたんだ!」

 倒れたあいつは土ぼこりが終わる前に、鎧を起こす。

「おまえは、もはやアニキですらない。人ですらない。あんたは空っぽだ、うつろの鎧だ!」

 怒りを全体重に乗せた突貫。地面に胴体をつけるアニキを捕捉できるほどのスピード。いや、相手は器用で早い。

 一回転して、立ち上がり、俺へ向かってくる。

 そこからは、相打つ腕が割れて砕けるほどの、すさまじい連撃戦だった。

 こぶしがこぶしを打ち、手首が手首を払い、腕が腕を殴る。あちこちにヒビがいき、ついに外装の鎧がとれ、中のやわらかい幕の部分ばかりになる。

 もちろん足も使うし、体もぶつける。決死の体当たりは勢い余って、辺りの概念鎧のなきがらをぶちまける。

 どちらかが倒れ、素早く回転して立ち上がるたびに、クレーターのようなへこみとステップで割れた地面が残る。追い、追われ、めまぐるしく視界が変わる。

 腕が破壊と急速な再生を繰り返し、全ての動作でどこからか、ウミがはじけて内部を満たす。

 本来なら鎧の動きに馴れ、格闘訓練も積んでいるアニキの方に分がある。

 だが俺には仲間がいた。

 まずミーアが飛びかかる。猫人の地面すれすれからの突撃が、俺の大振りな拳とどんぴしゃのタイミングになる。俺の拳のきれいな一発がはいった!

「うむ!」相手の鎧はミーアを払う。救い上げるような動作で、放物線を描き、猫が俺に落ちてくる。

 カトレアが飛翔して、ミーアを受け止めた。俺は天にさし伸ばしていた腕を、向かってくるアニキをいなすのに使えた。

「カトレア!」ミーアが快哉。

「罰は角を渡した人に・・・ マモルに委ねるよ!」

 誇り高きニューカムの二人が、それぞれ得意のかまえをし、古代の鎧と対峙する。アニキも腕を交差させる独特の構えをした。

 腕を盾としてなお、鎧が透明なため、彼の顔が歪みながらも見えていた。

 彼の概念鎧の、腰のところにたまったウミが、静かに揺らめいている。

 それの収まりがつく前に、ニューカムの二人が獣のように吼えた。

 カトレアの爪もミーアの二刀流の短剣も、アニキの鎧への致命傷にはならない。だが確実にウミが増える。隙もできる。

 俺は小細工なく、まっすぐ進む。

 二人の間を縫うようにして、自分史上もっともすばらしいこぶしが命中した。

 俺は攻撃のたびに最高を出している。

 アニキがついに、片足をあげてよろめいた。ふんばるも、倒れている概念鎧に足をとられて転倒した。彼の鎧の中で、だぶん、とウミがひっくり返った。

「マモル!」カトレアが叫ぶ。「あんたの打撃じゃないと、あいつは倒せないよ!」

「わかってる!」

 これで決める、と足を踏み切ったとき――

 アニキの右手が伸びた。

 次の瞬間には元の長さに戻り・・・

 けれどその手にツバメがしっかりとにぎられていた。

 突撃をする俺のまさに目の前に、つきだした。

「人間の盾!」舌をかみそうになりながらも、思わずうめいてしまった。

 相手の口元から、見たことない笑みがこぼれていた。

 足を踏みとどまろうとするも、止まらない。間に合わない! と顔をしかめたとき、腹にすさまじい衝撃が走る。足を上げたアニキから、俺は急速に遠ざかる。

 無様に転がったのがわかった。

「え、え・・・ ――痛い! 放してぇ」

 ツバメの悲痛な叫び声が聞こえる。ショックで目覚めたか!

 カトレアが竜の咆哮を、ミーアがケモノのうめきを上げた。

「まったく、人は脆いが役に立つ!」アニキも吠える。サングラスの下から、ぎらぎらして瞳が顔をのぞかせて、それが後方にジャンプしたとき、赤いライトのような軌跡を残した気がした。

「おまえに手加減なしで、相対する日がこようとはな!」

 アニキが、だらりと腕を下がる。ゆがみ、二の腕がひと回り太くなり、装甲がまで形成される。その腕はさらにスライムが踊っているように五つに伸びて・・・

「これをやるとウミがたまるのだがな!」

 ガトリングガンを形作った。

「弟よ! おまえは昼間の出来事を一晩かけてフィードバックする『一日進化』だが、私は違うぞ!」

 正面から見た五つの銃口が、ピタリと向けられる。

「私は石油機文明時代を終わらせた、ものすごい戦争を戦ったのだ! そこで見た武器、あつかった道具、すべて自由に再現できる」

 ガトリングが回転しはじめる。

「これが一瞬進化だ!」

 一拍おいて弾丸がばらまかれる。

 辺りの、雨の日も風の日も鎮座し続けた概念鎧が片っ端から割られ、すさまじい破片とウミがあたりに広がる。はずれた弾が土煙を上げる。

 カトレアもミーアも、身をかがめる。俺は二人の盾となる。

 ああ、あっというまに目の前にクモの巣が広がる。その一つ一つから、ウミの滝ができる。

「危険な賭けだが、一度溺れさせ、ニューカムを使ってくれと懇願(こんがん)するまで追い詰めさせてもらうぞ!」

「人が人を食らって命を永らえるなんて!」アゴが濡れた。

「そのための命を生み出すのが、Sex牧場なのだよ!」

 轟音の中、俺の概念鎧の耳はアニキの声のみを拾って、拡張しているようだった。

 俺は走る。カトレアやミーアから距離を離そうとする。弾は大きい、鎧のヒビでわかる。二人があたったら、死んでしまう。

 ヤツも影のように俺に追いすがる。

「私は人減戦争を見た! 醜い人間を感じた! だからシャイン・ラインの計画にたずさわった! おまえやスバルを石か蛮族になることを、重々承知してな!

 そのおまえが生き返った。涙をのんで諦めた肉親が、自分と同じ姿で復活したのだ! 執着するのは、当然だろう!」

「重いよ、おまえ!」

 ならば、と思い切る。

 腕をクロスさせ盾にして、正面から受ける捨て身の戦法。なんとかガトリングが、取り回せない位置まで近づければ・・・

 うがたれては修復を繰り返す鎧に、また次々とヒビがいき、前がまったく見えないようになる。弾はまるで、アニキの一万二千年分の思念を削って撃ち出されているのかのごとく、無尽蔵だ。

 俺の肩の、テンタクル・クラウド怖さから身についたトゲが、弾き飛んだのがわかった。

「後ろに回られてるぅ!」ツバメが、海の底にまで声を届かせようとするような声を出した。

 声に反応し、とっさに後ろ蹴りを放つ。目くらめっぽうな攻撃だが、肉薄するアニキを弾き飛ばした。彼は数回転して、また立ち上がる。

 だが体勢がぐらついている! チャンス!

 ガトリングさえ折れれば――

 また、ツバメが目の前にかかげられる。俺は無様に立ち止まるしかなかった。よろけはしない、だが――

 アニキは足も伸びるのだ!

 蹴られ、転がって転がって起き上がったとき、もう十数メートルは離れていた。

「気にしないで・・・」ツバメが息を吸い込む。「気にしないで!!」

 自分など気にするなという、悲痛な叫びだった。

 またガトリングを向けられた。

 ミーアが豹のごとく四足歩行で、概念鎧の上を駆け、宙を舞っていた。即席のガトリングに飛びかかる。――いや、飛びかかる前に、そのガトリングで打ち払われた。しかしこれは陽動だ。

 今まで空からばかり襲いかかっていたカトレアが、地上すれすれを疾走して、アニキの懐に飛び込んだ。必殺のかぎ爪が治りかけのヒビに、深々と突きたてられる。アニキの顔にウミがぶちまけられた。

 驚愕に開かれたアニキの口を、俺は初めて見た。聞こえなかったけど、うめき声さえ上げたかもしれない。

 カトレアが地にたたきつけられる。蹴り上げられる。放物線を描いた。

 まったく力なく、俺の目の前に墜落した。一度地面で身体がバウンドし、そのまま動かない。

「カトレア!」しかしこの攻撃で隙ができていた。

 ツバメが、つかまれた身体を巧みにひねり、撃ち出されるガトリングの薬莢が出てくる穴を「インヂ打ち」用の石でふさいだ。

「ぬお!」

 慣性で発射し、腕と一体化したガトリングが暴発する。腕の外と内で、すさまじいウミが吹き出す。

 例え捕まっても、一瞬の勝機を逃さない。

 ツバメの、小さい身体に不釣合いな果敢さと、彼女の機械技師の知識ゆえの、成果だった。

 相手の鎧が、一瞬青く明滅した。

 彼はみぞおちのところにまでウミがきている。戦闘開始前、ほとんどなかったのを考えればすごい勢いだ。

 俺は首の付け根辺りだった。これでもマシに済んでいる方だ。

 もし、俺一人で戦っていたら、遥か前に溺れて絶命していただろう。――みんなで戦ったから、負傷が、分担されたのだ。

 ただ、そのカトレアとミーアは満身創痍だった。

 あちこちに打ち身、打撲、擦り傷、切り傷を作り、まるで高山の上にいるみたいに、全身ではあはあぜえぜえを繰り返していた。

 アニキを打ち破るのには、この四人の力だけでは足りない。

 俺はまだ動けるが、アニキはいまだ「戦える」レベルだ。

 今まさに、足を広げたタコのようになったガトリングをみるみる変化させて、元ように戻している。

 銃身が白み始めた空のわずかな光を弾いた。つまり朝になりかけている。

 そんなに長い時間、戦っていたのだ。

 だーんと音が響いたのと、背中に猛烈な痛みを感じたのは、同時だった。

 自動車事故のように高速でつんのめり、地面に頭からぶち当たっていた。

 地に着いた頭から、キャタピラの音が響く。数百年間、太陽のエネルギーを変換していた概念鎧を押しのけ、砕き、せまり来る音。

「まずいなぁ・・・」ミーアがうめいた。「人の気配がいっぱいだよ」

 俺は自らの背を見た。

 今までのより遥かに巨大な、砲弾が突き立っている。まずいことに、背骨の位置に当たるところを通っている神経を傷つけていた。人間と違って下半身不随にはならないものの、修復には致命的な時間がかかるはずだ。

「ふん、ようやくの増援か」アニキの確実に疲れているものの、勝利を確信した声。「もっとも、手を出すなと命じていたのは私だがね。――今度部下には、たまには命令を破ることの重要性を、教えなければね」

 あいつは、俺たちを見て涙目のツバサを、感触を確かめるようにぐっとにぎる。長耳の少女が苦悶の声を上げた。

 歩む先には、静かに明滅するフロート・シェル。

「ガールフレンドを、使わせてもらうぞ」夢に出てきそうな、凶悪な笑みだった。

「この子だけでなく、そこの竜人と猫人もだ。いささかウミを、溜めすぎてしまったのでね」

「マモル!」ツバメが叫ぶ。「わたし、どうなるか知ってる! わたし、死にたくない」

 少なくともこんな形では、嫌だ。

 死ぬのなら、あなたに使われて死にたい、と、彼女は叫んだ。

 緑の亡霊たちが一斉に姿を表した。


「なに? 新月ではないぞ?」アニキは足を止め、辺りを見回す。

 その亡霊は、かつて概念鎧だった人々だ。

 小学生の少年に、中学生の少女、男女で並ぶ高校生に、大学生風の男、サラリーマン、その他様々な衣服をまとった人々。ティーンエイジャーの数が圧倒的に多いのは、たぶん、人炭から概念鎧になる条件に、何かしら関わっているからだろう。

 その人たちが次々と、自分がまとっていた概念鎧から抜け出てくる。

 彼ら彼女らがなぜ、このタイミングで姿をあらわしたのかはわからない。俺らへの共感かもしれないし、同情を買っただけの可能性もある。あるいは、たんに自分たちの安眠が妨げられたことを、怒っているだけだろうか。

 ただ、悪意は微塵も感じない。そこには一種の、大いなる「感情」が、渦巻いていた。

 その人たちが一斉に、緑の粒子に変わったり、またヒトの姿を形作ったりする。だんだんとヒトの形がおぼろげになって、そして完全な粒子に変わった。

 あたりに粒子――ソソが渦巻いている。

 俺はカトレアを見た。思念が伝わってきたからだ。その思念は色々だったけど、やがて一つになり、以前プラネタリウムで見たある戦いの光景が、視界いっぱいに広がった。

 そして二人でミーアを見る。ミーアの目には戸惑いがあったものの、確信に変わる。

 カトレアとミーアは立ち上がる。手をツバメにかかげた。

 囚われのツバメも始め、目をぱちくりとしていた。しかし、俺らが共有している意識が見えたのか、手をさしだす。

 ツバメの差し出した先は、運命のようにアニキの足元に鎮座する、アトミック。


 俺の鎧と、ツバメ、カトレア、ミーアの体に流れるソソは、人の思いに敏感に反応する物質だという。


 そのソソが、俺らの意思を伝え、共有化し、一つの思いと結論を生み出していた

 彼に負けるのは悔しい、あんなヤツの好きにされるのは嫌だ、あいつを倒したい。

 それは危険な賭け。しかも、人の道義を多少なりとも踏み外す賭けだ。

(わたし、二人の助けがあれば、今なら魔法が撃てる気がする)

(アタシは、二人をすばやくつかんで羽ばたけると思う)

(マオは、――これがみんなきっとうまくいくと、預言するにゃ!)

 アトミックは、石油機文明時代の終焉をもたらしたものだ。

 あいつはアトミックを使わないかもしれない。しかし、使う可能性もある。

 使わせない方法、それはただ一つ。

 先に使ってしまえばいいのだ。

 ツバサが、カトレアが、ミーアが、それぞれ手に力。

 カトレアとミーアはツバメに対して。ツバメは、アトミックに対して。

 ツバメに向かってソソが送り出される。

 ソソは増幅され、カトレア、ミーア、そしてツバメの思いを増幅し――

 目に見える形になる。

 それは古代の幽霊と同じ、緑色をしていた。

 俺はかつて、アニキに聞いたことを三人に伝えた。

 原子力兵器は、周りの高性能爆薬の一斉爆発の圧力によって核分裂を起こし、起爆する。だから、まわりの爆薬がうまく爆発しなかったり、タイミングがずれてしまうと、核爆発は起きない。

 あいつは将来的に、核抑止論かなにかの学者になりたかった。そのための勉強は怠らなかった。隣で見ていた俺が証言する。

 そのあいつがふりむいた。

「ニューカムたち、何をしている?」彼も感づく。「それを使わせるわけにはいかない! 改心したマモルに、いずれ神ナズ上層部を討たせるための準備として、あえて託したのだぞ?」

 その行動が、おまえの破滅への第一歩。

 おまえの敗因は、行動の全てだ!

 ミーアが、5回、6回と能力を使い、一番適切な爆発をするエネルギーのかけ方を、導きだす。すなわち、爆発はするけれど不完全に終わり、汚染が最低限で済む未来だ。

 それは明らかに「高度なベーず推定」を超えた、未来を引き込む予言だった。

 ツバメのエネルギーが具現化し、かかげられた腕から、魔法が放たれる。

 それはプラネタリウムで見た往年のニューカムたちと比較しても、まったく遜色のないものだ。

 緑の渦のような光線はそのまま、――鎮座するアトミックへ。


 俺たちは自爆した。


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